Shoeshine TOKYO ブログ

Shoeshine TOKYO ブログ

東京は新橋を中心に「靴磨き専門店」として日々皆さまのお足元を輝かせる技術に拘り続けています。

革のコンディションを整え、美しい輝きを放つように仕上げます。

清潔で人目も気にならないお店ですので、初めてのお客様や女性のお客様も安心してご来店下さいませ。








こんにちは、梶原です。

今回でこのシリーズは終わりを迎えますが、どうか最後までお付き合い下さい。

最終回は、シューケア好きの方でも所有者は少ないであろう、「ヤク毛ブラシ」について紹介します。

私がヤク毛ブラシを最初に目にしたのは、前回お話した「GALLERY OF AUTHENTIC」を訪れた時の事でした。

初めはベネチアンに目を奪われましたが、同じ棚に陳列されていたブラシもなんとなく気になり、それを手に取ってみた瞬間、"衝撃"が走りました!

それは、今まで触った事のある馬毛や豚毛、山羊毛のどれとも違う感触で、良い意味で「コレは本当にブラシなのか?」と感じる程でした。
なんというか毛先を押しても凹まないくらい毛が密集しているせいで、例えるなら毛先一面がまるで上質な絨毯の様なんです。(伝わりますかね?)

しかし、もっと驚いたのがその価格…。
なんと、ブラシ一本で1万円越え!!

高級洋服ブラシでは、貴重な毛材の中でも厳選に厳選を重ねた一部分しか使わない物ならもう一桁違う物もあるにはあるのですが、色分けや実用耐久性が求められる靴ブラシに一本1万円はさすがに出せません(^^;

そんな色んな意味で驚きのヤク毛ブラシを作っているのは、
1921年創業のスイスの高級シューケア用品メーカー「Burgol(バーゴル)」

バーゴルはブラシ以外にもクリームやワックス、クリーナー等も出しているのですが、やはり買えるお店は日本ではごく僅かです。
そして、何より国内では値段が高い…(^^;

バーゴルは主にドイツ語圏の国々で販売しているようなので、私はドイツに行った時に観光そっちのけでバーゴルを取り扱っているお店を探し回り、クリームとワックスは何とか安く入手して来ました(笑)

そんなバーゴル社が出しているヤク毛ブラシは毛の8割がヤク毛、さらにその周りを囲むように山羊毛が植えられているという、何とも豪華な仕様!

残念ながら、バーゴルのヤク毛ブラシは持っておりませんので写真はありませんが、検索すればすぐ画像が出てくるかと思います。

その代わりに、私が持っている「レデッカー」のヤク毛ブラシをご紹介。
このブラシは、柄に取っ手まで付いているという一風変わった出で立ちですが、驚くのは形だけでなく、その大きさ!

なんと、柄の長さが21cmもあります!
余りの長さ故に取っ手が設けられている訳ですね。

加えて、柄の上部に継ぎ目とネジ留めが見えますよね?
そう、コレ手植えブラシなんです。
なので、植毛量も超ギッシリ、かつ値段もそれなりの8千円也。

しかし、他にはない大きさと"ヤク毛のみ"を使用している点を考慮して、私はバーゴルではなくレデッカーを選んだのですが…

未だ、このヤク毛ブラシの使い道を見出だせずにいるんですよ(^^;

商品説明としては"仕上げ用"となっているのですが、仕上げに使うには毛が少々固めなので、毛の擦り跡が付いてしまいます。(鏡面磨きの場合)

正直、仕上げ用ブラシは山羊毛で十分という認識なので、クリーム伸ばし用に使おうかとも思ったのですが、そうなると貴重な一本を何色用にするのか決めかねてしまいます。

前回紹介した無色のディアマント専用ブラシの2代目にするのも良いのですが、初代のダスコがまだまだ現役でいらっしゃるので、本当困っております(笑)

ここまで書いておいて何ですが、
もしヤク毛ブラシが欲しいという方は、是非ご自身でもその使い道を研究してみて下さい(^^)

ブラシだけに関わらず、
自分の道具をどう扱い、どう育てるかは、
その人の知識とアイディアにかかっているのですから。


さて、

いきなりですが、ここで大事なお知らせがございます。

毎週末更新してきた
この「Shoeshine TOKYO ブログ」ですが、

しばしの間休止させていただく事になりました。

これまで見て下さっていた皆様、申し訳ございません。

大変ありがたい事に先月から弊社は繁忙期に入り、連日数多くのお客様にご来店いただいております。

そんな中、なかなかブログまで手が回らないという状況を鑑みまして、しばらくお休みを取らせていただきます。

いつ、どういう形で再開するかは分かりませんが、またその時はよろしくお付き合い下さいませ。

しかし、このまま終わるのも寂しいので、
せっかくですから、最後に私にとって"靴の師匠"と呼べる方をご紹介して締めたいと思います。

その方とは、服飾ジャーナリストとして知られる「飯野高広氏」です。

氏は、Webサイト「All About」で紳士靴のガイドとして、靴のお手入れからデザイン(意匠)の起源、製靴方法の変遷まで様々な記事を連載されている方で、弊社についての取材記事も何度か書いて下さっている、まさに"靴博士"とも呼べる存在。

靴磨きに興味を持ち、ネットで調べた事がある人なら、一度は目にした事があるのではないでしょうか?

