U-NOTE 635 「感情の深い場所」 | 映画熱

U-NOTE 635 「感情の深い場所」

人は、誰にも踏み込まれたくない場所がある。

人は、誰にも知られたくない感情がある。

人は、誰にも干渉されたくない秘密がある。


それは、悪いことでも何でもなく、正常な感覚である。

恥じることもなければ、罪悪感を持つ必要もない。


人として、当たり前のこと。

男として、価値のあること。

生身の人間として、当然の感情。


そんな簡単なことが、なかなか伝わらない。

そんな単純なことが、なかなか理解してもらえない。

そんな重要なことが、軽くあしらわれる風潮…



人にとってはどうでもいいことでも、自分にとっては重要なことがある。

自分にとってはどうでもいいことでも、人にとっては重要なことがある。


理解し合える関係というのは、ちょっとしたことでわかるもの。

理解し合えない関係というのは、ちょっとしたことでわかるもの。


それは、理屈ではなく、論理的なものでなく、正論でもない。


その人が、どう感じたか。

その人が、どう苦しんだか。

その人が、どう考えているのか。


誰の真似でもなく、その人の、オリジナルの感情の世界。

これは、その人と、感覚で付き合っている人にしかわからない世界。


今、俺の親友が、苦しんでいます。

簡単に言葉をかけられないレベルの苦しみです。

安易な言葉は、かえって相手を追い詰めてしまいます。


どんな言葉でも、かけないよりは、かける方がいいのか。

傷つくとわかっている言葉でも、かけた方がいいのか。

その人の気持ちを考えれば考えるほど、何も言えなくなってしまう時がある…


俺は、そういう時は、あえて、言葉をかけないことがあります。

何を言ってもダメだと思う時は、相手が落ち着くまで、放っておく。

それは、冷たい態度なのかもしれませんが、ある意味、優しさでもあるんです。



美輪明宏さんのエピソードで、こんな話があります。

今は亡き俳優、赤木圭一郎と一緒にいた時に、

彼が、「少しの間、俺に構わないでくれ。」と言ったそうです。

美輪さんは、「わかった。」と言って、しばらく待ったそうです。


彼はやがて、落ち着きを取り戻しました。

美輪さんに、「放っておいてくれて、ありがとう。」とお礼を言ったそうです。

この関係、俺は、とても素敵だと思います。


相手が言いたくないことは、あえて聞かない。

相手が話したくなったら、自ら話してくれると思うから。

だから、やがて来るその時のために、今起こったことをしっかり覚えておく。

本人が、理由を話したくなった時に、一番いい状態で聞くことができるように。

本人が話さなければ、忘れたふりをしてあげればいい。


何か、不自然な言動をした時に、そのことがヒントになるかもしれない。

何か、理解不能な行動をした時に、理解できるきっかけになるかもしれない。

人というのは、複雑なようで、単純なものだったりするから。


心の問題は、焦って結論を得ようとしない方がいい。

その人が、一番いい状態の時に、じっくり聞くべきなのである。


不安だから、早く理由を理解したい…と思うのは、こちらの身勝手である。

本当に言いたいことは、すぐに言葉として出てこない場合が多いものだから。


大切な人を、焦って傷つけてしまうのは、そういう時。

苦しんでいる相手と、心配している自分と、どちらを優先するのか。

「相手のため」と言いながら、「自分のため」になっていないか。

ちょっとした瞬間に、そういう思いが出てしまうのである。

傷ついている相手は、そこを瞬時に見抜いてしまうから。


心の波長を合わせなければ、わからないことがたくさんあります。

「待てる人」は、大人の心を持った人。

「信頼」というのは、不安感からは決して生まれないものだから。


一歩下がって、しばらく待ってみる。

相手と一緒に、自分の心も、落ち着けてみる。


相手の心から逃げないで、自分の心から逃げないで、

ひたすら、心の波長を合わせて、一緒に考えてみる。

上から目線ではなく、相手と同じ目線になって考えてみる。


そこから、何かが見えてくるはずです。


あなたの大切な人を、しっかり理解してあげて下さい。


時間をかけると、いいものが生まれますから。