10月25日にオープンしたシンガポール初のバスク料理のレストラン、Basque Kitchen by Aitor にお邪魔してきました!

 

 

Aitorシェフは、バルセロナ出身ですが、父方の祖父母はバスクのビスカイヤ地方出身で、伝統的な味を自分らしく解釈して提供します。

 

 

 

ランチタイムは4皿のショートコース$45とテイスティングメニューの$115、今回はテイスティングコースをいただきました。

 

まずはスナックからスタート。

 

Oyster with tomato water jelly

 

 

 

トマトに水を加えず、そのまま砕いて2〜3日間冷蔵庫に吊るし、それで抽出された水分に鰹節を入れて、沸騰しない程度に温め、30分かけて抽出したものにゼラチンを加えたゼリー。この方法は、以前働いていたNeruaのJosean Alijaシェフから教わったもの。そこに、スペイン産の海藻、アイスプラント、マルドンの塩を少し振りかけます。濃厚なミルキーさのある、カナダ産のオイスターと共に。

 

ワインは、

マスカットのようなフルーティな香りでさっぱりとした後味のワイン、

 

 

 

トーストやキャラメルの香りが強いバスクのワイン、チャコリ。

 

 

 

自家製サワードゥ、ミルクの香りが強いフランスのElle & Vireのバターにエスペレット乾燥唐辛子を混ぜたものを添えて。

 

 

 

Anchovies pintxos of tomatoes and garlic and olive oil caviar

 

 

 

 

薄いトーストに、トマトのタルタル、濃厚な味のアンチョビ、オリーブオイルのキャビアを重ねたもの(写真右)

 

Jamon croquettes with espelette pepper aioli

ハモンイベリコのハムが入った一口コロッケに、ピリッと辛い濃厚なアイオリを乗せて(写真左)

 

 

Cherry Gazpatxo

 

 

 

Dani Garciaシェフへのトリビュート、と副題がつけられたこの一皿は、スペイン・マラガの二つ星シェフ、Dani Garciaシェフのレシピをオリジナルに解釈。

少しスープにとろみがあるな、と思ったら、「元々ガスパチョとは、硬くなった残り物のパンを浸して、無駄なく食べた料理。そんな理由で、パンは欠かせない」とAitorシェフ。もちろん、レストランでは残り物ではなく、新しい食パンの耳を取り除いたものを使っています。トマトや玉ねぎ、ニンニク、きゅうり、赤と緑の唐辛子などを使っています。オリーブオイルとシェリービネガー、塩に一晩つけたあと、チェリーピュレや食パンと共に、ブレンダーにかけています。さらにカッテージチーズを凍らせてパコジェットにかけ、液体窒素で固めた「スノー」をかけて。スイカのピクルスの角切りを入れるのが、Aitorシェフのオリジナルのアイデア。

 

Marmitako

 

 

マグロとジャガイモのバスク伝統のトマトシチュー。マグロをカツオに変え、通常は煮込むところを、生のカツオで提供しています。丸くくり抜いたジャガイモ、片栗粉でとろみをつけたカツオの骨の出汁のトマトソースとともに。

 

 

 

Oxtail "Bomba" Rice

 

 

84度で12時間煮込んだアンガス牛のオックステールにさらにスペインのブランド米Bomba、玉ねぎ、鳥の出汁、マッシュルーム、を加えて、煮込んであります。仕上げに自家製デミグラスソース、パルメザンチーズ、フォワグラとトリュフを加えて乳化させて仕上げます。卵黄とチャイブオイル、ニンニクと塩でできたチャイブのアイオリとうずらの卵黄のコンフィを添えて。

 

 

ちょうど仕込み前だったということで、自家製デミグラスソースの材料を見せて頂きました。

 

 

 

 