飯野さんが書かれる記事を読めば、当時靴について全くの素人だった私でも理解しやすいくらい、テーマ別に確かな知識と丁寧な言葉選びで、大変読みやすく構成されているのが伝わってきます。

そういった要素を少しでもこのブログでも表現出来たらと思い、取り組んで参りました。

私事ですが、
飯野さんのAll Aboutの記事を読んだのがキッカケで、私は靴磨き、もとい靴そのものに強く興味を惹かれるようになり、最終的に靴作りまで独自に研究するようになった訳でして、今なお尊敬して止まないお方です。

実は、一から靴の勉強をしたいと思っても、靴の教科書と呼べるものって殆ど無いんですよ。
欧米とは、そもそも履き物の文化が違うので、靴の歴史の浅い日本で学ぼうとすると、手段は限られてくるんです。

Web記事だけでなく、もっと詳しく靴の事を知りたいという方には、
氏の「紳士靴を嗜む」という本が大変オススメなので、是非読み込んでみて下さい!

一冊あると、これまで靴を履き棄てていた人でも、靴との正しい付き合い方を通じて、多くの事が学べると思います。

この本は、今でも私にとって"バイブル"と呼べる代物です。
機会があれば、「いつか飯野さんに直接お礼の言葉を伝えたい」という想いを心に秘め、これからも靴磨きと靴作りの道を精進して参ります。

さあ、これで本当にラストです!
これからはもうブーツの季節ですからね!
お気に入りの一足を綺麗に磨いて、気分良く出掛けましょう♪

皆様のご来店を心よりお待ちしております(^^)
こんにちは、梶原です。

すでに靴磨き道具の紹介は一通り終了していますが、今回は更なる番外編として、趣味で靴磨きをしていた頃から愛用しているブラシや"コードバン用クリーム"を取り上げていきます。

まずは、こちらから。
これは、私が持っている靴ブラシの中でも一番長く使っている「ダスコ」の馬毛ブラシです。

長年の使用で柄のロゴが殆ど見えなくなっておりますが、毛の方は依然として素晴らしい状態を維持してくれています。

このブラシは、今やシューケア用品の定番とも言える、コロニルの「ディアマント(現:シュプリーム)」という写真右側のクリーム専用のブラシとして使用していて、革に自然な艶感を与えたい時に重宝しています。

ディアマント自体はとてもサラッとした感触で、有機溶剤を使用していないクリームなので、素手で直接革に刷り込むのにも抵抗なく使えるかと思います。

なので、鞄等の面積の大きな物でも全体にサッと塗り伸ばしやすく、色の変化も起きにくいので、ヌメ革のようにすぐ油分に反応するタイプの革にもそれほど臆病にならずに塗れる、まさに万能クリームと言える存在です。

また、革に良い艶を与えてくれるだけでなく、使うブラシにも"しなやかさ"が加わるので、コードバンやパティーヌが施された繊細な革にはもちろん、クロムエクセルのようなオイルドレザーとの相性も抜群だと個人的に感じています。

そもそも、ダスコのブラシは元々コードバン向きの柔らかな馬毛ブラシを求めた末に購入した物なのですが、ディアマントとの相乗効果で今や立派なブラシへと育ちました。

正直このブラシがあれば、WAXに頼らなくていいくらい"イイツヤ"が出る魔法のブラシと成っています。

時々優しく回すようにブラッシングしてあげる、それを繰り返すうちにドンドン革が底光りしてくるんです。

良く育ったブラシは、革の成長(エイジング)を助けます。
だから、ブラッシングの行程は入念に、大切にしてあげて下さいね。

さて、少しコードバンの話に触れましたが、コードバン用のクリームと言えば"コレ"を語らずしては終われません。

そう、「ベネチアンクリーム」です。

私の知る限りでは、2012年の秋頃に弊社ブログにて紹介されたのを皮切りに、一部のシューケア&コードバンマニアの間で爆発的人気を博しました。(ネット界隈ではもっと以前から噂になっていたようです)

私もその当時から靴磨き及びコードバン靴には並々ならぬ思い入れがありましたので、日本にまだ入ってきていなかったこのクリームを「どうにか手に入らないものか」と思っていた矢先に、奇跡は起きました!

そのブログを読んだ一週間後に、とある靴屋さんに友人と偶然訪れたのですが、まさかまさか…そこで見つけてしまったんですよ、ベネチアンクリームを!

その靴屋さんとは、明治神宮前にある
GALLERY OF AUTHENTIC

竹ヶ原敏之介氏が展開する靴ブランド「AUTHENTIC SHOE&Co.」の靴等が揃う直営店です。

余談ですが、ここのボタンブーツとルイスブーツは本当に素敵です!
クラシカルでシンプルな格好良さを突き詰めた靴たちは一見の価値がありますよ♪

そして、ここは靴の販売だけでなく、以前から日本未入荷のシューケア用品の数々を独自に仕入れているようで、今まで目にした事がない商品が他にも揃っています。
(その辺のお話はまた次回)

その中でも、私の目が釘付けになったのは
やっぱり、コレ。
当時のレア度で言えば垂涎モノのコイツを見つけた時は運命的なものすら感じましたね。

でも、現在とはビンのデザインが少し違っていて、大きさもこちらの方が倍近くあります。

それでも値段は1500円とお手頃だったので、直ぐ様2本購入し、まだ1本目すら余り倒している状況です(笑)

