精神症状身体化の謎 | kyupinの日記 気が向けば更新
2010-09-28 22:00:44

精神症状身体化の謎

テーマ:内因性の正体
精神病状態の回復期に、奇妙な神経所見が出現することがある。

麻痺が多いが、疼痛も珍しくはない。

もちろん寛解に向かう過程で、そのような所見が出現しない人もいる。

出る人と出ない人を比べると、たぶん出ない人の方が多いように思うので、出やすいとまでは言えない。一連の精神症状の回復の経過中に出現することがあるといったところだ。

普通、精神科医は麻痺はともかく、平凡な腰痛や肩痛などはそこまで精神症状と関連付けして診ていないので、見逃されていることも多いような気がする。

このタイプの神経所見は過去ログでは時々記載はしているが、たいした考察はしていない。例えば、「ECTによる治療と回復過程」のエントリで、

44日目
夫が来院し病状の説明をする。本人は「自分が入院している意味がわかりません」という。右尺骨神経麻痺が出ている。CPK637。ビタミンB12 の静注を開始ししばらく続けることにした。この尺骨神経麻痺は偶然ではなく、治療経過の上で重要な意味を持つ。これは長くなるため、いつかエントリとして取り上げたい。


と簡単に書いている。これ以外にも似たような記載がいくつかあると思うが、あまり検索できなかった。

このような神経麻痺、疼痛の出現は、患者さんの回復過程を観察していると、あたかも精神病状態が麻痺や疼痛に置き換わっているように見える。回復の途中で出てくる上、このような所見が出る人の方がそうでない人より、改善のあり方が美しいことが多いからである。

しかし、その考え方はオカルト的である。

おそらく、脳、末梢神経、筋には相互に関係が深いことを暗示している。一般に、双極性障害や統合失調症は、そこまで末梢神経や筋に深く関係していると考えられていない。

しかし、広汎性発達障害では、末梢神経や筋について、少なくとも内因性疾患よりは関係性を議論されている。広汎性発達障害では、合併症として発達性協調運動障害などが言われているが、これは運動神経が良くないことや姿勢の悪さと関係が深い。(筋緊張の低下など)

内因性疾患、広汎性発達障害、その他の精神疾患を問わず、最も極端な状況は、悪性症候群であろう。

悪性症候群は、過去ログでは単に向精神薬の副作用と見なすべきではなく、精神病状態と一連のものと考える方が色々な辻褄が合うといった記載をしている。悪性症候群では著しい筋強剛や振戦がみられるが、この際に同時に精神症状も昏迷状態など病状が悪化していることが多い。

これは内科疾患で言う「敗血症」みたいなものである。もともと限局していた感染症がなんらかの原因で全身に及んでいる状態と言える。(精神病状態が全身に及んでいる状況)

だからこそだが、なぜ、ああもECTが効くのかが理解できる。

ECTという治療が非常に有用であり、この方法でないと救出できない人たちがいることは過去ログを読めば容易にわかるであろう。

また、古典的通電方法(無麻酔下のECT)が麻酔下ECTやサイマトロンより遥かに効果的なことも理解しやすい。

あれは例えて言えば、脳に引きこもっていた敵が外に出てきたところを強烈に叩いているのである。

古典的ECTで、非常に病状が悪い時こそ、より高い効果が期待できる理由が説明できる。ECTはする方針なら、実施するタイミングが重要なのである。

また「脳に通電すること」だけでなく、「全身けいれんを起こさせること」が前者に準じるほど重要なことも臨床的に経験している。なぜなら、単なる意識消失より大発作の方が精神面の改善効果が断然上回るからである。

無麻酔下のECTでは全身けいれんが生じず、意識障害だけに留まることがある。こういう経過では思ったほど病状改善が見られないことが多い。つまり不発というわけである。これは筋肉に影響が及んでいないため、効果が不足していることを示している。つまり古典的ECTは、

全身けいれんを起こさせることで、筋肉の問題をリフレッシュしているのであろう。その結果、脳に逆行性に好影響を与えているのである。

歴史的には脳に通電するより、むしろ単に全身けいれんを起こさせることが重視されていたように見える。例えばインスリンショック療法である。(低血糖を生じさせ、けいれんを起こさせる)インスリンショック療法は、脳には通電していない。2次的にけいれん発作を起こさせているので脳に関係はしているとは思うが。

精神病は、脳を直接に治療しなくても筋肉などの操作でいくらか改善しうるものである。ただし平凡に筋を操作しても、脳には影響はわずかしか及ばない。タイミングと強度が重要なのである。

慢性的うつ状態に伴う重い腰痛や肩痛なども実は一連のもののように見える。はっきりしない腰痛のために働けない人たちがいるが、これはむしろ脳をなんとかすべきであろう。

そういう関連性があるからこそ、精神病の改善の過程で、奇妙な神経麻痺や筋肉痛が出現するように思う。

長期に入院している古い統合失調症の患者さんを観察していると、精神症状の消長に同期して、麻痺や疼痛が出現している人を見ることがある。これは重い精神病がサインカーブを描き、脳から末梢に障害の一部を移したり戻したりしていると見ることも可能だ。(ただし、筋肉が主座にはなりえない。)

そういう風に統合失調症の慢性像を表現しているのであろう。


またこの逆のことも生じうる。例えば転落事故や交通事故(バイクの転倒など)を起こし、全身を強く打つとか、筋肉の挫滅症候群を生じ、その後しばらくして幻聴や被害妄想が出現するパターンである。このタイプは本来は症状性疾患と診断すべきであるが、そうは思われず操作的に統合失調症と診断されることが多い。

この大きな理由だが、例えば、バセドー病や肺炎のようなタイプの内科疾患に比べ、整形外科疾患は筋肉ということもあって、一歩だけ内因性疾患に似た病態を呈するのかもしれない。

実は筋肉、末梢神経に限らず関節なども深い関係があり、整形外科疾患の胸郭出口症候群などでも幻覚妄想を生じうる。

転落事故から幻覚妄想を生じ、統合失調症と診断されていた人をここ数年治療しているが、今は抗精神病薬を全て中止し、気分安定化薬だけで治療を行っている。現在、その人を統合失調症と診断するのは苦しいくらいに回復している。

この人はある大学病院で診断、治療されていたが、大学病院が診断マニュアルにとらわれて、いかに真実が見えていないかが良くわかる事件である。(僕の出身大学でなくて良かった)

参考
悪性症候群のテーマ
ECTのテーマ
内因性の正体のテーマ
双極2型の激鬱とECT
死生命あり、富貴天にあり


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