虐待とラミクタール | kyupinの日記 気が向けば更新
2010-05-25 20:53:13

虐待とラミクタール

テーマ:ラミクタール
今回のエントリは「ハワイのロミロミマッサージのおっちゃん」の続きである。

彼女は当初、著しい拒食状態で初診している。全く食事がとれないので、その日入院させることにした。

子供の頃、虐待を受けていたらしい(細かい内容は謎)。本人によれば、良く憶えていないという。嘔気、嘔吐のため、いくつかの内科病院に受診している。なんとか働いているが、体調は最悪で、めまい、嘔気、キーンと言う耳なりの訴えがあった。また、急に変な気分になり叫ぶ。その後、記憶が飛んでいるという。過去には自殺未遂もあった。周期的に特に理由もなく頭や胸が締め付けられる感じがあると言う。

デパケンR  400㎎
リボトリール 1㎎
ドグマチール 100㎎
マイスリー  5㎎
ユーロジン  2㎎


いきなりこの処方で開始する。翌日には締め付けられる感じが減少。20~30分おきにあったのが、2~3時間おきになった。平凡に、点滴とビタミンB12の静注を行なう。

しめつけられる感じは5日以内にほとんど消失。しかし耳鳴りが酷いらしい。更にデパケンRを増量してみる。

デパケンR  800㎎
リボトリール 1㎎
ドグマチール 100㎎
メチコバール 1000
マイスリー  5㎎
ユーロジン 2㎎


数日後、外で、おじいちゃんが何か叫んでいる感じがするという。アナフラニールを0.5アンプルだけ点滴する。1週間ほど続けた。その後、自覚症状はかなり回復し食事も摂れるようになった。

彼女の特徴は解離のようなものがあるが、色々な人々が出てこないこと(妙な人格が出てこないことを言っている)。性的虐待を受けた人は、3~4歳の子供から、オッサンに至るまで色々な人々が出てくることがある。このような人の方がずっと重いと感じる。このタイプの患者さんが1名に収束すると、当初、窮屈になりかえって苦しいなどと言うので、別人格はある種の苦痛を緩和する防衛なんだと思う。

そのようなことから、彼女は虐待とはいえ、性的虐待のような性質ではなかったのではないかと思った。(全ては謎のままである。聴きようがないため)

入院25日目くらいに外泊してみたら、とても良かった。食事もたくさんとれて、動いて寝た。なぜか蕁麻疹ができているが、原因がはっきしない。アレグラを併用し、そのまま退院させる。(入院は1ヶ月)

退院時処方
デパケンR  600㎎
リボトリール 2㎎
ドグマチール 100㎎
マイスリー  5㎎
ユーロジン  2㎎
アナフラニール 25㎎


症状のわりに短期間であっさり退院しているように見えるが、うちの女医さんによると驚愕するレベルの改善だったらしい。(参考

実際、このような人はこれからが大変なのである。過去ログでは前半、後半と2回の入院をしている人も出てくる。彼女の場合、どうみても2回目の入院が必要だったと思う(参考)。ただ、彼女の場合、2回目の入院は経済的な理由で難しかった。

バッチフラワーはレスキューレメディーとスターオブベツレヘムを勧める。家に帰ると、時々、フラッシュバックのように手が震える、昔のことを思い出し泣いてしまうと言う。

「音に対し過敏。私は言われることを悪く取るようなところがありますね。」(参考

退院1ヶ月目。
最近、手が震えて片足で立てない。体重は40kg前半まで減少している。何もしたくない。時々、薬を飲まなくなったらどうなるんだろうと思う。時間が経ち、体調の変化からドグマチールの副作用が出現しているように見える。ドグマチールは漸減中止する。

彼女には、何らかの良い治療法があると思われるが、急がず成り行きにまかせる。こういう人は、治療者が焦ってあがくとかえって裏目に出やすい。

1ヶ月半
嫌なことが立て続けに続いたので、なるだけ外に出るようにしている。時々アルバイトもしている。入院時40kgだったのが、今は44kg。今は食べられるけど食べる時と食べない時の差が激しいですね。リストカットはない。

なんだか気持ちが切れやすくなって、物を投げて壊す。興奮しやすい。前はあまり喋らなかったけど、今は喋るようになった。食は細いけど、太りたくない。アナフラニールを中止し、セロクエルを追加してみる。

デパケンR  600㎎
リボトリール 1㎎
マイスリー 5㎎
ユーロジン 2㎎
セロクエル 50㎎


セロクエルはさんざんだった。セロクエルはとにかくきつかったらしい。「セロクエルは過食・嘔吐になってきついです」という。セロクエルは合わないようなので、仕方なく抑肝散とデプロメールを処方。

デパケンR  600㎎
リボトリール 1㎎
マイスリー  5㎎
ユーロジン  2㎎
デプロメール 50㎎
抑肝散    7.5


2ヶ月
ふらつき、手の振るえ、過食が酷い。今はひきこもり状態。過食・拒食が交じり合ってどうしようもない。太りたくないという気持ちが強い。毛が酷く抜けるという。脱毛はおそらくデパケンRの副作用と思われるので、デパケンRを漸減する(参考1参考2)。一般に抗てんかん薬は急に中断せず漸減すべきだ。(デパケンはその点で扱いやすい方)

