ドラえもんはロボコンのように人間社会の中で修行することを目的としてはおらず、のび太もドラえもんをリモコン操作しているわけではないし、ドラえもんは等身大なのでのび太がドラえもんに乗り込んで操縱しているわけでもない。

 

その意味では『ドラえもん』は『アトム』『キカイダー』のタイプとも違い、『鉄人28号』『マジンガーZ』『ガンダム』のタイプとも違う異質なロボット漫画である。
のび太がロボットをどう使うかが問題になるのは、ドラえもんが秘密道具としてロボットを出した場合で、ひょうろんロボット、ころばし屋などがそうである。

 

 

するとのび太にとって「ドラえもんの秘密道具」こそが兜甲児にとってのマジンガーZ、アッコちゃんにとっても魔法のコンパクトようなものであろう。つまり『ドラえもん』はのび太が秘密道具をどう使うか、これが操縱型のロボットアニメに近い要素であり、普通の女の子が魔法を手に入れる魔法少女アニメにも近い要素と言える。
すると『ドラえもん』に操縱型の巨大ロボットが出てくるのは、「ころばし屋」や「テスト・ロボット」の肥大化したものであろう。

 

 

『ドラえもん』は意思を持つロボットがメインでありながら、それが提供する秘密道具をのび太が使うことで話が始まる意味では、人間の主人公が機械を動かす操縱型のロボットアニメに近いところがあり、その意味では『ドラえもん』は極めて異質で画期的な作品である(下注釋)。

 

 

石森章太郎の『がんばれロボコン』はロボコンが少年と同居しており、藤子・F・不二雄の『ドラえもん』と似てはいるが、あくまでロボコンの社会勉強のためであり、同居する少年の教育のためではなく、ロボコンはガンツ先生を中心とするロボット学校に属しており、それが『ドラえもん』とは異なっている。ドラえもんの野比家滞在の目的はドラえもんの社会勉強ではない。
しかしながらドラえもんの原作の初期と比べると、ある程度成長はしている。初めはのび太と一緒にドジなことをしていたドラえもんものび太に人間的な教育をするようになっている。

 

 

ひょっとすると本当のドラえもんの野比家滞在の目的はドラえもんの社会勉強であって、「ジャイ子との結婚を回避する」などは建前の狂言ではないか。

 

 

初期原作ではのび太への教育と過去への干渉が問題となって『ドラえもん』は3回、最終回を迎えた。その後の復活『ドラえもん』ではドラえもんは過去への干渉をむしろ犯罪として否定的に見るようになり、のび太の未来に関してものび太にアドバイスはするが、最終的にのび太の将来がどうなるかについては責任は持ていないという、一歩引いた立場になっている。
これも『ドラえもん』が長寿作品になったことによる結果であろう。

 

 

『のび太と鉄人兵団』は『ドラえもん』に『マジンガーZ』や『ガンダム』の要素を加えたもので、巨大ロボットが登場しながら、意思を持つロボットの登場、ロボット社会をモデルにして人間社会の問題点を描くなど、手塚治虫の影響が見られる。
これが手塚の孫弟子だった永井豪と、手塚の直接の弟子だった藤子・F・不二雄の違いであろう。

 

 

「Gロボ」は「ジャイアントロボ」のことである。

横山光輝_手塚治虫
鉄人28号_鉄腕アトム
Gロボ___マグマ大使
│____├───────┐
│____石森章太郎___藤子・F・不二雄
│____キカイダー____ドラえもん
│____ロボコン_____│_↓
│____│________│_影響
│____永井豪&石川賢_ │_↓
└→影響→マジンガー___│_鳥山明
_____ゲッターロボ__ │_アラレ
_____↓_______ │
_____影響______ │
_____↓_______ │
_____サンライズ___│
_____ガンダム_____ │
_____↓_______ │
_____影響______ │
_____↓_______ │
_____鉄人兵団←──-┘

 

 

なお、手塚治虫の『マグマ大使』ですでに変形するロボットが描かれている。
実写の特撮では飛行機やロボットの合体が『ウルトラセブン』で描かれている。

 

 

 

 

前後一覧
2010年10月 10/26 10/26前後

 

 

関連語句
ロボット

注釋
異質で画期的な作品
『ドラえもん』がロボット漫画として異質であるため、主人公が誰かという問題が生じる。
等身大で意思を持つロボットの場合、アトムもキカイダーもロボコンも主人公である。
人間が動かすロボットの場合、ジャイアントロボやエヴァ初号機は非常事態では意思を持つようではあるが、マジンガーZやガンダムは単なる乗り物である。建前上、ガンダムは宇宙服であり、エヴァは人型決戦兵器である。『マジンガーZ』の主人公は兜甲児であり、『ガンダム』の初期の主人公はアムロ・レイであり、『エヴァ』の主人公は碇シンジである。

 

 

そうなると『ドラえもん』の場合、意思を持ったロボットであるドラえもんが本来は主人公であるはずなのだが、ドラえもんが秘密道具を出すと、今度はのび太がそれをどう使うかが物語の中心となり、話のほとんどはのび太を主軸にして進むことが多い。したがって、タイトルが『ドラえもん』でありながらのび太が主人公のように見えることもある。実際、『大全集』を見ると1970年当時の学年誌ではのび太が主人公として紹介されていた。ドラミ編ではドラミがのび太をサポートし、ドラえもんが出ない話が多かったが、これはもともと『ドラミちゃん』というスピンオフ作品だったので、問題とするなら主人公がドラミかのび太かということである。

 

 

『Dr.スランプ』の場合、タイトルは則巻千兵衛のことで、本来は千兵衛が主人公であったが、第1話で作ったロボットのアラレが事実上の主人公になってしまったようだ。

参照
『ドラえもん』と魔法少女アニメとロボットアニメ
藤子作品関連(2010年10月~)