平山~比麻奈山~比麻良山 | 独り言ちの山暦

独り言ちの山暦

「風の又三郎、又三郎、早く此さ飛んで来!」「この頂で赤道から北極までの大循環の自慢話を聴かせてくれ。」

 

       2022.9.11。

       昨夜は中秋の名月。

       今年は中秋の名月と満月と同じ日だそうだ。

       9月10日は孫の誕生日でもある。

       良い日に誕生したのかもしれないな、と自分勝手の講釈で思う。

       Kawaさんは昨夜、月見で日本酒を奥様と酌んだとのことだ。

       自分と言えば妻と陋屋の窓から暫しの時間、月を眺めた。

        良く生きてきたこれまでと、これからの行く末に思いを巡らせた。

       そうして今夜は十六夜。

  

       恥ずかしそうに遅れがちに出てくる、この月が何とも言えないほどに

       好きだ。十六夜月が自分の人生に投影されていれば違う人生になって

       いたかも知れない、と思い耽る。

       今夜はほろ酔いで妻と月を眺めた。

       満月と十六夜月が連続で仰ぎ見れる、こんな年は珍しい。

      訪れた北大雪の平山は快晴、登山日和の真っ只中にあった。

       登山口では帯広からのご婦人2人と暫し会話。

       お二人は、この山は初めてとのこと。

       良い日に恵まれたことを共に喜び合った。

      スタート時点では気温は一桁だろう。

      指先が冷たい。冷え込みも。もうこんな季節になった。

       それにしても雲一つない空、そして無風。

       こんな平山は初めてである。

        だが紅葉は今一つである。

        今年の紅葉は期待薄かも知れないね、とKAWAさんと予断する。

       360度、どこを展望しても素晴らしい。

       表大雪の山々。ニセイカウシュッペ山。大槍。小槍。アンギラス。

       そしてここから初めて見ることが出来たトムラウシ山。

       その奥には十勝岳連峰。

       武利岳、武華山。ズラリと見える。

       そうして阿寒の山。

      思えば今回で何度目になるのだろう。

      その都度に深いガス、雨、強風、立ち込める雲に残念さを募らせたものだ。

      積年の無念さを一挙に晴らすことも、人生にはあるものだ。

       平山から比麻奈山(ひまなやま)、比麻良山(ひまらやま)へと足を

       伸ばした。

      その行程で嫌でも目に入るのが通称「アンギラス」と呼ばれる山塊だ。

        「アンギラス」の往復をハイ松と格闘し比麻良山に登ってきた若い

        単独女性。文蔵岳まで行くという。

        十分に称賛に値する。若さが輝く。そして美しい。

      私たちは比麻良山でその姿を見送り。十分の時間を過ごした。

      かっての昔日。Kakuさんとこのルートを有明山、天狗山へと歩いた日々

      を思い返していた。

      また恵まれ、選ばれた日に。

      3人で山を歩けたら最高に仕合せだろう。きっとそんな日がやってくるに

      違いない、と語り合った。

       齢は重ねた。

       気が付けば身体のどこかここかに故障も出てきた。

       それが生きることの味わいだと思うしかないのだ。

       それにしても最高の日だ、と何度も呟く。

      こんな日がまたやってくるだろう。

      人の機微は矢張り自然が源泉だ。だから山の一歩一歩をこれからも

      無駄にはしまい。

       多くの登山者と擦れ違った。

       みんなが晴れ晴れとしていた。

      この風景に出会えればそうであろう。

      やはり笑顔は健康なのだ。

       十六夜月は仰ぎ見るが手は届かない。

       だから人は魅惑されるのだろう。

       山は少し頑張れば頂上を踏むことはできる。

       だから魅惑される。

       私たちは天上と地上に「魅惑されるもの、するもの」を持っている。

       だから生きよう!

                           総行程距離11.7Km.