今回でこのシリーズは終わりを迎えますが、どうか最後までお付き合い下さい。
最終回は、シューケア好きの方でも所有者は少ないであろう、「ヤク毛ブラシ」について紹介します。
私がヤク毛ブラシを最初に目にしたのは、前回お話した「GALLERY OF AUTHENTIC」を訪れた時の事でした。
初めはベネチアンに目を奪われましたが、同じ棚に陳列されていたブラシもなんとなく気になり、それを手に取ってみた瞬間、"衝撃"が走りました!
それは、今まで触った事のある馬毛や豚毛、山羊毛のどれとも違う感触で、良い意味で「コレは本当にブラシなのか?」と感じる程でした。
なんというか毛先を押しても凹まないくらい毛が密集しているせいで、例えるなら毛先一面がまるで上質な絨毯の様なんです。(伝わりますかね?)
しかし、もっと驚いたのがその価格…。
なんと、ブラシ一本で1万円越え!!
高級洋服ブラシでは、貴重な毛材の中でも厳選に厳選を重ねた一部分しか使わない物ならもう一桁違う物もあるにはあるのですが、色分けや実用耐久性が求められる靴ブラシに一本1万円はさすがに出せません(^^;
そんな色んな意味で驚きのヤク毛ブラシを作っているのは、
1921年創業のスイスの高級シューケア用品メーカー「Burgol(バーゴル)」
バーゴルはブラシ以外にもクリームやワックス、クリーナー等も出しているのですが、やはり買えるお店は日本ではごく僅かです。
そして、何より国内では値段が高い…(^^;
バーゴルは主にドイツ語圏の国々で販売しているようなので、私はドイツに行った時に観光そっちのけでバーゴルを取り扱っているお店を探し回り、クリームとワックスは何とか安く入手して来ました(笑)
そんなバーゴル社が出しているヤク毛ブラシは毛の8割がヤク毛、さらにその周りを囲むように山羊毛が植えられているという、何とも豪華な仕様!
残念ながら、バーゴルのヤク毛ブラシは持っておりませんので写真はありませんが、検索すればすぐ画像が出てくるかと思います。
その代わりに、私が持っている「レデッカー」のヤク毛ブラシをご紹介。

なんと、柄の長さが21cmもあります!
余りの長さ故に取っ手が設けられている訳ですね。
加えて、柄の上部に継ぎ目とネジ留めが見えますよね?
そう、コレ手植えブラシなんです。
なので、植毛量も超ギッシリ、かつ値段もそれなりの8千円也。
しかし、他にはない大きさと"ヤク毛のみ"を使用している点を考慮して、私はバーゴルではなくレデッカーを選んだのですが…
未だ、このヤク毛ブラシの使い道を見出だせずにいるんですよ(^^;
商品説明としては"仕上げ用"となっているのですが、仕上げに使うには毛が少々固めなので、毛の擦り跡が付いてしまいます。(鏡面磨きの場合)
正直、仕上げ用ブラシは山羊毛で十分という認識なので、クリーム伸ばし用に使おうかとも思ったのですが、そうなると貴重な一本を何色用にするのか決めかねてしまいます。
前回紹介した無色のディアマント専用ブラシの2代目にするのも良いのですが、初代のダスコがまだまだ現役でいらっしゃるので、本当困っております(笑)
ここまで書いておいて何ですが、
もしヤク毛ブラシが欲しいという方は、是非ご自身でもその使い道を研究してみて下さい(^^)
ブラシだけに関わらず、
自分の道具をどう扱い、どう育てるかは、
その人の知識とアイディアにかかっているのですから。
さて、
いきなりですが、ここで大事なお知らせがございます。
毎週末更新してきた
この「Shoeshine TOKYO ブログ」ですが、
しばしの間休止させていただく事になりました。
これまで見て下さっていた皆様、申し訳ございません。
大変ありがたい事に先月から弊社は繁忙期に入り、連日数多くのお客様にご来店いただいております。
そんな中、なかなかブログまで手が回らないという状況を鑑みまして、しばらくお休みを取らせていただきます。
いつ、どういう形で再開するかは分かりませんが、またその時はよろしくお付き合い下さいませ。
しかし、このまま終わるのも寂しいので、
せっかくですから、最後に私にとって"靴の師匠"と呼べる方をご紹介して締めたいと思います。
その方とは、服飾ジャーナリストとして知られる「飯野高広氏」です。
氏は、Webサイト「All About」で紳士靴のガイドとして、靴のお手入れからデザイン(意匠)の起源、製靴方法の変遷まで様々な記事を連載されている方で、弊社についての取材記事も何度か書いて下さっている、まさに"靴博士"とも呼べる存在。
靴磨きに興味を持ち、ネットで調べた事がある人なら、一度は目にした事があるのではないでしょうか?
飯野さんが書かれる記事を読めば、当時靴について全くの素人だった私でも理解しやすいくらい、テーマ別に確かな知識と丁寧な言葉選びで、大変読みやすく構成されているのが伝わってきます。
そういった要素を少しでもこのブログでも表現出来たらと思い、取り組んで参りました。
私事ですが、
飯野さんのAll Aboutの記事を読んだのがキッカケで、私は靴磨き、もとい靴そのものに強く興味を惹かれるようになり、最終的に靴作りまで独自に研究するようになった訳でして、今なお尊敬して止まないお方です。
実は、一から靴の勉強をしたいと思っても、靴の教科書と呼べるものって殆ど無いんですよ。
欧米とは、そもそも履き物の文化が違うので、靴の歴史の浅い日本で学ぼうとすると、手段は限られてくるんです。
Web記事だけでなく、もっと詳しく靴の事を知りたいという方には、
氏の「紳士靴を嗜む」という本が大変オススメなので、是非読み込んでみて下さい!
一冊あると、これまで靴を履き棄てていた人でも、靴との正しい付き合い方を通じて、多くの事が学べると思います。
この本は、今でも私にとって"バイブル"と呼べる代物です。
機会があれば、「いつか飯野さんに直接お礼の言葉を伝えたい」という想いを心に秘め、これからも靴磨きと靴作りの道を精進して参ります。

これからはもうブーツの季節ですからね!
お気に入りの一足を綺麗に磨いて、気分良く出掛けましょう♪
皆様のご来店を心よりお待ちしております(^^)