購入してから半年後ぐらいに再訪した時には現在のパッケージに変わっていたのですが、その後からですかね?
品質にバラツキが出てきたのは…。

私はその辺の詳しい事情は把握しておりませんが、私の旧デザイン版のベネチアンのコンディションは2本とも問題無く、今なお最高です♪

これ1本でもかなり艶は出せるのですが、革に、もとい肌に優しい造りだとは思えないんですよね…(^^;

その理由は、「ニオイ」。

嗅いでみると、思いっきりワックスや有機溶剤のニオイが香ってきます。

逆に言えば、そういった成分が多量に含まれているからこそ、あれだけ"光る"訳ですね。

ちなみに、このベネチアンに近いニオイなのが、コロンブスから出ているブートブラックシリーズ、
その中の「コードバン専用クリーム」がベネチアンに似た仕上がりで、補色力もしっかりとあります!

それにしても、商品説明に「ワックスと有機溶剤を高配合」と、予想したそのまんまの説明がされているのには、思わず笑っちゃいました(^^;

近年発売されている高級靴クリームの傾向としては、「有機溶剤不使用」を謳う物が増えてきています。

革も元々は動物の皮膚なので、人肌に良い物が革に良くない訳はない、という事なのでしょう。

近年高まるシューケアブームの流れに乗り、男女関係なく安心して使えるようにと、化粧品にも使われる天然成分を配合したクリームが多くなってきている中で、ベネチアン等のクリームは時代の流れに逆行していると言えます。

別に、有機溶剤入りが悪いとは思いません。
むしろ、ああいうビカッと光るクリームは個人的に好きですし、実際ツヤが出やすく、色付きも良いので、誰にでも扱いやすい便利なクリームと言えます。

要はそれを使う人が、"コードバン及びシューケアに何を求めるか"だと思うんです。

ベネチアンのようにビカッと光らせたいなら、ベネチアンの他にも、品質も安定している老舗シューケアメーカーであるコロンブスのコードバンクリームがありますし、

有機溶剤不使用で補色力は控えめながら、革製品なら何でもござれの万能クリーム、ディアマントならツヤツヤ仕上げに出来ます。(色のトーンの調節にも使えます)

ちなみに、M.モゥブレィのクリームナチュラーレもディアマントと同じ使用感でオススメです!匂いも良し!

ここまで紹介したクリームはどれも私靴のコードバンに実際に使用してみて相性の良かったものです。
それぞれの特徴を理解した上で是非色々と皆さんでも試してみて下さい(^^)

※ここで念の為申し上げておきますが、弊社ではベネチアンクリームの取り扱いは一切ございません。
加えて、ここまで書いた内容は私個人の所有物についての私見ですので、あらかじめご了承下さい。

さて、今回はかなり詰め込んだ内容でお届けしましたが、如何でしたか?

世のコードバン好きの方々に向けた、同じくコードバン好きな一個人の感想ではございますが、少しでも参考にしていただければ幸いです。

それでは、また次回。
こんにちは。

今回は、久々に水洗いの凄さをご紹介。
こちらのお靴、長年酷使されてきたのでしょうか?
かなり荒れた状態になっています。
つま先には古いワックスがこびりついており、履き皺の部分は割れ、革はすっかり枯れてしまっています(汗)

しかし!

こんな状態からでも見事回復させてみせますよ(^^)

まずは、表面に付いている余計な物をしっかりと落としていきます。これは、スッピン状態にしたところ。
革の色はまだらに抜けてしまっています。

そして、ここからがメインの水洗い。
革の内部の汚れもキレイにするため、隅々まで洗った後に乾かしてみると、、色抜けは更に進行…渇き切っています。

でも、これでやっと栄養を入れられる段階になりました!

この状態からクリームを入念に刷り込んであげれば、、見事に、あるべき姿へと回復!!

クリームを塗り込む前の状態と比較してみましょう。もはや別物ですね♪

そして、もう片方も整えてあげれば、、
お手入れの段階は、終了です。

仕上げに磨きをかけてあげれば、、
水洗い+ケア&シャインの全ての行程が完了です!

どうですか?
ぜひTOPの画像と比べてみて下さい。

何度見ても水洗い前と後では雲泥の差があるのが、お分かり頂けるかと思います。

ここまでの内容で、料金は5,400円です。

もしお悩みの靴があれば、是非一度ご相談下さい。
こんにちは。

今回は、シューケアの際に注意すべき「ワックス等の厚塗り」に関する事例をご紹介します。

早速ですが、こちらの2足。
もはやWAXかどうかも分からないもので表面がベッタリと覆われてしまっています。
普通のシューケア用WAXであれば、後々クリーナーでキレイに落とす事が出来るのですが、この靴に塗られているのは異様なまでにベットベト…。

落とそうとするそばから、布が動かなくなるくらい(まるでガムのように)ベタベタになってしまい、全て取りきるのにかなりの時間を要しました。

なかなか厄介な状態ではありましたが、落としきった後にしっかりお手入れしてあげると、ここまでキレイになりました!


