サインバルタ | kyupinの日記 気が向けば更新
2010-03-14 13:25:45

サインバルタ

テーマ:サインバルタ
サインバルタ(一般名;デュロキセチン、海外の商品名;Cymbalta)

いよいよ、来月上旬(2010年4月)サインバルタが発売されるようである。過去ログではサインバルタではなく、全てシンバルタと記載している。日本での商品名が「サインバルタ」とされたのは、似たような既発売の薬物があるためである。これと同じような変更は過去にもジェイゾロフト(ゾロフト)、エビリファイ(アビリファイ)に見られる。

サインバルタなんて名前がダサすぎ、と思うが、慣れるとそうでもなくなる。これはサッカーチームの名称変更に似ている(大分トリニータ、ロアッソ熊本など)。

サイバルタはアメリカ、イーライリリーによる開発で、日本では塩野義製薬とイーライリリーの併売になりそうである。イーライリリーの日本での向精神薬としてはジプレキサとストラテラが有名である。

サイバルタはSNRIにカテゴリーされる薬物で、選択的セロトニンおよびノルアドレナリンの再取り込み阻害作用を持つ。日本で既に販売されているトレドミンと同じ系列であるが、SNRIの中ではベンラファキシン(エフェクサー)が最も有名と思う。トレドミンなどはアメリカでは発売されていないばかりか、既発売の国でも疼痛にしか適応がないこともある。

今回、日本での効能は「うつ病・うつ状態」であり、一般的な海外の適応より狭い。サインバルタは糖尿病による神経因性疼痛に有効だからである。シンバルタはアメリカで最初に「糖尿病による神経因性疼痛」に適応が認められた薬物である。

海外での適応状況
糖尿病性疼痛障害・・・95カ国
大うつ病・・・・・・・96カ国


日本での適応の範囲がいつも今ひとつケチになるのは、厳格な臨床試験のルールも関係していると思う。マイスリーなどは見切り発車で発売されたが、未だに統合失調症やうつ病にレセプト的に使えない状況にある。(処方した場合、減点として帰ってくる)海外では統合失調症やうつ病にも処方されているので、決して相性が悪いと言うわけではないのである。

いつかも書いたが、臨床試験では本質的な有効性を確かめにくい。(エイジングが足りないという意見を過去ログでアップしている。普通、知らない薬より使い慣れた薬の方がずっと効果が出るものだ。)

サインバルタの興味深い薬理作用として、「自発性の膀胱排泄のコントロールが行なえないストレス性の尿失禁」に有効であることが知られている。これは女性に多く、アメリカではやがて効能追加になると思われる(もう認可されたかもしれない)。

日本では剤型は20㎎と30㎎カプセルの2種類が発売される。アメリカでは20㎎、30㎎に加え、60㎎カプセルも発売されている。このカプセルの意味であるが、サインバルタは悪心の副作用が出やすいため遅延放出型カプセルが選ばれているようである。このため、服用後2時間後くらいから吸収され始め、服用後6時間で最高血中濃度に至る。食事の影響を受けやすく、食物のために最高血中濃度が6~10時間遅れると言われる。

血中半減期は約12時間(8~17時間)で3日目に定常状態になると言われる。サインバルタは肝臓で代謝される。また代謝産物は70%が尿中に、20%が糞便中に排泄されるらしい。これらから、大酒飲みはサインバルタは服用すべきではない。また肝機能障害、末期腎不全、狭偶角緑内障の患者さんも処方を避けるべきである。(日本の正式な添付文書がどのようになるかはまだわからないが・・)

用法、用量については、イーライリリーのホームページでは、

通常、成人には1日1回朝食後、デュロキセチンとして40mgを経口投与する。投与は1日20mgより開始し、1週間以上の間隔を空けて1日用量として20mgずつ増量する。なお、効果不十分な場合には,1日60mgまで増量することができる。

サインバルタだけではないが、新しいタイプの抗うつ剤の優劣が今ひとつはっきしりていなかったが、2009年Lancetによると以下のようになっている(過去ログから再掲)

