プロフェッショナル 仕事の流儀 宮崎駿 1000日の記録 | 映画熱

プロフェッショナル 仕事の流儀 宮崎駿 1000日の記録

新しいものを生み出す力の源は、作り手にしかわからない。


NHKで放映されたTV番組を録画していて、今日やっと見ることができました。

俺が、「風立ちぬ」を見て感じたことの意味が、ようやくわかりました。


映画監督という人の立場という苦悩。

作り手としての野望。

72歳という、「時間がない」脅迫観念。

戦争を体験し、震災をまのあたりにした男の葛藤。


色んな思いが、男の脳裏を駆け抜ける。

自分が、本当に作りたいものは何か。

彼は、それだけを考え続けたんだと思う。


「トトロみたいなもの、作ればいいじゃん」

「それは、すでにトトロがあるからいいだろ!」

確かに、その通りです。

儲かる映画を作れば、みんなが望む作品を作れば、簡単に生きられるでしょう。

しかし、宮崎駿という男は、そういうんじゃないんです。


作り手は、作る楽しさを誰よりも知っている。

作り手だから、生み出す苦悩も人一倍知っている。

いいものを生み出すためには、現場でダメ出ししなくてはならない。

一生懸命に描いたスタッフの絵も、使えなければ破棄せねばならない。


俺は、もの作りの仕事をした人間のはしくれとして、

ジブリのスタッフに敬意を払います。

いいものを生み出すためには、断腸の思いもあるでしょう。

こだわりの場面では、理不尽な要求もあるでしょう。

スタッフのみなさん、よくがんばりました。


「風立ちぬ」は、今までの宮崎作品とは、毛色が違います。

どこがどういいのか、俺の貧弱な表現力では、伝えきれません。

だから、この映画のよさを、うまく言えないんです。


それが、たまらなく悔しい。


宮崎監督は、こう言ってました。

「自分の映画で、泣いたのは初めてです。」


その言葉で、俺は充分でした。

よかったですね、監督。


俺は、宮崎監督と同じ時代に生きたことを、誇りに思っています。

この映画は、時間が経つとともに、評価が上がって行くと思います。


駿(はやお)という名前に恥じなく、時代を駆け抜けて行く男。


大変な時代だからこそ、強く生きる人たちはたくさんいる。

昔の人だから偉いとか、そういうことは関係ない。

今、この瞬間に、いい仕事をしている人はたくさんいる。

その仕事は、時間が経ってから、評価されるのだ。

そういうことを考えずに、今、それをやるべきだと思ってやる人が、カッコいい。

そういう姿こそ、真に美しいのである。


やるべきことを、やるべき時にやる。

それが、最高に幸せなことなのだ。



いい作品を生み出した、宮崎駿監督に敬意をこめて。




【追記】

この番組は、映画を未見の人にはオススメしません。

だって、俺の一番好きなシーンがもろに出ているからです。
あそこは、先に見せちゃイカンですよ、NHK&ジブリのスタッフの皆さん。