右足(向かって左)が落とした終わった状態、左足(向かって右)が落とす前の状態。

これを両足ともキレイにし、クリームでお手入れすると、、
こうなります!(磨き後の写真は撮り忘れていました)

比較しやすいように、こちらも。
同じく右足は磨く前の段階ですが、その差は歴然ですね。

革を長持ちさせる為のシューケアでは、クリーナーで汚れの他に古くなったクリームやワックスを落としてあげる事が重要になります。

必要以上のワックスの厚塗りや、塗れば簡単に光るタイプの商品は革の呼吸を妨げてしまい、思わぬトラブルにも繋がりかねないので、ご注意下さい。
こんにちは、梶原です。

仕事道具の紹介シリーズも今回で7回目となりました。
そして、今回はシリーズの中でも、番外編という位置付けの道具をご紹介!

それは何かと言うと、"道具"をケアする為の「道具」です!

これまで紹介してきたような良質な道具というのは、たしかに長持ちする物が多いです。

が…しかし

ただそのままにしておくだけでは、道具自体も徐々に汚れていき、せっかくの性能も鈍くなっていく一方です。

それは、歩く為の道具である「靴」にも、それを手入れする「シューケア道具」にも同じ事が言えます。

長く良い状態のまま付き合うには、その"道具"を手入れする「道具」にも気を配ってあげましょう(^^)

では、具体的にどういう手入れが必要なのでしょうか。

靴のお手入れで欠かせない"ブラシのお手入れ方法"をテーマに、ご紹介していきます。

靴ブラシというのは、"毛"と"柄"が組合わされている道具です。
なので、各々の部分に適切なお手入れをしてあげればOKです。

それでは、まずブラシの"毛"の手入れから。

ブラシと言えど毛は毛なので、人が髪を梳かすのと同様、使うのは「櫛」です。
写真の2つの道具はレデッカー製の物ですが、平野ブラシさんからも同様の道具が販売されています。(熊手みたいな方は本来ヘアブラシ等に使う物です)

こういう手入れ道具も自社で用意しているところには、「自分たちの道具を長く大事に使ってほしい」という、"作る側の気持ち"が窺えますね。

具体的な毛のケアとしては、
1)毛の中に絡まっているホコリを取り除く
2)毛先に付き過ぎたクリームを拭き取る
3)飛び出た毛は抜かずに、ハサミで切る

この3つが挙げられます。

ブラシは、使っていると知らず知らずの内に毛の中にホコリを取り込んでしまいます。
1)の櫛かけ作業では、そんなホコリを取り除くのと同時に、常に毛がスムーズに動くように毛流れを整えておく事が目的です。毛の密度が高くホコリ払い用としても使われる馬毛や山羊毛ブラシの場合は、より大切な作業と言えます。

櫛かけ作業は、製造段階の最終行程でも行われる重要なもので、ブラシ1本につき
20分もかけて入念に行われるそうです。

また、クリームを伸ばす用に使っているブラシの場合は、徐々に毛先にクリームが付着していきます。

ある程度の量であればブラシを育てる事にも繋がりますが、付きすぎて固くなっている場合は、毛先が動きにくくなりクリームも伸ばしにくくなります。

そうした場合は、2)の作業として水orぬるま湯で濡らした布を固く絞った状態で、"毛先だけ"を優しく拭いてあげて下さい。

決して直接水をかけたり、浸してはいけません。
特に木柄の場合は厳禁です!
濡らしてしまうと柄が傷みますし、毛穴に水が入ると毛が抜けやすくなってしまいます。

私の知り合いには、たまにシャンプーで洗ったりするという人もいるのですが、天然素材である獣毛を水で濡らすと動物臭さがかなりキツくなると言っていたので、やはりオススメは出来ませんね。

それから、ブラシは使っている内に毛が飛び出てくる事もありますが、決して抜いてはいけません
製造段階で、一つの穴に植える毛束量を考えて植毛されているのですから、それを抜いてしまうと毛穴に隙間が生まれ、さらに抜けやすくなってしまいます。

飛び出た毛が気になる場合は、3)のようにその毛だけを綺麗にカットしてあげれば問題ありません。

これらの注意点は、江戸屋さんや平野ブラシさんでも言われている事ですので、お気をつけ下さい。

また、平野ブラシさんでは、この行程を分かりやすく動画で解説されていますので、併せてご紹介させていただきます。


さあ、お次は"柄"の手入れです。

当店では手で直接クリームを取るので、その手で掴むブラシの柄はどんどん汚れていきます。
なので、たまにクリーナーを使って綺麗にしてあげてます。

さらに私独自のケアとして、綺麗にした後はコレを塗って柄にさらにツヤを与えます。
MARIACREMA(マリアクレマ)という100%天然成分で出来ているクリームです。

このクリームは、靴工房「ZAPATEO」さんが販売しているクリームで、これ一つで保湿、撥水、防カビ効果もあるという優れ物。

近年のシューケア用品の流行として、天然由来の成分を使っている物が増えてきましたが、これは革製品どころかハンドクリームとしても安心して使用出来るほど、肌の事を考えて造られています。
そして、匂いも柑橘系(特にレモン)の香りが素晴らしく、従来のケア用品特有の石油系の臭いを気にする事なく、室内で靴のお手入れが出来るので、匂いに敏感な女性やご家族がいる方にもオススメです。

