散歩道のゴミ集積所へ覆い被さるようにして、ネムノキが大きく枝を張っています。その広げた枝一面に美しい花が咲きました。白いはけを広げたような形、その先端が薄紅色に染まって、実に愛らしい姿をして
います。
舞い降りてきた花を手に取ると、白からピンクや薄紅色へ移っていく様は、幻想的でさえあります。捉え方によっては怪しげな。芥川龍之介さんは「蛇女 みごもる雨や 合歓の花」ちょっと、おどろおどろしく感じたようです。
そう思えば、その気になってくるから不思議です。雨上がりの薄曇りの夕方にネムノキを見上げると、怪しげな炎が揺れているようにも見えます。調子に乗って僕も一句詠んでみました。「人誘う 怪しの炎 合歓の花」
娘に誘われて、ハワイのモンキーポッドを見に行ったことがあります。「この木なんの木 気になる木」のCMでお馴染みの木です。アメリカネムノキというくらいですから、ネムノキと良く似た花が咲いていました。
初めて見たモンキーポッドは、テレビで見たまんま。見事に大きく枝を広げていました。そして「見たこともない花が咲くでしょう」これもまた歌の通り、見たこともない花が落ちています。緑の草原にきれいな彩りを添えていました。
若山牧水さんは「いつ知らず 夏も寂しう 更けそめぬ ほのかに合歓の 花咲きにけり」と詠んでいます。芥川さんは怪しげに感じましたが、若山さんの目には、寂しげや愛しげの方が優ったようです。人それぞれ、印象も表現もまちまち。
僕もちょっと気取って詠んでみました。「合歓の木の 薄紅の花 舞い降りて 緑の原に 彩り添えぬ」花はきれいですが、実はインゲン豆を大きくしたようなものが、ボタボタ落ちてきます。踏むと気持ちが悪いです。
モンキーポッドの実は、えぐみが強くておいしくないそうです。歌のように「みんなが集まる実がなるでしょう」となるには、よほど食料不足にならなければ実現しないみたい。ネムノキの実も一度食べてみましょうか。