ボーンマロー、膝の骨、肉のついた腰肉の部分、そして仔牛の脚などを180度のオーブンで40分から1時間煮込み、フライパンで炒めたネギの青い部分、玉ねぎ、人参とともに24時間かけて煮込み、赤ワインを加えてさらに12時間ほど煮込み、5分の1にまで濃縮させたデミグラスソース。

 

シンガポールでも簡単に手に入る日本産ではなく、同じ短粒米でも、本来パエリアに使うスペイン産のBombaを使う理由は、日本のものよりデンプンのスターチ感が少なく、味をよく吸うからなのだとか。

 

 

 

Black Grouper

 

 

クエの仲間のブラック・グルッパーをカリッと揚げたもの。香りがよく甘く、ほのかに辛味が残る、Piquillo という唐辛子のクリーミーなエスプーマと、バスクの涙豆の代わりに、サービス毎に鞘から取り出すという、グリーンピースを添えて。

 

 

 

 

エスプーマは、グルッパの骨と、炒め玉ねぎ、バター、クリーム、ジャガイモなどを加えて作っています。

 

Porrusalda

 

 

 

 

メインの肉料理に行く前の、グラニテのような存在の一皿を、野菜たっぷりのスープで。野菜とバカリャウと呼ばれる干し鱈を使った伝統的なバスクのスープを、干し鱈の代わりに鰹節を使うことで少しアジア風にアレンジ。ネギは焦がしてからオリーブオイルと塩で真空低温調理をして、人参と玉ねぎも同じように真空調理、そしてひよこ豆や白ワイン、パセリなどと共に2時間煮込んであります。最後に鰹節を加えることで清澄しています。

 

具材はスモークした野菜、タラゴン、ローズマリー、ディルを添えて。

 

Txuleta

 

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日本の炭焼きと同じ方法で焼き上げたアンガスビーフのプライムリブ。将来的にはparrilaと呼ばれる、バスク式の炭焼き機をいれる予定とか。

 

 

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グラスフェッドらしい肉の香りに、デミグラスソースとしっかりと粘りのあるクラッシックマッシュポテトを添えて。写真は4人前のシェアリングで、人数に合わせて肉のサイズは変わります。

 

Strawberry

 

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シロップに2日間漬け込んだイチゴ、自家製のバニラミルクアイスクリームとともにいただきます。

 

デザートは、

マンダリンオレンジのパート・ド・フリュイ、青リンゴのギモーヴ。

 

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シンガポール唯一のバスク料理店、新しいコンセプトはシンガポールのマーケットにどう受け入れられると思ったかをお聞きすると、「元々シンガポールからバスク地方のサンセバスチャンに食事を食べに行く人が多く、バスク料理のニーズは確実にあると思った」と語ります。

 

バスク地方はフランスの国境と近く、「フレンチバスク」と呼ばれるフランス側とも文化を共有していて、フランス料理の影響も受けています。

 

私も6月に世界のベストレストランの表彰式のためにビルバオに行きましたが、スペインとは異なった文化が色濃く残っていたのが印象的でした。

 

「バスクの言葉は、ラテン語由来のスペイン語、フランス語、イタリア語とも違い、ヨーロッパで最も古い言語と呼ばれているんだ」とAitorシェフ。

海、山どちらにも近く、新鮮な食材が手に入る地域でもあります。

 

「炭焼きのような伝統的な料理と、フランスで修行して最先端の料理を学んだシェフも多く、それが共存しているのがバスク料理の魅力」とか。

 

軽やかな味わいと同時に、クラッシックなデミグラスやマッシュポテトを作るなど、古典的な技法も大切にしたい、と語るAitorシェフのアプローチも、それを表しているのかもしれません。

 

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■Basque Kitchen by Aitor

 

営業時間:ランチ 11:30~14:30(平日のみ)、ディナー 18:30~23:00、日曜休

 

住所: 97 Amoy Street, Singapore 069917

 

電話: +65 6224 2232

 

アクセス:MRTテロック・エア駅から徒歩4分ほど