そして、このマリアクレマは、木製家具に対しての使用も可能なので、木柄のブラシのケアにはもってこいなのです。
※奥のブラシは手入れ無し、手前がマリアクレマで手入れしてきたブラシ。

写真の2本、かなりツヤ感が違いますよね?
このように手入れを続けていくうちに、アンティーク家具のようにブラシの柄も"味"を増していくんです。
こういうところは、革製品も木製品も同じなんですね(^^)

もちろん、"毛"にせよ"柄"にせよ、頻繁に手入れが必要な訳ではありませんが、数ヶ月~半年に1度ぐらいは状態を確認し、綺麗にしてあげる事で使いやすい状態をキープしてあげる。

これが、私が考える「良い道具との良い付き合い方」です。


以上で、私の愛用している靴磨き道具紹介シリーズはひとまず終了ですが、皆さんいかがでしたか?

最初は3回ぐらいの予定で書き始めましたが、終わってみれば7回も続けていました(^^;

非常にマイノリティな内容でお送りしてきましたが、これからもっと靴磨きを極めていきたいとお考えの方に、少しでも参考にしていただければと思います。
こんにちは。

今回は、"使い方次第で便利に使える道具"というのを、2つご紹介します。

まずは、こちらから。
そう、歯ブラシです(笑)

初っぱなから少し拍子抜けに感じるかもしれませんが、この歯ブラシが意外と便利なんですよ。

その歯ブラシを何に使うのかと言うと、、

こうやって、、

靴クリームが届きにくいアッパー(足を包んでいる上物の部分)とソール(靴底)の隙間にも、きちんとクリームを塗る為に使います。

皆さん、この隙間のケアって忘れがちになっていませんか?

靴を作る過程で革を木型に釣り込んでいくのですが、この部分は革にかなりの負荷がかかっています。

なので、ここも乾燥しないように、色が薄いままにならないように、きちんとクリームで色と栄養を入れてあげましょう。

この時に、隙間だけでなくコバ(底材の側面)の色抜けも一緒に補色してあげて下さい。

あまりにコバが荒れている場合は、専用のコバインクや紙ヤスリでしっかり整えてあげる必要がありますが、その行程はいずれご紹介しましょう。

つまりは、当店のようにペネトレイトブラシではなく、"素手で直接クリームを塗布する場合"は、このようにコバ用ブラシが必要になる訳です。

そこで、私が選んだのが
江戸屋豚毛歯ブラシ」。
江戸屋さんからは、木柄を使ったコバ専用ブラシも出ているのですが、値段と使用面から、私はコチラを愛用しています。

木柄の方は1本1728円なのに対し、こちらの豚毛歯ブラシは432円と、1/4の値段で買えます。

肝心の使い勝手としては、
このように、柄がカーブしているので靴のウェスト部のくびれに沿いやすいのと、、
この先端の形状が、さらに隙間の奥まで毛先を届きやすくしています。

この写真を見ると、先端側の毛先が少し長めに設定されているのが分かりますよね。
(本来は、奥歯を磨きやすくする為の仕様)

ウェストが内側にグイっと絞っている靴だと奥まで毛先を入れづらい場合もあるのですが、このちょっと長い毛先がそれをやり易くしてくれています。

また、ブラシの柄が毛先の植わっている部分から殆どはみ出してないですよね?

ココが重要なポイントで、
必要以上に柄がはみ出しいたり、角張ってる柄だと、アッパーのウェストに柄が当たって思わぬ傷をつけてしまいます。

その心配がこの歯ブラシには無いので、安心して使えるコバブラシとしてオススメです。


次の便利グッズがこちら。
よくカメラのレンズのクリーニング等に使われるシリコン製のブロアーです。

これは、こんな風にして、、
靴の先端に溜まったホコリを吹き飛ばすのに使えます。

実は、靴のつま先って結構ホコリが溜まりやすいんですよ。
玄関に脱ぎっぱなしの状態でしばらく履いていないと、履き口からホコリが入っていきますよね?

次にその靴を履く時に、足を入れるのと同時につま先の方にそのホコリを押しやってしまうんです。
一回の量は僅かでも、それが積み重なれば、気づいた時には結構な量に…(汗)

たまには溜まったホコリを掻き出してあげると、より気持ちよく履く事が出来ますし、1本用意しておくと色々と便利ですよ。


さて、私が愛用している靴磨き道具紹介は
、今回で一通り終了しました。

しかし、このまま終えてしまう前に、番外編として「道具を手入れする為の道具」というのを次回紹介してこのシリーズを締めくくろうと思います。

それでは、最後までお付き合い下さい。
こんにちは、梶原です。

いきなりですが、皆さんは靴磨きの道具って普段どこに仕舞われているでしょうか?

空いた靴箱ですか?玄関の靴棚の中?
それとも、その辺に出しっ放し?(笑)

靴磨きが趣味になってくると、徐々にブラシやクリームにも凝りだしてしまって、それを仕舞う場所にも困ってきますよね。

そもそも靴磨きが好きな方は、所有している靴の数も多いでしょうから、既に靴棚はいっぱいになっている事でしょう。

靴の空き箱で代用しようにも、それでは出し入れが不便ですし、その辺の道具箱だとブラシ等が綺麗に収まらなくて、上手に収納出来なかったり…。

今回は、そんな悩みを抱える方にオススメの"靴磨き専用道具箱"をご紹介します!

