院長のブログ

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スギ舌下療法について

小児科の池松です。
今年の10月8日から保険適応でスギ舌下療法を行えるようになります。
下記をお読みになって、ご希望の方は10月8日~11月末までに受診し、ご相談下さい。

以下、鳥居薬品さんの資料より抜粋です。


1.スギ花粉症の減感作療法で、アレルゲン(標準スギ花粉エキス)を少量から投与することで
 体をスギ花粉に鳴らし、アレルギー症状を治したり長期にわたり症状を和らげる可能性がある
 治療法です。


2.舌下療法とは、アレルゲンを含む治療薬を舌の下に滴下し、
 1日1回2分間保持することでアレルギー症状を治療します。
 初日は医療機関で服用し、2日目からは自宅で服用できます。
 スギ花粉が飛んでない時期も含め毎日服用します。


3.治療が受けられる方:スギ花粉症と診断された12歳以上の小児および成人の患者さん
(当院では内科・小児科外来のどちらも処方可能です。)


・治療開始はスギ花粉が飛び始める(1月上旬~)前から行う

(10月8日より販売、11月中旬までに開始が望ましい)

・スギ花粉が飛んでいない時期も含め、長期間(3~5年)治療を続けられる

・舌の下に2分間治療薬を滴下(ポンプをプッシュ)保持した後、飲込みその後5分間は
 うがいや飲食を控え、服用前2時間程度は激しい運動、アルコール摂取、入浴などは避け
 毎日継続できる

・少なくとも1ヶ月に1回受診できる(初めの1年間は2週間に1度処方)

・すべての患者さんに効果が期待できるわけではないことを理解できる。

・アレルギー反応がおこる可能性(主に口の中や舌の腫れ、喉のかゆみが多い)があり、
 まれに重篤な症状(アナフィラキシー)が発見することがあることが理解できる。
 治療が受けられない方:重い気管支喘息の方、がんや免疫系の病気がある方、
 スギ花粉エキスでショックを起こしたことがある方


治療スケジュール





こんにちは。小児科のいけまつです。
すでに暑い日が続いていますが、みなさまの体調はいかがでしょうか?

夏になると毎年吐いたり、下痢したり、という感染性胃腸炎がはやってきます。
今日は、胃腸炎のお薬として使うことのある五苓散について、お話したいと思います。


五苓散坐薬って?


五苓散は、こどもの感染性胃腸炎の、のどが渇くけれど飲むと吐いてしまう、
おしっこの量が減ってきた、という時に効果があります。
吐き気や苦味のため薬が飲めない場合、肛門から入れる注腸や坐薬が
効果があると言われていますが、まだ坐薬製剤の販売はありません。

現在、小児科医や漢方医から、坐薬製剤販売の希望が集まっており、
自家製剤で使用しているクリニックや病院も増えてきています。
 

当院でも五苓散坐薬を用意しております。
 

なお、ナウゼリン坐薬との違いは、ナウゼリンは脳の中の吐く命令を出すとこ
ろに効く薬で、まれにふらつきなどの神経症状などの副作用が
出ることがあります。
五苓散は、水をさばく、という働きがあり、はきけや下痢に効果があり、
ふらつきなどの副作用がないこと、また、吐いて脱水に進みやすいところを、
体の水分を保とうとしようとする働きも期待できることがメリットです。
 

ちなみに、五苓散は、胃腸炎のほかにも、熱中症や、二日酔いなどにも効果
があるので、わたしはいつも(?)持っています。

五苓散坐薬の効果については、このような報告があります。 
  

1.日本病院薬剤師会雑誌 1998
嘔吐を主訴に受診した20例
    五苓散坐薬投与 13例 有効(12/13)92.3% 無効(1/13)7.7%
    ナウゼリン坐薬 7例 有効(5/7)71.4% 無効(2/7)28.6%
  

2. 2010.7月日本小児漢方懇話会
2008.11月~2009.2月 嘔吐を主訴に受診した71症例
男児36例、女児35例 年齢5ヶ月~12歳(平均3.9歳)
著効(直後に改善) 61/71(86%)
有効(6時間以内) 6/71(8%)
無効(6時間以降改善なし) 4/71(6%)


下痢合併した23例で
軽快 61/71(86%)
不変 4/23(17%)
悪化 2/23(9%)






ロタウイルス胃腸炎は以前「白色便性下痢症」と呼ばれ、

赤ちゃんの嘔吐下痢症の代表格です。

僕たちもお医者さんの勉強をするときに「冬季乳児下痢症」

と覚えたものです。

 ロタウイルスに感染すると、通常は胃腸炎をおこし

下痢や嘔吐を認めます。重症化すると脱水症状などで

入院治療が必要になることもあります。

更に、ロタウイルス脳炎(脳症)という病気になり、

神経系の後遺症を残すことも稀にあります。

 ここまで行かないまでも、特に働いているママたち

にとっては、年末年始の一番忙しい時期に保育園に

預けられなくなってしまうのは死活問題だと思います。

ところがこれだけで済むと思ったら大間違いで、こ

の感染性腸炎はものすごく感染力が強いので、

家族内感染」ともいうべきか、

家族中でうつし合ってしまう可能性まであるのです。

 しかも、これが非常に厄介なことに、

1回かかったからもう大丈夫」とは問屋がおろさなくて

-3回、最悪5回かかってしまうこともあるのです。

(この理由が気になる方は本ブログ最後のところに

ヒントが隠されています())

