あのホラー体験から1週間が経とうとしていた。
相変わらず勇者キャベツの所在は知れなかった。

PⅢ世は、「キャベツの祖父によって封印された、悪の帝王の仕業ではないか」と言っていた。

まず、誘拐犯は人外の能力を持った者に限定される。

とはいえ、幽霊とかその類に誘拐(?)されるのは考え難いというのが理由である。
勇者キャベツはホラー映画も見なければ肝試しにも参加しなかった。
幽霊に怨まれる筋合いはない。

その点悪の帝王であるチャカは、かつてこの世の人口の7割を滅ぼすだけの魔力を有し、封印こそされたが殺されてはいないのである。
遠くにいながらめしょー達の訪れを察知し、ラジオやぬいぐるみを操るなんて造作もないはずだ。

何らかの理由で悪の帝王――チャカが復活したのではないか?

PⅢ世はそう考えているようだった。






「最近PⅢ世も見ないんだよね。スーパー行ってるんだけど。」

タカはため息をついた。
かつて自分を封印した勇者キャベッジの一派を恨んで孫の勇者キャベツを誘拐したのなら、勇者キャベッジと一緒に戦ったPⅠ世の孫であるPⅢ世だって狙われてもおかしくない。

「ハハハ・・・家は行ったの?」

「それが変でさぁ。家も行ったんだけど、旅行に出かけたみたいに整然としてて。
旅行に行くならゴミ箱空にしたり、冷蔵庫の中身減らしたりするでしょ?あんな感じ。」

ゴミ箱や冷蔵庫の中身まで見たんかい。

めしょーは幾分突っ込もうかと思ったがやめた。
今日も省エネを心掛けているのだ。



チャカってどんな悪い奴だったっけ・・・・・・めしょーは歴史の教科書を思い出してみようとしたが、思い出せなかった。
チャカを思い出そうとしているのに、カメクラ時代に海の向こうからやってきたエビフライ=ハンしか思い出せない。

考えたって仕方がない。めしょーは、水切りネットを大きなゴミ袋に放り込んだ。
勇者キャベツが来なくなって、残飯と言う名の生ごみが増えた。この村はゴミ出しが有料なので、出費も増えていた。
このままではどこかを切り詰めないと赤字が出てしまう。

勇者キャベツさえいれば、赤字になんてならないのに・・・・・・。



「ハハ・・・勇者キャベツを助けに行かない?」



気付いたらそう口に出していたようだった。

「え?」

さすがのタカも面食らったようだった。
勇者が誘拐されるのに、かよわい女性であるめしょーやタカに何が出来るのか。そう思ったのだろう。

しかし、めしょーの心に恐れは無かった。

「ハハハ・・・・・・タカちゃん、チャカってどんなやつだったか覚えてる?」

「いやー・・・。あんまり印象に残ってないんだよね。」

「ハハハ・・・ってことはね、"悪の帝王"とはいっても、大したことないのかもよ?ハハハ」

「え?そうかなぁ?」

タカは半信半疑のようだったが、めしょーには謎の確信があった。
・・・というのは嘘で深く考えていなかった。

タカは、「また連絡する」と言って店を出て行った。