このオレンジ色のBOXが、私が愛用している道具入れであり、鞄でもあります。

この箱の正体は、セレクトシューズショップである"Trading Post"さんが別注した「タイムボイジャー」のシューメンテナンスボックスです。

TIMEVOYAGERとは、
1942年創業の安達紙器工業さんが展開するトロリーバッグのブランドです。
新潟県長岡市にある自社工房での製造に拘り続け、職人の手仕事が入る事で生まれる鞄には、それを使う人のことを考えた工夫が随所に込められています。

この鞄に使われているのは「バルカナイズド・ファイバー」という素材で、別名ヴァルカン・ファイバーとも呼ばれる木材パルプを原料にした…言わば紙に何層ものコーティングを施した素材らしいです。

その特徴は、"軽くて頑強"。
これに道具を一式詰めて、何度も地方に出張に行っていますが、BOXや中の道具が壊れたりなんて事は皆無です。

実はコレ、旅行鞄で有名なグローブ・トロッターと同様の素材で出来ています。
だからなのか、造りも似ています(笑)

お客様からは「それはトロッターの鞄?」と良く尋ねられるのですが、私が意図的にトロッターのデザインを真似て少しだけ手を加えています。

というのも、元々このBOXの角の補強革はヌメ革(素上げ)の状態でした。
それを濃茶に染色した後、WAXで磨きを掛ける事でより自分好みの見た目にし、そして傷にも強い仕様にしました。


蓋を開けるとこんな感じになっているのですが、中身も少しだけイジってあります。
なんと、中は3段BOXになっています!

本来最上段には、ペネトレイトブラシが6本ほど入るように便利な枠組みが固定されていたのですが、私はより多くのブラシを入れる為にわざと外しました(^^;

おかげで10本ものブラシがきっちり入る仕様に変えてあります♪
このシューケア道具にピッタリな収納力こそが、このBOXのすごいところ!

靴ブラシが綺麗に収まるように、きちんと考えられています。(中段に入れるのはブラシだけでなくクリームやWAXでもOK)

レデッカーは普通のブラシよりも一回り大きいのですが、まるで誂えたかのように"ピッタリ"収まります。(※逆にレデッカーよりも数mmでも長ければ入りません)

そして、下段はさらにタップリ入るようになっているので、写真のように詰めてもまだまだ余裕があります。
とは言っても、あまり詰め込み過ぎると紙製の鞄とは言え、さすがに重いです(笑)

これだけ綺麗に収まる鞄があると、出し入れも持ち運びも楽なので、道具が散らかる事もありませんし、好きな時に好きな所で靴磨きが出来ます(^^)

さて、気になるお値段ですが、私が購入したモデルはたしか3万円ほどしました。
色は結構豊富なようで、全部で7色あるようです。
決して安くはありませんが、デザインも機能性も素晴らしい逸品なのは確かです。

私も出張に行って思ったのですが、これを持っていると何より格好がつくので、靴磨き職人としても様になります(笑)

気になる方は、一度Trading Postさんで現物を見てみるのが良いですよ。
きっと物欲をそそられる事でしょう♪

最後に、おまけ。

私の自宅用の江戸屋ブラシ(新品時)はこんな箱に入れてあります。
この入れ物は、むかし父からプレゼントとして送られたコロンブスのシューケアボックスを使っています。こちらも誂え品のようにピッタリ収まっていますね(笑)

まるで、こういうセットとして売られていてもおかしくないレベルです(^^;

結論としては、お手持ちの入れ物で上手く活用出来るものがあれば、それを使うも良し。
道具が多過ぎて困っている方は、新たに専用ケースを用意するのもまた良し、って事ですかね。

さて、そろそろ仕事道具紹介シリーズも終わりに近づいてきましたが、次回は"こんな使い方も出来る"便利な道具類をまとめてご紹介する予定です。

それでは、また次週もお楽しみに。
こんにちは。

さあ「靴ブラシ編」も今回でラストです。

磨き用ブラシについては前回までで一通り終了し、今回は残りの「ホコリ払い用」と「仕上げ用」のブラシについて紹介していきます。

まずは、ホコリ払い用の馬毛ブラシから。
写真左が江戸屋(柄の長さ13.5cm)、右がレデッカー(16cm)です。

大きいブラシの方がササッと全体を払うのには楽なのですが、細かい部分のホコリもしっかり払うにはこの位のサイズの方が取り回しが良くてオススメです。

磨き用とホコリ払い用とでは、両方とも"馬毛"を使ってはいますが、その"種類"は異なります。

それは前回お話した通り、ホコリ払い用には馬のを使用するからです。

ホコリを払うには尾毛ほどのコシは必要ありません。
むしろ柔らかいタッチで、表面及びアッパーとコバの隙間の汚れを掻き出せれば十分なのです。

では、ホコリを払ったり、狭い部分の汚れを掻き出すには何が大切か…

それは、"毛足の長さ"です!

試しに想像してみて下さい。
同じ硬さの毛を使用した毛足が"1cmのブラシ"と"5cmのブラシ"とでは、どちらの方がホコリを払い落としやすいでしょうか?