有効性の指標による抗うつ剤の世界ランキング(最も良い治療である可能性(%))
①ミルタザピン(レメロン)     24.4
②エスシタロプラム(レクサプロ)  23.7
③ベンラファキシン(エフェクサー) 22.3
④セルトラリン(ジェイゾロフト)  20.3
⑤シタロプラム(セレクサ)     3.4
⑥ミルナシプラン(トレドミン)   2.7
⑦ブプロピオン(ウエルブトリン)  2.0
⑧デュロキセチン(サインバルタ)   0.9
⑨フルボキサミン(デプロメール)  0.7
⑩パロキセチン(パキシル)     0.1
⑪フルオキセチン(プロザック)   0.0
⑫レボキセチン(Davedax)      0.0

受容率(忍容性)の指標による抗うつ剤の世界ランキング(最も良い治療である可能性(%))
①エスシタロプラム(レクサプロ)  27.6
②セルトラリン(ジェイゾロフト)  21.3
③ブプロピオン(ウエルブトリン)  19.3
④シタロプラム(セレクサ)     18.7
⑤ミルナシプラン(トレドミン)   7.1
⑥ミルタザピン(レメロン)     4.4
⑦フルオキセチン(プロザック)   3.4
⑧ベンラファキシン(エフェクサー) 0.9
⑨デュロキセチン(サインバルタ)   0.7
⑩フルボキサミン(デプロメール)  0.4
⑪パロキセチン(パキシル)     0.2
⑫レボキセチン(Davedax)      0.1

上の表を見るとわかるが、サインバルタはエフェクサー(ベンラファキシン)に有効性の面で劣っている。有効性の面ではミルタザピン(レメロン・リフレックス)、エスシタロプラム(レクサプロ)、ベンラファキシン(エフェクサー)、セルトラリン(ジェイゾロフト)の4剤が抜けており、他は以下同文と言った感じである。ただし、これらはほとんどが海外の文献によるものであり、日本人の場合、少し異なった結果になるのかもしれない。

サインバルタとベンラファキシン(エフェクサー)の忍容性は良いとは言えない。少なくともトレドミンよりは服用し辛い薬物であることが予想される。

サインバルタの副作用は、悪心、口渇、めまい、便秘、疲労感、食欲不振、傾眠、発汗である。悪心は最も中止の原因になる副作用である。また、中止の際に離脱症状が酷いため漸減しなくてはならない。(ベンラファキシンも離脱が酷いので有名である)

また、トレドミン、サインバルタ、ベンラファキシンは同じSNRIのカテゴリーの薬物だが構造式が全然似ていない(SSRIも同様)。これら3剤は古典的3環系抗うつ剤とは異なる薬物であるが、セロトニン、ノルアドレナリンのダブルアクションという視点では、かつての3環系抗うつ剤と似ている。SSRIやルジオミールがむしろ特異なのである。

SNRIを増量していった場合、セロトニンとノルアドレナリンの増加のパターンの変化についてはまだ良くわかってない面があるが、ベンラファキシンの場合は高用量域ではノルアドレナリンの再取り込み阻害作用がより大きくなると言うエビデンスがある。サインバルタについてはまだよくわかってない。

トレドミンなどは高用量になると高血圧や頻脈のために減量せざるを得ない人がいる。こういう人はノルアドレナリンの作用が強く出すぎていると感じる。

また海外では、サインバルタは60㎎を超える高用量では、より有効性が高まると言う結果が出なかったらしい(高用量では用量依存性がない)。また60㎎を超えると、忍容性に問題が出てきやすくなると言う。日本での60㎎までで処方される理由はその辺りも関係していると思われる。

サインバルタのFDAによる催奇形性カテゴリーはCである。これはジェイゾロフト、デプロメール、リフレックスなどの抗うつ剤と同じになっている。

【C】
動物生殖試験では胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいは、ヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。注意が必要であるが投薬のベネフィットがリスクを上回る可能性はある(ここに分類される薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的危険性よりも大きい場合にのみ使用すること)。


補足
ベンラファキシン(エフェクサー)は、うつ病(うつ状態)、全般性不安障害、社会不安障害などに有効である。また、症例報告レベルでは、強迫性障害、パニック障害、ADHD(注意欠陥/多動性障害)に有効などの意見がある。また疼痛性障害にも処方される。


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