Denis Lucciシェフが率いる、コロニアル建築が美しいイタリア料理店、Buona Terraで、イタリア産キャビアの食べ比べ会が行われました。

Calvisiusは、2018年のWorld's 50 Best Restaurants で世界一に輝いたOsteria Francescana の Massimo BotturaシェフやNYの三つ星寿司店、Masaなど、著名なシェフの愛用者も多いブランド。イタリアのロンバルディア州に自社の養殖場を持ち、交配から行なっています。

Denis シェフは、出身地がこの養殖場のごく近所ということもあって、子供の頃からよく知っているのだとか。そんな縁もあり、今回アジアパシフィック担当のRoman Schaettiさんを招いて、お話を聞きながらテイスティングすることに。

 

 

元々キャビアのバイヤーをしていたというロマンさんは、天然ものの売買が禁止されたために養殖場を持つこのCalvisiusにやってきました。

 

このCalvisiusは、1970年代にチョウザメの養殖を始めましたが、元々は、イラン産などのカスピ海産のチョウザメの肉は冷凍だったため、フレッシュな生のチョウザメ肉を食べるために養殖が始まったもので、現在とは逆に、キャビアは副産物だったとか。

そして、卵からキャビアが取れるようになるまでに7〜20年かかるチョウザメは、初期投資の多いもの。しかし、オーナーは鉄鋼業を営み、キャビアビジネスは収益というよりもむしろ趣味で行なっており、収益をシビアに計算していないのだとか。

 

魚ごとに卵のタイプが違うため、同じ種類であっても、違う個体の卵を混ぜることなく、一匹の魚からだけを缶に詰めています。

天然の湖で、温度のコントロールもせず、抗生物質も不使用で育てているチョウザメたち、「幸せなチョウザメは、卵も美味しくなるんだ」とロマンさん。

 

キャビアテイスティングで一緒に提供されたのは、Dom Perignon 2009。

ウェルカムドリンクは、同じエリアで造られているAnitica Fratta Vintage 2014でした。

 

そして、キャビアの提供温度は、冷たく冷やすのがおすすめ。そして、食べる直前に少し温めると良い、とのこと。だから、キャビアのテイスティングは、手の甲の親指の下辺りに乗せるのですね。

 

サイズ、色、味、安定性。この4つの要素がキャビア作りにおいては大切なのだとか。

 

ロマンさんが考える味の順に合わせて、キャビアのテイスティングを行いました。

 

1.

北アメリカ原産の白チョウザメの卵。成魚になるまでに10〜11年かかるそう。塩分濃度は3.4%、どれも基本的に非加熱のもので、ヨード系の、海藻や苔を思わせる植物性の味。とても柔らかいのが印象的です。

 

2.

 

こちらは全く同じ品種で同じ条件のキャビアですが、違いは加熱してあるということ。

 

NYの有名三ツ星寿司店、Masaが、トロタルタルに使っているのがこのキャビア。以前マカオのミシュラン授賞式のガラディナーで食べて、どんなキャビアを使っているのか気になっていました。チーズのような動物性のコク、そしてナッティさがあります。今回のテイスティングのうち、このキャビアだけが加熱してあるもの。非加熱のものは鮮度が古くなると、とろけてしまうリスクがありますから、この辺りは好みの問題かもしれません。皮は非加熱のものよりもややしっかりします。ちなみに日本では、加熱と非加熱の比率は半々、香港は8:2で非加熱のものが好まれるそうです。

 

3.

ロシア品種の、ピュアオシェトラ。成魚になるまでにかかるのは8〜9年。

とてもナッティで濃厚な味わいで、クリーミー、皮が薄く、個人的にはベルーガに近い味わいだと感じました。

モンテカルロで行ったテイスティングで、故ジョエル・ロブション氏が、「これは本当に養殖なのか?」と何度も尋ねたのだとか。「天然に近い味わいだと思っていただけたのだと思います」とロランさんは誇りに思っているのだとか。

 

 

また、2018年の世界のベストレストラン50で世界No.1となったOsteria FrancescanaのMassimo Botturaシェフが使っているのもこのキャビア。

ちなみに、シンガポールでは、このBuona Terraの他にも、葵匠でも使われています。

 

4.