答えは当然、"5cm"の方となります。

毛足が長ければ、その分だけ毛全体を使って払える(可動域が広がる)ので、アッパーを撫でれば"表面を沿うように"毛が動き、その結果一度に払える面積も広がります。

そして、長い毛先はコバ周りの狭い所にも入るので、効率的にホコリを払うにはある程度長さがあった方が望ましい訳です。

では、どのくらいの長さが靴ブラシには適しているのでしょうか?
例えば磨き用ブラシでは、馬毛でも豚毛でも2cm~2.5cmに設定されている場合が多いです。

基本的に、ブラシは毛足が長くなるにつれて表面を擦る力は弱くなるので、コシのある馬毛ブラシに仕上げるには、この長さのまま植毛密度を高くする必要があります。

毛の密度が高いからこそ、江戸屋やレデッカーは馬毛なのにクリームを伸ばせる訳です。

逆に豚毛は毛質自体が元々硬めなので、ビッシリ植える必要はありません。
敢えて毛束同士の間隔を確保することで、ブラッシング時に毛が動くようにし、クリームをより伸ばしやすくしています。

では、ホコリ払い用はどうでしょう。
こちらは、さらに長めの3.5cm~4cmが多いですね。

ホコリ払い専用靴ブラシとして、サフィールやコロンブス等から20cm超の柄を使った特大ブラシが出ているのですが、これらの毛足も4cm程度です。(前々回お話した例外サイズのブラシの一つでもあります。)

ちなみに、写真の江戸屋も4cm、レデッカーは3.5cmの毛足です。
磨き用ブラシよりも毛足を長く取った分、よりギッシリと植える事でホコリを逃さず、必要にして十分なコシを備えています。

さらに、レデッカーには他のブラシには無い工夫が施されています!
その工夫というのが、この毛先を縦に細かく切り込んだ「スプリット加工」。
これにより、革へのアタリが更にソフトになる上、ホコリをキャッチしやすくなっています。

この加工がある分、ホコリ払い用に限れば江戸屋よりもレデッカーに軍配が上がると言えるでしょう。

では次に、山羊毛ブラシについて。
山羊毛は、馬毛や豚毛と比べはるかに柔らかく、そして細い毛材です。

主な使い方としては、
靴の甲やサイドといった、つま先や踵のように固い芯材が入っていない部分にも、自然な艶感を出す為に使います。

つま先~踵までの艶が自然と繋がるようにWAXを塗り、山羊毛の毛先に水を付けて優しく素早くブラッシングしていきます。
両者を比べると、江戸屋の方が毛の密度が高いのが分かります。
より細い山羊の毛をこの密度で植えるられるのは、"手植えならでは"です!
毛足も江戸屋は2.7cmと、レデッカーより5mm程長めですね。

山羊毛ブラシと言えば、先駆者である江戸屋のイメージが強いですが、2013年にはコロニルからも販売が始まりました。

日本での発売に先駆け、本国ドイツで売っているのを観光中に偶然見つけた当時の私は、喜び勇んで買って帰ったものです。

余談ですが、
その時の目的は、日本の半額以下で買える「ディアマント」を買い溜めするつもりだったのですが、これが中々見つからず
似た物を買って帰ったら、それが後にリニューアルされる「シュプリーム」だった、なんて出来事もありました(笑)

現在市販されている山羊毛はコロニルとR&D社の物があり、値段はどちらも3000円程ですが、コロニルの柄は14.5cmとだいぶ小振りで、R&Dの物は毛と柄の質感が少々安っぽい印象があります。

やはり、山羊毛においては手植えの江戸屋に一日の長があるのは確かなのですが、レデッカーの毛質も中々です。
さらに、このサイズの山羊毛ブラシが3500円という良心価格で、かつ磨きブラシと同様の柄で造られているので、「レデッカーで一式揃えたい」という方にはオススメの一品です。


さて、これで一通り靴ブラシの紹介は終えましたが、いかがでしたでしょうか?
正直、靴磨きに興味の無い方には、まるで面白味の無い内容だったかと思います(笑)

私は長く付き合える仕事道具として「レデッカー」を選びましたが、恐らくレデッカーの靴ブラシを使っている靴磨き職人は私ぐらいのものでしょう(^^;

ですが、他の靴ブラシとの比較を重ねる中で、そのコストパフォーマンスの高さ、実用ブラシとしての完成度の高さについてはご理解頂けたかと思います。

実はレデッカーには、ヤク毛ブラシ等他にも面白い物があるのですが、それはまた別の機会にご紹介しますね。

それでは、長々と続いた「靴ブラシ編」の次は、それらのブラシを入れる"鞄"についてご紹介しますよ!

次週も乞うご期待!
こんにちは、梶原です。

今回で「靴ブラシ編」も3回目に突入ですが、もうしばらく続きます。

さて、今回は「江戸屋」の馬毛ブラシとレデッカーの馬毛ブラシを比較しましょう。
この写真だと、大きさや柄の形状の違いに目が行きがちですが

江戸屋と他の靴ブラシとの決定的な違い、

それは
"職人の手により植毛されているブラシか、
そうでないか"

コレです!

