激うつ、パニック、慢性疲労の人 | kyupinの日記 気が向けば更新

激うつ、パニック、慢性疲労の人

ある男性患者さんだが、彼は長いことパニックと慢性疲労で悩んでいた。いろいろクリニックや精神科病院を廻って治療を続けていたが、全然良くならないでいた。ある時、クリニックの院長から、もう捨てられる感じでうちに紹介されたらしい。

最初、診始めて数ヶ月はたいして良くなかった。当初、特にパニックを改善することを主に治療していた。当時、ゾロフト、プロザック、Lトリプトファン、フォスファチジルセリン、セントジョーンズワート、その他の精神科サプリメントを試みていた。

結論を言えば、これらの特に精神科サプリメントについてだが、あまりぱっとしたものはなかった。しかし、パニック、うつ状態に関しては、次第にアナフラニールでまあまあ良いことがわかってきた。こういうドクターショッピングの人が、アナフラニールがあんがい効くというのは盲点だと思う。ありふれた薬なのに。SSRIに関しては、後に発売になったパキシルが最もマシであった。プロザックやゾロフトは彼に限ればあまり相性が良くなかった。パニックにはまだ良いとして倦怠感を少しだけ悪化させているように見えたからだ。この人の場合、量は少なくて良いけど、アナフラニールとパキシルを両方飲んでいた方が良いようなのである。

そうしているうちに、ある時、急に悪化して入院せざるを得ない状況になった。今から考えるとこの短い入院期間に運命が変わったとしか言いようがない。

入院当時の処方
パキシル   10mg
ソラナックス 1.2mg
リタリン   1T
(ECT直前なので減量している)


このほかに、メトリジン、漢方薬、オイグルコン、グルコバイなどを処方している。彼の場合、当時、パキシルは10mgの方が良かった。20mgだと彼には多いのか吐き気が酷いのである。

彼は入院時、酷い恐慌状態に至っており激うつ状態と言えた。いわば、うつ状態の亜昏迷状態である。うつ状態の亜昏迷状態とは自殺も起りうる非常に重篤な状態と言える。しかし見方によれば、それは治癒に向かうことができる稀有な状況なのだと思う。千載一遇のチャンス・タイムなのである。亜昏迷は病気の経過からいうと特殊な歪みたいな局面であり、「変曲点」みたいなものと思っている。ただ、うまく対処できればだが・・

彼は、ECT(電撃療法)をしないとどうしようもないと思うようになった。本人に勧めると、ぜひしてほしいと言う。彼の奥さんも呼んで説明した。僕は、ECTは旧来の方法でも気をつけてすれば相当に安全だと思っているが、説明する以上、稀な副作用も説明せねばならない。そういうのが嫌いなんだけど仕方がない。僕は、彼の激うつに関してはECTでかなり良くなると思ったが、「酷い倦怠感」に関しては、効果が期待できるのかどうか全然自信がなかった。彼にECTの治療法の説明をした時、妙に受け入れが良くて、ECTが怖いとか、先入観はあまりなかったような気がする。

入院直後、少し様子を診て、すぐに1クールECTを実施している。計5回であった。当初1回目が終わった時、本人に感想を聞くと、「少し良くなったような。本当に電気ショックで治るのだろうか?と思ったりします」などと答えている。また、ECTをすると直後2日くらいはすごく気分が良いという内容を話していた。しかしその後、少し倦怠感が出てくるのだという。

いざECTを実施してみると、ちょっと拍子抜けだった。少なくとも、結果に関しては劇的とまでは言い難い。彼は亜昏迷を脱しただけで、他はすごくは変わらなかったからだ。うつも倦怠感も少し改善しただけだった。それでも、しばらくして退院できそうな感じになったので、それだけは良かった。

ECTは1クールしかしなかった。その後アナフラニールを毎日点滴していたが、普通はこういうのしか良い方法がない。気休め程度しか効かないと思ったが、光療法も合わせて実施した。この時、アナフラニールは嘔気をかなり軽減することがわかった。アナフラニールを併用すると、彼の場合、嘔気が軽減するのでパキシルが20mgまで服用できるようになるのである。

その後、退院してからエゾウコギを併用するようになった。エゾウコギを使うようになって、なんとなく症状全体が変わってきた。次第に倦怠感が減ってきたからである。症状にメリハリが出てきて、なぜかパニックやうつ状態もなくなってしまった。もちろん服薬はしているが。

彼は、その後1年くらいでほぼ普通の人の生活に戻った。今は仕事をしているし、自覚、他覚症状とも一般の人とほぼ変わりがない。彼はうちの病院に来る前は全然動けなくて肥満し糖尿病だった。HbA1cなど、一時、11くらいだったのである。これは糖尿病の合併症が出てもおかしくない程度だと思われる。入院時でさえ、8.6くらいはあった。最近のHbA1cは5.6~ 6.0程度なので、ほぼ糖尿病も完治に近い。なぜこうなるかだが、うつ状態になるとコルチゾールの分泌が変わり糖尿病になりやすくなる。それが改善したことや、動けるようになり運動が可能になったことや、エゾウコギがインスリンの分泌を改善したり、あるいは組織の反応を改善しているとか、謎の関与もあったのかもしれない。僕は、エゾウコギはずっと史上最強の代替療法薬と思っている。こういうのは西洋薬ではありえない。体のすべてを治療しているから。

