毎日の練習でかかせないのが、「ゆっくり」練習することです。

 

実は、声楽や弦楽器、管楽器は、ゆっくり練習することが、容易ではありません。

息の長さや、弓の長さに限りがあるからです。

譜読みの時点から、まっ先に考えなくてはならないのが、息継ぎやボウイングです。

 

鍵盤を押せば、簡単に音が出せて、音の高さも考えなくていいし、何よりいつでも自由に呼吸ができるピアノは、

ゆっくり練習することがたやすいように思われがちですが、そうでしょうか。

 

自分の昔の経験から、「ゆっくり練習」で困ったことがいくつかありました。

 

1.ゆっくりだと弾けるけれど、速くなると弾けない

2.練習が退屈

3.いつまでたっても、曲全体のテンポが上がらない

 

1と3は、同じようなことですが、少しニュアンスが違っていて、3のほうは、

ゆっくり弾いたときの感覚から抜け出せなくて、「速くなったとき」のイメージがついていかない、という意味です。速度を上げるために、また別の練習を始めないといけなくなります。

 

2は、文字通りとにかく確実に音が拾えるようになるまで根気よくゆっくり弾くことに息切れしてしまう状態です。1曲の中でも、簡単に弾ける箇所と、難しく感じる箇所とが明確に分かれてきます。「苦手なところ」がクローズアップされて、気が滅入ります。速度が上がっても、「苦手なところ」は存在し続けます。

 

このような症状に悩まされているかたは多いのではないでしょうか。私はずいぶん、悩みました。

 

 

ここで注目したいのが、「テンポ」です。

テンポとは、曲全体の速さのことでもありますが、拍と拍の間の「時間」のことでもあります。

 

拍と拍の間の時間に、何をしているのか。

指揮者の腕やからだの動きをみると、よくわかります。

タクトが拍を刻むまでの動きは常に止まらず、拍を刻んだあとは、常に次の拍を刻むための準備が始まっています。

 

私たちが歩くときも同じです。

片足が一歩着地するたびに、もう片足は常に「次の一歩」を進めるために止まることなく動いていますよね。

腕やからだも、歩く足の動きに連動して、自然に常に、動いています。

 

 

常にからだは動いている。

 

 

一定のテンポを刻むには、「次の動き」が常に意識されているべきなのです。

曲の練習でたとえれば、難しい箇所をそこだけ何度も練習して弾けるようになったとしても、曲のテンポのなかで、その箇所が楽に自然に、正確に弾けるようには、ならないということです。

 

アプローチ方法としては、どんなにゆっくりのテンポでも、音を拾うことだけを目的にするのではなく、

拍と拍の間を「止まらずに自然にからだが動いているかどうか。」ということを最優先に考えることが重要になってきます。

 

最初に、この曲は何拍子なのか、拍と拍の間にどんな音形があるのか、を、じっくり見てみましょう。

どんなに短い音でも、どんなに長い音でも、自然なからだの動きに則した弾き方を心がけるべきです。

そのような練習は、目的がはっきりしているため、音符のひとつひとつが、愛おしくなってくるはずです。

 

からだ全体でリズムをとることに慣れてくれば、耳だけで聴こうとしなくなるため、疲労しにくくなり、

譜読みも速くなるし、暗譜もしやすくなります。必要なテクニックも、自然についてくるようになるでしょう。

 

 

毎日の練習が、愛おしい時間となりますように。

 

◆音のある生活 ピアノ教室

https://kyocoron-piano.com/