『キテレツ大百科』原作第1話(文庫第1巻)の14~15ページによるとキテレツ斎の『奇天烈第不百科』は普通は白紙の本に見えるが、神通鏡という眼鏡をかけて初めて見える。
キテレツこと木手英一が読み上げた台詞によると、ここでキテレツ斎は「わが一生をかけた発明発見のすべてをここに書き遺す。ただし、これを読む者、秘伝を他人にもらすなかれ。この禁にしたがわざる者、大いなる災(わざわい)をまねくべし」と書いてあった(15ページ)。江戸時代末期には「まねくべし」という用法(下注釋)は「必ずまねく」という意味だったらしい。
文庫第2巻の最終回「さらば大百科」で、木手英一の母親が『奇天烈大百科』を「なんにもかいていないただの帳面」と見なして捨ててしまい、『大百科』は灰にされてしまった。

 

結果としては息子の物を勝手に捨てる母親が悪いが、まず、キテレツの問題を考えると『大百科』が家族によって捨てられないように保管していなかったことである。
まずキテレツ斎自身が「これを他人にもらすなかれ」と書いたためキテレツはそれに從って家族に告げなかったわけだ。しかし『大百科』が行方不明になってから、キテレツは母親に向かって「かくしインクなんだよ。このメガネをかけると読めるんだよ」と言っていた。捨てられた時点でそう言うくらいなら『大百科』の内容を確認した時点で「神通鏡をかけると見えるが内容が極秘だった」と言っておくべきであった。

 

キテレツの母親は「ほったらかしにしてあったから。ゴミといっしょにすてちゃったわ」と言っている。この「ほったらかし」がどういう状態かわからないが、文庫第2巻141ページ「空き地の銀世界」でキテレツは本棚から『大百科』を出している。母親は「あのボロッちい和とじのノート」と見なしたのだから、本棚になっても汚い本だから捨てたのかもしれないし、たまたまキテレツが床に置いておいたままだったのかも知れない。キテレツはまず綺麗なカバーをつけて「捨てないように」と貼り紙をすべきであった。

 

劇中で『大百科』の「操獣座製法」というページだけがキテレツのもとに戻っており、完全になくなったわけではなかった。

 

キテレツはまず『大百科』を別のノートに書き写しておくべきだった。江戸時代の人が書いた本なので、毛筆で昔の文体で書かれてあった。それを読めたキテレツには現代語譯は不要だったとしても、普通のノートに書き写し、机に引き出しにしまっておくくらいはすべきであった。
あるいはカメラのレンズに神通鏡をつけて撮影し、写真を保管しておく手もあった。

 

また、キテレツは發明品を使っていたのだから、周圍には『大百科』のことは知られなくてもその發明の結果はわかっていたわけだ。すると世間は天才發明少年の出現を不思議に思って取材が殺到したはずである。
その場合、キテレツ斎が自分の發明を極秘にするように記載したことを、現代人が守るべきかどうかが問題だ。もし大人の歴史学者やマスコミ関係者が神通鏡をかけて『大百科』の内容を知ったら、作者の秘密保持の命令など破っても時効だとして、新聞やテレビで大々的に扱われ、当時(1974年ごろ)の科学技術庁(今は文部科学省)にデータが贈られただろう。

 

情報にはバックアップが必要だということがよくわかる話であった。

 

平成24年tw

 

キテレツが大百科のバックアップを作っておかなかったのが惜しいですね。江戸時代に書かれた極秘文書が今見つかっても秘密遵守命令は無効でメディアで公表しても構わないでしょう。キテレツ斎を弾圧していた江戸幕府がとっくの昔に崩壊したのに子孫が秘密を守りすぎたのが悲劇でした。

 

 

前後一覧
2011年6/2(Yahoo!Blog)

平成23年6月(AmebaBlog)

 

関連語句
キテレツ のび左エ門 キテレツ大百科 文庫
2011年6月(作者、作品、ジャンル別年月順)

注釋
「まねくべし」という用法
コロ助の言い方なら「災(わざわい)をまねくナリ」になるところだった。
『ドラえもん』の「のび左エ門の秘宝」ではのび左エ門が巻物(巻き物)に「文政九年元日、のび左エ門これをしるす。あまりにも金がたまり、おき場がないなり。だからうめるなり。そのかくし場所は…」と書いており、「なり」を使っている。なお、のび助(のび太の父)が書いた紙には「まずはじめに、やつでの木から東へ十歩あるくべし。その場所から西にむかい、十歩進むべし。そこに、宝があるべし」とあって「べし」が使われている。この場合「あるなり」または「あるはず」と書くのが普通のように思う。「あるべき」だと人間の意思によって決定されたことのように思える。ただ「べし」には推量の意味もあるようなので、「まねくべし」「宝があるべし」でも妥当な表現であろうか。「べし」は終止形で「べき」は連体形だが、ニュースの見出しなので連体形の「べき」が終止形に發展している。

参照

平成24年BLOG

『キテレツ大百科』関連ツイート - gooブログ ものがたりの歴史 虚実歴史

2012-11-01 12:01:00