 この嫌なお病気。今までは有効な予防策はありません

でしたが、ロタウイルスワクチンの接種(内服)により、

感染を予防できるようになりました。

というのは皆様ご存知だと思いますが、

2種類のワクチンが市販されており、どっちが良いのか

頭を悩ませている方も多いかもしれません。

そこで今回のブログのテーマ

ロタリックスとロタテックの違いについて」

となります。

一番大きな違いは、

ロタリックスが1価のワクチンであるのに対し、

ロタテックは5価のワクチンであることです。

価の数が多いから優れているかというとそうでもなく、

効果はさほど変わらないようです。


興味のある方はこのブログの最後のほうに徒然書いて

おきますのでご参考に()

もう一つの違いが接種回数です。2回で済むか、3回必要か

は大きな違いで、この予防接種を考慮する月齢の子供たちは、

他にもたくさんの予防接種をしなければなりませんので、

スケジュールをどうするかも頭を悩ませるところでしょう。

もちろん同時接種ができますので、病院に来る回数を調整する

ことはある程度可能でしょうが、

ちょっと悩みどころかもしれませんね。

それともう一つ。これはもしかしたらあまり関係ないのかも

しれませんが、ロタリックスはヒトロタウイルス由来なので、

腸の中でよく増え、免疫が獲得しやすいようです。これに対し、

ロタテックはウシロタウイルス由来ですので人の腸内での繁殖が

悪く、抗体獲得確率も低くなるので、

接種回数も3回必要ということのようです。




二つのワクチンの違いを表にしてみました。

ワクチン ロタリックス ロタテック
組成 ヒトロタウイルス(G1P[8])を弱毒化 ウシロタウイルスのV7に、ヒトロタウイルスのG1,G2,G3,G4を組み入れたリアソータント(遺伝子組み換え)のウイルス4種と、ウシロタウイルスVP4P[8]遺伝子を組み込んだリアソータントのウイルス1種の計5種のウイルスを混ぜてある
重篤なロタウィルス胃腸炎予防効果 71.792.4% 83.3100%
入院抑制(入院が必要なくなる)効果 83.899.5% 90.598.2%
接種回数 2 3
利点 接種回数が2回と少ない 3回接種するので免疫がより確実になると言われている()
32週までに接種すればよい
欠点 接種時期が24週までと短い 接種回数が1回多い
接種間隔 1回目:生後6週以上 1回目:生後6週以上
2回目:1回目から4週間以上あける 2回目:1回目から4週間以上あける
生後6週以上24週未満に接種を完了させる。 3回目:2回目から4週間以上あける
初回接種は生後15週(3ヵ月半)までに始めることが望ましい 生後6週以上32週未満に接種を完了させる。
  初回接種は生後15週(3ヵ月半)までに始めることが望ましい
副反応 易刺激性(7.3%) 下痢(5.5%)
下痢(3.5%) 嘔吐(4.2%)
咳嗽/鼻漏(3.3%) 胃腸炎(3.4%)
  発熱(1.4%)

参考までに、もし興味のある方はお読みください。

胃腸炎を起こすのはG1P[8]G2P[4]G3P[8]G4P[8]G9P[8]5通りの組み合わせがほとんどです。このため先述のように最悪5回感染してしまうリスクがります。

ロタリックスはG1P[8]1種類のヒトロタウイルス株を弱毒して作ったワクチンですが、G2P[4]G3P[8]G4P[8]G9P[8]の他の種類のロタウイルスに対する予防効果も認められています。(ほとんどのヒトロタウイルス胃腸炎に有効、G2Pにはやや弱いとの報告がある)。

一方ロタテックはウシロタウイルスV7に、ヒトロタウイルスのG1G2G3G4を持つV7遺伝子を、遺伝子組み換えによって組み込んだ、リアソータント(遺伝子組み換え)ウイルス4種と、さらにウシロタウイルスVP4の代わりに、P[8]遺伝子を持つヒトV4遺伝子を遺伝子組み換えによって組み込んだ、リアソータントウイルス1種の、計5種のウイルスを混合したものです。このワクチンは、G1G2G3G4P[8]が含まれているため、ヒトに病原性を持つG1P[8]G2P[4]G3P[8]G4P[8]G9P[8]の全てのロタウイルスをカバーした予防効果が認められています。

1価よりも5価の方が明らかに優れている、という訳でもなさそうです。効果に関してはあまり差はないようです。むしろ1価ワクチンの方がヒトワクチン由来ですので、予防効果の%がやや高いという報告もあります。

そこで、流行時期直前の冬に接種を希望される方や、予防接種を同時接種ではなく、なるべく1種類ずつ済ませたいと希望される方は、接種回数の少ないロタリックス。流行時期の過ぎた夏頃ならロタテック。なんていう選択肢も良いかもしれませんね。