昨日は大学によしもとばななさんが来ました。
シンポジウムをやっていました。対談をやっていました。

よしもとばななさんも、とてもすきになりました。
バランスの取れた方でした。
作家、というのは、独自の精神世界を持っている方で、
そういう方にありがちなこととして
(完全なる偏見ですが)
自分の世界中心に物事を考え、コミュニケーション能力が低かったり、
するのかなあ、と考えていたのですが、
まったくそんなことはありませんでした。

むしろ、人の考えていることや、人の性格を
感じ取ることに関しては、普通の人よりいっそう鋭敏な感覚を持っている人でした。

コミュニケーションの基本は相手の立場に立つことだと思うので
この点、よしもとばななさんはコミュニケーションの達人かもしれません。


さてばななさんのお話を聞いていて、
ことばについて考えました。

ことば、というのは不思議なものです。
ことばには、いろいろな形があります。

自分の考えたことをことばにしたときに、
その自分の考えた内容を100%ことばによって表現する、
ということは不可能であるように思います。

いつも、何か違う。
自分が思っていた通りのことを表現できない。
80%は自分のいいたいことを伝えられたと思うんだけど、
残りの20%は違う内容を伝えてしまっている、
というようなことが往々にして起こります。

どうにも、しっくりこない。
芯を捉えた表現
がうまくいえない。

自分の考えていることは、
それをことばになおす過程で、どうしても変化を生じてしまいます。
けれども、できうるかぎり、
芯を捉えた表現
を模索し、自分の考えていること、その感触が伝わるような、
そんな表現をできたとき。

そのことばは大きな力を持つことがあります。
ただひとを納得させることにとどまらず
人の心を動かして、人に行動を起こさせたりする。
人を感動させて涙を流させたりする。
人をいてもたってもいられなくさせたりする。

ことばには、そんな力があります。
そして、「芯をくった」表現にできうるかぎり
近い表現をできる人、そしてそのことばで、人の心を動かせる人、
それが作家さんなのかな、と思いました。

この点、よしもとばななさんは、ことばを扱うのがとても上手です。
感触が伝わってきます。

おなじことばを運用するものとして、
(もちろん日常生活で、という意味で)
よしもとばななさんのようになりたいと思いました。

とても価値のあるシンポジウムでした。いってよかったです。