デパケンR  200㎎
リボトリール 1㎎
マイスリー  5㎎
ユーロジン  2㎎
デプロメール 75㎎
抑肝散    7.5


3ヶ月半
髪が抜けるのは変化がない、少し過食が良くなっている。51kgが46kgまで減った。眠剤以外の薬は、たいして好影響を及ぼしているようには見えない。思い切って大幅に減量する。本人もろくに飲んでいないようであるし。胃が悪いと言うので漢方を併用。バッチフラワーは飲んでおくように伝える。六君子湯は実は食欲を改善する。過食になるのかどうかと言うと、やってみないとわからない。

マイスリー5㎎
ユーロジン 2㎎
六君子湯  7.5


4ヵ月半
とても忙しく働いているので、悪いのかどうかわからない。まだ髪の抜けが酷い。バッチフラワーは飲んでいます。

5ヵ月
体重は42kgくらいになった。手の震えはだいぶんおさまってきた。気分の波はあるが、今の眠剤でしっかり眠れるのがいい。

5ヶ月半
今は髪は全然抜けなくなっている。とにかく、体はきついし疲れやすい。手の震えは今は全くない。

6ヶ月
調子は悪くない。バッチフラワーで顔色が良くなった。今は44kgです。

6ヶ月半
僕が春ウコンを勧めると、やたら嫌がる。先生がそこまで言うなら飲んでみると言う。

結果;本人によると、効いている様に思えないと言う。便秘には効いているかな?

急に仕事に行ったら全然ダメ。1週間吐き続けて、5kg減ってやめた。仕事中はドーンと気持ちが落ちる。仕事どころではない。あまり合いそうに思えないが、トレドミンを勧める。

トレドミン  30㎎
マイスリー  5㎎
ユーロジン  2㎎
メイラックス 1㎎


トレドミンは吐き気が酷くて続かないという。前に比べ、人ごみがダメになりましたね。前より眠りは良い。トレドミンは無理そうである。

9ヶ月
春ウコンは結局1ビン飲んでみたという。あれは効いているんでしょうか?と逆に聴かれる。

ウコンは飲み終わった直後、少しイライラするみたい。時々、物を投げて壊すという。思うようにいかない。春ウコンはもう止めて良いと伝える。もう少しインパクトのある薬が良いと思われた。

こういう子には、ラミクタールかトピナかブプロピオンと思われるが、本人にお金がない上に、ブプロピオンはパニックを悪化させることがあるので、除外的にラミクタールかトピナであろう。ただ、このタイプの人のパニックは一般のパニック障害とは異なっているので、ブプロピオンで十分なケースもある。(参考

トピナはとてつもない拒食状態になるかもしれず、またこの子にはラミクタールより飲みにくいと思われるのでラミクタールを勧める。

前回のデパケンRのこともあり、ラミクタールのシビアな副作用を説明すると、

工エエェェ(´д`)ェェエエ工

と、難色を示す。(←当たり前)

しかし、これくらいしか劇的に打開するような薬などなく、現況、ラミクタールしか良さそうな方法がないと言えた。本人はなんとか服薬に納得する。ラミクタールは12.5㎎から開始。

マイスリー  5㎎
ユーロジン  2㎎
メイラックス 1㎎
リボトリール 0.125㎎
ラミクタール 12.5㎎


10ヶ月
ラミクタールの手ごたえはない。でも物は壊さなくなった。ワケがわからなくなったりはない。しかし、またならないかはちょっと不安ですね。ラミクタールは1日25㎎まで増量しそのままとした。

この後、定期的に通院していたが、来る度に診察室で泣いていた。この人は泣くために来院しているのか・・と思うほど。たいして診察時間がとれないので不満だったようである。(それでも他の患者さんよりは長い)

1年半
パニックや衝動、解離がほとんどなくなったらしい。2つかけもちで1日14時間仕事をしている。最近はストレス性の下痢がなくなった。体は疲れるけど仕事はできますね。特に・・非現実的な生活を入れると良いみたいです。今は切れたりもない。

マイスリー  5㎎
ユーロジン 2㎎
メイラックス 1㎎
リボトリール 0.125㎎
ラミクタール 25㎎


外来婦長によると、表情が驚くほど良くなっているという。診察中に悔やみのようなことを言わなくなったし、会話も明るくなった。いつか彼女の退院時にその変わりぶりに驚愕したネコ好きの女医さんも更に唖然。

彼女の処方はまさにラミクタールの処方と言える。こういうのがラミクタール単剤の治療であり、ラミクタールの爆発的な力がいかんなく発揮されている。

全く、ラミクタールは凄い薬だよ。

彼女はやっと過去と未来の中間、つまり現在に生きるようになった。


(今日のエントリにはもう1つ補助的なエントリがある。

参考
Barbarism Begins At Home(The Smiths)
どういうメールが来るかなど(その2)
テーマ;ラミクタール
テーマ;トピナ
テーマ;デパケンR
貴方が来るのを待っていました
分類不能の発達障害

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