新型コロナワクチンは 稀に疾患を引き起すが「感染のほうがはるかに有害」研究結果

                                         2024.03.04            Forbes JAPAN 

    Pfizer(ファイザー)、Moderna(モデルナ)、AstraZeneca(アストラゼネカ)などの

企業が提供する新型コロナワクチンは、心臓、脳、血液の疾患を まれに引き起こすことが、

査読付きの最新研究で明らかになった。ただし 専門家によると、新型コロナウイルス感染症

(COVID-19)の発症にともなうリスクは、ワクチン接種にともなうリスクを大幅に上回るという。

 

 ワクチンの安全性と効果に関する多国籍の調査ネットワークで、WHO(世界保健機関)が主導

する「Vaccine Safety Net」プロジェクトのメンバー団体でもある「グローバル・ワクチン・

データ・ネットワーク」の研究チームは、8カ国9900万人のワクチン接種者を対象に「 特に注目

すべき有害事象 」とみなした 13の疾患の予想発生率(接種開始前のデータから取得したもの)を、

実際に 観測された発生率と比較した。

 

 学術誌『Vaccine』に発表されたこの研究によると、分析の結果、Pfizer-BioNTech(ファイザー

・ビオンテック)製とモデルナ製のmRNAワクチンの1回目、2回目、3回目接種で、心筋炎

(心臓の炎症)がまれに発生することが確認された。

最も発生率が高かったのは、モデルナの2回目接種後だった(予想発生率の6.1倍)。

 

 心膜炎という 別の心疾患では、アストラゼネカ製のウイルスベクターワクチンを 3回目に接種

した人の発症リスクが 6.9倍に上った一方で、モデルナ製ワクチンを1回目と4回目に接種した人の

リスクは それぞれ 1.7倍と2.6倍だった。

 アストラゼネカのワクチンを接種した人では、まれな 自己免疫疾患であるギラン・バレー症候群

を発症するリスクが、研究チームの予想した発症率より 2.5倍高く、また同じ集団における血栓症の

発症リスクは 3.2倍高かった。

 また 研究によると、神経疾患である急性散在性脳脊髄炎を発症するリスクは、モデルナ製ワクチン

では 3.8倍、アストラゼネカ製ワクチンでは 2.2倍に上っていた。

 

 科学情報サイト「Our World in Data」によると、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが

始まって以降、新型コロナワクチンの接種は 全世界で 135億回に上る。世界人口の約71%が、

少なくとも 1回は ワクチン接種を受けている。

 

 「 それでも なお、これらの有害事象が発生する確率は、SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)に

感染した場合の方が はるかに高い。したがって、ワクチン接種を受ける方が圧倒的に安全な選択だ 」

と、バイオテクノロジー企業Centivax(センティバックス)のジェイコブ・グランビルCEOは

Forbes JAPANに語った。同氏は 今回の研究には参加していない。

 新型コロナワクチンの目的は、重篤な感染症の予防だ。モデルナファイザー・ビオンテック

アストラゼネカ製のワクチンは、重症化や入院、死亡を予防する効果があることが研究で示されて

いる。 一方、新型コロナ感染後に 神経症状が発生する確率は、新型コロナワクチン接種後に比べて

最大 617倍に上っており、これは「 ワクチン接種の利益が、リスクを大幅に上回る 」ことを示唆

していると、今回の研究著者らは述べている。

 

 米エール大学の岩崎明子教授(免疫生物学)によると、心筋炎の発症リスクも、ワクチン接種後

より 新型コロナ感染後の方が高い。新型コロナワクチン2回目接種後の心筋炎発症リスクは10万人

あたり35.9人であるのに対し、新型コロナ感染後のリスクは同64.9人となっている。

 また、2023年に学術誌『Neurology』に発表された研究によると、新型コロナ感染後のギラン・

バレー症候群の発症リスクは 対照群の6倍であるのに対し、ワクチン接種後の発症リスクは 同0.41倍

だった。

 

 現在、ほとんどの米国人が、少なくとも 1回は 新型コロナワクチンの接種を受けているが、

コロナの新たな変異株に対応するブースター(追加)接種の接種率は 伸びていない。

 

 現在、急速に感染拡大している変異株「JN.1」は、2023年秋から冬にかけて感染者を増加させて

いる。新型コロナ、インフルエンザ、RSウイルス(RSV)のトリプル流行は、2022年秋冬にも問題

になったが、現在 それが再来したかたちだ。JN.1系統は、2月17日までの2週間に確認された

新型コロナ全症例の96.4%を占めている。

 

 それでも、新型コロナの感染件数(0.6%減)と死亡者数(6.9%減)は減少傾向にあり(ただし

入院数は 0.8%増)、トリプル流行は 収束の兆しがみられる。
 JN.1は、2023年12月に WHOによって
「注目すべき変異株」に分類された。これは、その感染拡大

が「世界の公衆衛生に新たなリスク」をもたらし得ることを意味する。

 

 JN.1は、高度に変異した(過去に報告されたBA.2系統から スパイクタンパク質に 30以上のアミノ酸変異

を有する)「BA.2.86」系統の亜系統であるため、一部の専門家は「XBB系統」の変異株に標的を

絞った 1価ワクチンのブースターでは防御できない との懸念を示していた。

これに対して ワクチンメーカー各社は、1価ワクチンでも一定の予防効果はあるとしてい。

                                   (forbes.com 原文