【壱】

『新からくり人』の続編『からくり人・富嶽百景』では最終回で葛飾北斎が没しており、これは1849年のこと。すると『富嶽百景』は『新』の続編でなく、その終盤の話だったことになる。
葛飾北斎の最期は主水シリーズの映画『必殺!主水死す』でも描かれており、黒幕のひとりに水野忠邦がおり、主水が忠邦を暗殺。忠邦の死は1851年で、北斎の没後2年であったが、間にはさまれた1850年に高野長英がその生涯を閉じた。

また、『必殺!裏稼業の凄い奴ら』では、『新からくり人』最終回で廣重は幕府の隠密と判明し、殺されたとある。これが廣重の没年・1858年とすると、『新』の最終回は1850年から1858年までを描いたことになる。もっとも、鳥居耀蔵のように死後、幕府によって隠蔽工作がおこなわれた可能性もある。
ただ、晩年の廣重は必殺SP『大老殺し』で、爆發事故の様子をスケッチして主水に提供しているので、黒船より前に世を去っていたとは考えにくい。
もっとも、主水と勇次のシリーズで平賀源内が天保に出現しているように、安藤広重(=廣重)に同名の2代目、3代目がいた可能性がある。

『必殺からくり人・血風編』では慶応4年、王政復古のあと、元号が明治になる前の江戸時代の最後の時代を描いている。『横浜異人屋敷』では主水は戊辰戦争に出陣したことになっている。

『必殺現代版』では主水は明治時代に警察官になろうとして落第したらしい
主水が暗殺したはずの鳥居は、公式には明治時代まで生き延びたことになっている。

こうして観ると、中村主水だけでなく、仕掛の天平、鳥居耀蔵、安藤廣重も必殺シリーズで死んだように見えながら、あとの時代では生きており、鼠小僧次郎吉も処刑が偽装だったという説があるので、主水が『仕事人2007』で「復活」しているのは当然であろう。