ラファエル前派展に行きました。 | 映画熱

ラファエル前派展に行きました。

久しぶりに、美術館に行きました。


リニューアルした新潟市美術館は、照明もLEDになったりして、何だか新鮮。

「英国の夢 ラファエル前派展」は、7月19日~9月23日まで開催中。

もっと早く行きたかったんですが、お金と時間がなくて、

何とかやっと先週、行くことができました。


もうすでにピークは過ぎているので、お客も少なめで、ゆっくり見ることができました。



レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロは、

盛期ルネサンスを代表する、三大巨匠。

俺的には、信長、秀吉、家康のような関係であると捉えています。

ラファエロは、2人の天才から多くを学び取り、

穏やかで、調和に満ちた、模範的な作風を生み出しました。


俺が持っている本「西洋美術史入門」の記述によれば、

『…総合力、調和の力こそ、ラファエロ独自の才能。

 すべてをまとめ上げて創造する、プロデューサー的な才能。』とあります。


なるほど、たしかに、彼の作風は、どこか安心できるような、

最大公約数的な魅力があるような気がしますね。


ラファエロは、37歳という若さで、この世を去りました。

しかしながら、膨大な数の作品を世に残し、濃ゆい人生を生きたと言えます。



彼の存在は、伝説となりました。


紀元前、紀元後とか、戦前、前後のように、

大きなインパクトがある人物を境に、時代の区分けがされることは、よくあること。


それだけ、ラファエロの存在は、すごかったんですね。



ちなみに、ウィキペディアによると、日本語表記では、

「ラファエッロ」「ラファエルロ」「ラファエル」と、色々あるようですが、

個人名では「ラファエロ」、時代区分としては「ラファエル」になっちゃうみたい。


ややこしいので、どちらかに統一してもらえるように、えらい先生方、よろしく。




前置きが長くなりましたが、今回の展示は、「ラファエル前派」。

ラファエロがスタンダードになったことに反発し、

イングランドにおいて、ミレイ、ハント、ロセッティを中心とする7人のグループが、

1848年に「ラファエル前派兄弟団」が結成されました。


本展示会は、リバプール国立美術館所蔵の、彼らの力作を、一同にご覧いただけます。



まず、何といっても一番目を引くのは、

ミレイの「ブラック・ブランズウィッカーズの兵士」でしょう。

宣伝ポスターやチラシに印刷されているこの絵は、何ともインパクトがあります。

今風に言うと、いわゆる「壁ドン」みたいな構図なんですね(笑)

しかし、厳密には、旅立とうとする兵士を行かせまいとして、

女性が名残を惜しんでいる描写なんです。

彼女のドレスの質感が素晴らしいので、ぜひ近くによって確かめて下さい。



俺が個人的に一番惹かれたのは、マクリーヌの「祈りの後のマデライン」です。

この絵を見た時に、俺はしばらく、釘付けになってしまいました。

クソつまらん解説なんかよりも、俺が感じたことが真実です。


画集に印刷されている写真よりも、現物の方が数百倍美しい。

光と影のバランスが絶妙で、この絵から、物語が想像できる、ロマンチックな作品です。


絵画を楽しむコツは、解説をいきなり読まず、作品をしっかり見てから読むこと。

主観や先入観は、美術鑑賞の妨げになるし、自分の感性を殺すことになりますから。

映画だって、見る前にストーリーをネタバレされたら、嫌じゃありませんか?

あくまでも、自分の感覚で味わい、付属的に解説を読み、参考にすればよろしい。


これはこう感じろとか、これはこう考えろ、といった「押し付け」は、大嫌いだから。



2番目によかったのは、ワッツの「十字架下のマグダラのマリア」。

イエスが処刑されて、意気消沈したマリアの崩壊した精神が、すごく伝わってきます。

ここまで悲しんでくれるなら、彼も浮かばれるんじゃないでしょうか。

表情、構図、色彩すべてが、焦燥感に満ち溢れていて、限りなく美しい。


3番目に挙げたいのは、ポインターの「愛の神殿のプシュケ」。

ギリシャ神話に登場する人物だそうですが、愛する人を想い続ける気持ちは、

昔も今も、そんなに変わらないものがあるんでしょうね。

明るい色調で、健康的なお色気を放つ、魅力あふれる傑作だと思います。


ちなみに、ポインターの「テラスにて」は、もっとエロいです(笑)


コワいのは、レイトンの「エレジー」。

この絵の女性は、この世のものでない感がハンパない!


そして、マニアックなところでは、グリーナウェイの「お嬢さんたち」。

ゴスロリ風のクラシカルな衣装が、何ともいえず、いい感じです。



そして、見逃せない傑作として、ロセッティの「パンドラ」があります。

二の腕がたっぷりした女性が好みなので、彼の絵柄は個人的に好きなんです。

魔性の色づかい、ダイナミックな手の描き方… ああ、スバラシイ。



大きな絵としては、バーンジョーンズの「レバノンの花嫁」かな。

北風と南風女性像がまとっている衣装が、風に舞っている感じがすごくいい。

日本でいうところの風神・雷神みたいで、何ともカッコいいですね。




時間があったので、約2時間くらい、美術館にいました。

今回はちゃんと、メガネを持って行きましたよ~


俺は、基本は映画だけど、読書も絵画も好きです。


動いているから、いいもの。

動かないけど、動きを感じさせてくれるもの。

色彩や文章で、想像の奥行きを広げさせてくれるもの。



日常生活だけでは、五感をフルに活用させることは、はっきり言って少ない。

感覚的に足りないものは、心が欲してくるものだと思う。



美術館で過ごす時間もまた、至福のひととき。

俺が、俺らしくなれる、貴重な時間。



文章の、魅力。

絵画の、魅力。

音楽の、魅力。


それらの総合芸術が、映画の世界。


そのひとつひとつのジャンルを極めていくことで、

より映画を楽しめる感性が磨かれていく。



これからも、俺は、美術館に通います。


その方が、俺の映画人生が、もっと楽しくなるから。







【今後の開催予定】


2015年10月3日~12月13日 名古屋市美術館

2015年12月22日~2016年3月6日 Bunkamura ザ・ミュージアム

2016年3月18日~5月8日 山口県立美術館