それでもボクはやってない | 映画熱

それでもボクはやってない

これほど観客を突き放した映画も珍しい。 考える力を試されているみたいだった。


監督・脚本は、周防正行。何と11年ぶりだそうです。やっぱりこの人、映画監督だったんだ。


出演は、加瀬亮、瀬戸朝香、役所広治、山本耕史、もたいまさこ、小日向文世、光石研、本田博太郎、竹中直人、大友南朋、徳井優、田口浩正、清水美砂、鈴木蘭々、高橋長英、田中哲司、柳生みゆ、尾美としのり、増岡徹。うわー、すげえ豪華だこと。


こんなにいっぱい出ていると、映画がゴチャゴチャになりそうだけど、そこは大丈夫。大物ほど出番が少ないから。


さて、映画ですが、決して面白い映画ではありません。ただ、とても勉強になると思います。彼女とデートで気楽に見られるシロモノではありませんので、ご注意を。


俺的には、この主人公がどうも気に入らんかった。こいつ、甘やかされて育った男に思える。いつも何かあると、誰かがどうにかしてくれてたんでしょう、たぶん。すっげえムカツくキャラでした。


昔の格言で、瓜田に靴を入れず、李下に冠を正さずと言うじゃないですか。疑わしい行為をすること自体、絶対やめた方がいい。こいつが冤罪に巻き込まれたのも、ある意味自業自得かもしれない。


「Shall we ダンス?」 の時も、娯楽映画の形態をとりながらも、中身はクールだった。ラストが尻切れトンボなのも、きっと計算のうちだったんでしょう。本作もそういう意味で、クールな印象を受けます。


ただひたすら、淡々と撮る。観客に決して媚びず、自分の撮りたいものを撮る。感情移入する余地はほとんどない。彼のスタイルは独特。その才能は評価します。でも、好みじゃない。ギャグもかなり入っていたけど、笑うに笑えない。自宅の画面でみるなら大笑いするところでも、映画館ではそうはいかない。被告人をあざわらっているかのようだから。


監督自身も、『この映画の主役は裁判制度そのもの』 と言っています。だから、キャラクターに感情移入されると困るってことなんでしょう。でもねえ、監督、観客はやっぱり人を見ると思いますよ。


人は、人を通して心を動かされるもんだと思う。この映画を見た後は、ひたすら気が滅入る。救いがない。一応パンフレットの中では、希望がある終わり方だって説明している箇所もあるけど、それなら画面で表現して下さいな。


ただ、特筆すべきは、田中哲司のセリフ。彼のキャラだからこそ、説得力があると思う。心にしみる言葉でした。


そんなわけで、行こうという人は、覚悟して見て下さい。見た人によって感想は様々だと思うから。


余談ですが、俺の隣りにいたオヤジが、やたら大声で笑う男だったもんで困ってしまいました。あまりに下品な笑い方なので、前列のオバチャンが振り返ったほどです。…えっ、俺を見るなよ。俺じゃないぞ、このジジイだって! …ああ、これって、冤罪?



【エンドクレジット】

普通に終わりますが、変な歌が流れます。聞くに堪えない人は、さっさと退席しましょう。


【トイレに行くタイミング】

毎回の公判が終わった直後くらいがいいでしょう。2時間半くらいあるので、ガマンしないでドンドン行きましょう。


【オススメ類似作品】


「39 刑法第三十九条」

森田芳光監督。堤真一のイカレ役よりも、鈴木京香の抑圧された色気が際立った作品。


「逃亡者」

ハリソン・フォード主演。冤罪モノは、やっぱりコレでしょう。


「ゆれる」

西川美和監督。オダギリジョーが法廷でうろたえる姿は、なかなかよかった。