そしてこちらは、同じオシェトラ種でも、アルビノの品種から取れるとても希少なもの。

成魚になるのには、8〜9年かかります。普通のオシェトラと比べると少し皮が厚い気がしましたが、味わいのクリーミーさは一段上。

 

5.続いては、バイカル湖原産のシベリア種。

 

コクが強く、牛肉などに合いそうな味わいでした。

 

6.

成魚になるのに20年かかるベルーガ。最初の抱卵ではなく、しばらくしてさらに成熟するのを待ってから採卵するのだとか。こちらは22歳のもの。通常のチョウザメは動物性プランクトン以外は植物性の餌をメインに食べますが、ベルーガは肉食で、小魚などを食べるため、味わいがさらに濃厚なのはそのせいなのだとか。

 

 

ベルーガは、何と言っても食べた後の余韻が長いのが特徴のように思います。

 

7.セブルーガ

成魚になるのに7年、交配が難しく、収量も少ないことから、世界でセブルーガを扱っている場所は2箇所しかないのだとか。

粒が小さく、皮は厚め、フルーティな味わいがあります。

 

養殖に使う水は、地下80メートルからの、アルプスの天然水。餌は、ヨーロッパでは動物性の餌を与えるのが禁止されているため、植物性のタンパク質中心のもの。湖の底の石の間に落ちるような小さなサイズにして、チョウザメが石をどかして食べなくてはならないようにして、運動させるようにしているのだとか。

 

また、魚臭くならないように、清水に3〜4週間入れて、臭みを抜いてから卵を収穫しているそう。そうすることで、卵が自己消費されてしまい、収量が1割ほど減ってしまうそうですが、味わいのために敢えてそうしているのだそう。

 

ちなみに、キャビアの消費は、フランス、アメリカ、日本がトップ3を占めるのだとか。

 

そんな、故郷で育ったキャビアの数々を、Denisシェフがそのキャビアごとに料理にしていきます。

 

Dom Perignon P2 2000年と共に。 

 

 

Tradition

まずは、ミルキーなグリーンピースのアイスクリームとグリーンピース、豆苗とTraditonキャビアを。

 

左上は、ジャガイモのタルト、右上のコーンに入っているのは帆立貝のタルタルにライムやコリアンダー、唐辛子などを合わせたセビーチェ風。

黒米のチップにスモークサーモン、フェンネルの花をあしらったもの。

 

Oscietra

 

A5の仙台和牛を使ったカルパッチョ。和牛は砂糖、塩、パプリカで3時間マリネしてから、表面を炭で炙り、その後に冷凍。薄くスライスして提供します。ミルクで茹でた白アスパラガス、塩漬け卵黄、そしてニンニク味のパン粉と共に。

 

Siberian

一番下にはスイートコーンで作った自然な甘みのパンナコッタ、キングクラブの身、そしてその殻などから取った出汁。ウニとキャビアとカニという、贅沢な一品。

 

 

Beluga

トリュフオイルを少し垂らした、冷製カッペリーニ。パスタ全体にベルーガキャビアが混ぜ込まれ、その上にホタテ貝の刺身、たっぷりのベルーガ。

 

 

ここからは2006年のロゼに。

 

Sevruga

実はDennis シェフが一番好きなのはこのセブルーガなのだとか。

地中海産の赤海老を間に閉じ込めたTurbotはレモンオイルの中で加熱し、キャビアをたっぷりと入れた白ワインソース、そして黒ニンニクのソースを周りに敷いてあります。

 

Black

薄切りにした苺に、モッツァレラチーズのアイスクリーム、小さなバジルリーフを添えて。

 

様々なキャビアの個性の違いを堪能したテイスティング。

これらのキャビアを使った料理のいくつかは、Buona Terraで提供されています!

 

 

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■Buona Terra

営業時間:ランチ 12:00~14:30(平日)、ディナー 18:30~22:30(22:00LO、月曜〜土曜)、日曜・祝日休

住所:29 Scotts Road Singapore 228224

電話: +65 6733 0209

アクセス:MRTオーチャード駅から徒歩11分ほど