その後もう彼は長く診察している。もう7年以上だ。服薬はしているが、パニック、うつ状態、倦怠感はすべてほぼ消失している。それでも夏場は少し夏バテしているようなので、どこまでを正常とするか微妙なのだが、症状と見なせないほどだと思っている。

次第に僕は、あのECTがすごく良かったように思うようになった。即効性がなかっただけで。あれからエゾウコギも使用しているが、症状改善の流れはあのECTがスタートだったような気がしている。僕の患者さんで神がかり的に良くなった人は、まだアップしていない人もいるが、ECTが関与しているとしか思えない人が何人かいる。たぶん、彼はECTをしていなかったら、こういう経過になっていなかったような気がするのだ。

僕は、こういう人をほぼ完治なんて、ほとんどありえないくらいの確率だと思う。この人は僕の治療した人たちの中で、それこそ、神がかり的に劇的に改善した患者さんの1人なのである。

最近、彼にドクターショッピング時代の話を聴いてみたことがあった。彼によれば、「○○クリニックは最悪だった」とか、すぐそういう話になるが、僕は「そうだ、そうだ」とは言わない。(笑)

そういうのは好きではないんだ。「貴方の治療は、非常に難しかったので仕方がない」くらいに答えている。

最近の処方
アナフラニール 75mg
パキシル    20mg
レキソタン   5mg
ソラナックス  1.2mg
リタリン    10mg


他に、ビタミンB6、ビタミンB12、ツムラ17(五苓散)、エゾウコギを併用している。彼の場合、不眠がないので眠剤は必要ない。以前は服用していた糖尿病と高血圧の薬はもういらなくなっている。

このリタリンの話でかなり盛り上がった。彼がドクターショッピングをしていた時、どこのクリニックに行っても、リタリンばかり処方されたのだという。市内にけっこう真面目な社会復帰にも熱心な精神科病院があり、その病院に行ったところ、「そんな麻薬みたいな薬はここには置いていません」と叱責されるように切って捨てられたらしい。

これには2人で大爆笑であった。今のリタリンだけど、別にやめても問題ないと思っている。しかし彼は今の調子が良いので何か薬の変更がきっかけになって悪化するのを非常に恐れているのだ。現況、このリタリンはそう効いていないにしても、悪化させているような様子はないし、そのままにしている。今、僕の患者さんで外来でリタリンを処方しているのは彼だけなのである。他の2名は簡単に中止することができた。リタリンは、うつ病には絶対いらないまではないかもしれないけど、ないならないでやっていける薬物なのである。

参考
エゾウコギ

5 名前: kyupin 投稿日: 2000/01/05(水) 23:14
>4さん。
薬のスレッドの転載です。
エゾウコギは健康食品(?、漢方生薬に入ると思うが)の中ではかなり効果が期待できる方だと思います。のんさんの場合はうつに効いたと言うよりもエゾウコギの免疫力を高め、疲労感を改善する効果が出たものと思います。

エゾウコギは名前でもわかる通り北の方でしか採れません。ロシア名を「エレウテロコック」、中国名を「刺五加」と呼びます。 旧ソ連は薬草エレウテロコックについて1960年頃から研究し1968年にはソ連科学アカデミー・シベリア支部から「極東地区の新しい薬草エレウテロコック」という研究報告書が発表されています。

オリンピック選手(マラソン、長短距離、長距離スキー、自転車など)にエレウテロコックエキスを飲用させると、いずれも平均タイムを短縮できたといいます。また選手の体調を調べると、疲労回復期の血行がよく、筋肉のほぐれが早く、食欲も盛んで睡眠は深かったと言います。ネズミの実験でも同様な結果が出ています。

6 名前: kyupin 投稿日: 2000/01/05(水) 23:16
体の抵抗力を高める効果については、暑さ、寒さ、麻酔、アルコール、薬品への抵抗力が増し、細菌、自家中毒、寄生虫、神経症におかされる率が低くなったといいます。

1980年に英国の雑誌「ニューサイエンティスト」に次の文章が掲載され反響を呼びました。
「モスクワ五輪で大量の金メダルを取ったソ連選手はやはり薬物を飲んでいた。・・・・(中略)・・・植物から抽出された特殊なエキスでソ連では万能薬として普及している。特に反射神経を鋭敏にし、持続力集中力を高める効果があるという。欧米では知られていないため、禁止薬物に指定されておらず、ソ連選手だけが自由に使用しており不公平だ。」つまりドーピングに使用されていたのです。

うつでも、疲労感が前景で「うつ病」らしい認知障害の目立たないタイプの人は、エゾウコギで体調が改善する可能性があると思います。 ただ高価なことが難点でしょうか。煎じて飲用するのが一番らしいですが、ホワイトリカーに漬け込んで琥珀色になったものを(1ヶ月ぐらいはかかる)1日30ml~50ml飲用するのが効果もあり手がかからなくて良いと思います。

参照
電撃療法(ECT)