PHOTO/MARTIN BRADING

 

モード誌編集者歴35年の平工京子です。

 

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プロローグ

 

異動の宣告 からの続き

 

 

会社に辞意を伝えた

1990年9月。

 

私は『流行通信』最後の仕事となる

12月号の編集をしていました。

 

当時、人気のあった

マーティン・シットボンという

パリのデザイナーの特集。

 

ファッション撮影から始まり、

彼女のインスピレーション源である音楽や

アトリエのインテリア、

ブランドのADでもあったパートナーとの

インタビューなどを立体的に編集した

14ページの特集です。

 

私自身は、

編集部のデスクに座ったまま

パリ在住のスタッフに

具体的な作業を任せる

というスタイルの進行でした。

 

担当エディターが

デザイナー本人と

一度も顔を合わせないというのも

不自然なことですが、

 

編集部は、

もう辞めると決まっている人間を

海外出張には出しません。

 

それでも私はこの特集を

パリのスタッフの

バックアップをしながら

心を込めて編集しました。

 

ファッションページも

読み物ページも、

 

最終的な上がりのイメージを

頭の中に具体的に描きながら

スタッフに的確な指示を出して

仕事をまとめていくのは、

 

私の得意とするところです。

 

スタッフから進行状況を

ヒアリングしていれば、

動きが手に取るようにわかるので

 

もし、どこかにトラブルの芽があっても

そこに気がつくことができます。

 

 

そんな中、ひとりだけ、

まったく進捗状況を報告してこない

スタッフがいました。

 

それは、

ファッション撮影担当の

直ちゃん。

 

私を部屋に泊めた恩を交渉材料に

このページを獲得していたのです。

 

たくましいですね(笑)。

 

しかも、

こちらから経費を送金した後、

雲隠れしていました。

 

まさか、持ち逃げ?

 

最後の担当ページなのに、

 

なんてこった…

 

と、どんよりした気持ちで過ごす事、数日。

 

突然、連絡が復旧。

 

私は、パリ撮影を頼んでいたのに、

直ちゃんは独断で、

ロンドンで撮影を組んでいたのです。

 

ん、とにもう、

なにやってんのよ、勝手に!

怒っ

 

と、私は少しいらっときましたが、

入稿スケジュール的にも

経費的にも帳尻は合っていました。

 

 

彼が、

ファッションエディターとして

選んだフォトグラファーは

当時、UK版『VOGUE』で活躍していた

マーティン・ブレーディング

 

夏休みの間、

直ちゃんの部屋で

夜な夜なビールを飲みながら

語り明かしていた時に、

今、いいと思うフォトグラファーで

意見が一致していた人。

 

ちょっと〜、

彼に頼むのだったら、

事前に一言、相談してよ、

 

と、思うのですが、

 

相談してNG出されるくらいだったら、

賭けに出てしまえ、

というのが、彼のやり方。

 

やや強引ですが、

一般的な組織のルールからは外れても

こういう風に、

人生はいろいろな

切り拓き方があるんですよね。

 

 

PHOTO/MARTIN BRADING

 

トップの写真と、

このモデルカットは、まさに、

直ちゃんが、私に無断で

ロンドンで撮ってきた

マーティン・ブレーディングの写真。

 

全6ページのうちの2ページ。

 

 

上がりが届いた時に

 

「私がいなくても

物事は回っていくんだなぁ」

 

と、ちょっとしんみりした

思い出があります。

 

 

これは、シットボンの好きな

音楽のページ。

ヴェルヴェット・アンダーグラウンドや、

ドアーズ、プリンス、

坂本龍一教授のソロアルバムなどが

並んでいます。

 

 

インテリアの趣味は、

イタリアのピエロ・フォルナゼッティ。

 

服のデザインが窓口になって、

別分野のカルチャーへの理解が

深まることもよくありました。

 

そして、これが、

ファッションのくくりの中でも

とくに「モード」

と呼ばれるジャンルの

大きな特徴でもあります。

 

 

 

 

パートナーの

マーク・アスコリとの共同インタビュー。

 

彼は、シットボンとの仕事の他に、

ヨウジヤマモトの広告のADとして

有名な人でした。

 

(↓詳しくはこちらをクリック)

ヨウジヤマモト『TALKING TO MYSELF』(2002)

 

 

そして、たぶん、

『流行通信』編集部に

出社した最後の日。

 

編集長のリュウさんから

いただいた言葉がありました。

 

今、思い出しながら要約すると、

以下のようになります。

 

「あなたにとって、

自分は、納得のいかない

上司だったかもしれない。

 

しかし、

たとえどんな人間でも

尊敬されたいという

気持ちがあるということだけは

覚えておいてほしい」

 

これは、私にとって

30年の時が経った今なお、

大きな課題でもあるのです。

 

 

『流行通信』物語 エピローグ

へ続く

 


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