基本的に、一般に販売されている靴ブラシは全て機械植えで作られています。

とはいえ、同じく老舗である平野やレデッカーでも職人による手植え製法の技術は今なお受け継がれており、洋服ブラシや一部の靴ブラシに限り採用されています。

ところで、
「そもそも"手植え"ってどういうもの?」
そう思われている方もいらっしゃると思いますので、ここで平野ブラシさんの貴重な映像を紹介させていただきます。



この動画でご覧いただけた通り
手植えとは、"刷毛職人の方が絶妙な量の毛束を引き線でまとめ上げ、柄に空けられた穴に通し植え付けていく製法"だという事が分かりますね。

手植えだと多くの時間と手間が掛かりはしますが、一つ一つの穴にぎっしりと毛材を詰める事が出来、全ての穴が引き線でしっかり繋がっているので、機械植えよりもずっと頑丈で毛が抜けにくいのです。

ちなみに、そのブラシが手植えブラシかどうかは、柄の天面を見れば分かります。
手植えの場合は、植毛後、引き線を整えた後に蓋が閉じられるので、柄の天面は釘やネジで留められています。

機械植えの場合は、穴に機械で毛材を打ち込んで固定するので、蓋は要りません。
なので、柄の側面に継ぎ目が無いんです。


さて、手植えについての説明が長くなりましたが、本題に戻りましょう。
この写真を見る限り、両者は毛の質感がだいぶ似ていますよね。

ここで重要なのは、ただ見た目が似ている事ではなく、「毛質がしっかりしているかコシがあるかどうか」です。

一口に馬毛と言っても、ブラシに使われる馬毛は、主に(たてがみ)と尻尾の毛に分けられ、その毛質も違ってきます。

は柔らかくしなやかで、比較的長めの毛材ゆえ、ホコリ払い用に向いています。

尾毛は鬣よりもしっかりしたコシがあり、かつ革へのアタリは柔らかいので、磨き用ブラシに適しています。長い状態での入手が難しいので、鬣よりも貴重です。

そもそもクリーム伸ばし用のブラシは、そのコシの強さから"豚毛"が定番で、革へのアタリもしっかりしているので、ガシガシとブラッシングする場合に適しています。

つまり、いくら尾毛とはいえ豚毛にコシの強さでは敵わないのですが、我々の仕事ではデリケートな皮革の靴を扱う事もあるので、それを踏まえればソフトなアタリ適度なコシを兼ね備える尾毛の馬毛ブラシは非常に万能な訳です。

そして、江戸屋の馬毛ブラシは、そんな尾毛をふんだんに手植えしてあるので、そんな万能さと毛の抜けにくさを併せ持つ、まさに極上の靴ブラシと言えるでしょう。

さらに、江戸屋の特徴である「13.5cm×5.3cm」の小判型の柄は小さい分取り回しが良く、摘まむ様に持つのも良し、鷲掴みにして持つのにも楽な形です。

この形は、小まめに向きを変えながら細かくブラッシングするのに適しています。
なので、弊社の基本的な磨きスタイルよりも、テーブルの上や膝の上で磨く場合にその使いやすさを実感出来るでしょう。(私が自宅用に江戸屋を選んだ理由の一つです)

しかし、誠に残念ながら、そんな江戸屋さんの手植え靴ブラシは販売中止→再販→中止を繰り返しながら、ついに今年の5月をもって販売を一時終了してしまいました。

販売再開の見込みが立たない現状で、あの江戸屋に代わるブラシはないものか?

そこで、満を持して登場するのが「レデッカーブラシ」な訳です!!
これは、今年の1月頃から使い出した私のレデッカー達。

約8ヶ月間、仕事レベルで使ってきましたが、全くもってヘタりません。
江戸屋と違い機械植えなのですが、十分過ぎる程ぎっしり毛が植えられており、ほとんど抜け毛が起きません。

この点は、平野も同様で素晴らしいです!
が、平野の馬毛は茶色の毛をそのまま使用しているので、使うクリームによる色分けにはちょっと向きません。
後、平野馬毛は鬣を使っているのか毛質は柔らかめなので、よりデリケートなブラッシングorホコリ払い用に向いてます。

その点レデッカーは葦毛(あしげ)を使っているので、色分けがしやすくオススメです。
コシの強さは、江戸屋と交互に比べるとさすがに違いは感じますが、その差は本当にわずかであり、充分なコシがあります。

巷では、コロニルの馬毛ブラシが価格の割りにコシがあると言われているようですが(私も以前はそう思っていました)、毛質はレデッカーの方が上です。

だからこそ、未だに信じられないのですが
購入先の「葉山セレクト」さんの紹介文によると、コレ、鬣を使用しているらしいんですよ(汗)
どう見て、触って、比べてみても、間違いなく尾毛だと私は思うんですけどね…。

いずれにせよ、毛質については江戸屋にも引けを取らないレベルだと断言出来ます!

このクラスのブラシを探している方には、十分検討に値する品だと思いますよ♪

以上が、江戸屋とレデッカーを比較する中で私が気づいた点です。

さて今回は、前回述べた柄のサイズ形状の他に毛の種類値段を踏まえ、
江戸屋平野レデッカーの3社の中から、自分にはどの靴ブラシが合いそうか、
その選び方のポイントを紹介して締めくくりたいと思います。
(江戸屋は今は買えませんが参考までに)

・江戸屋の小判型の柄(サイズ)が好きな方
1(=ガシガシクリームを伸ばしたい)→江戸屋手植え豚毛ブラシ
2(=デリケートな革にも使用したい)→江戸屋手植え馬毛ブラシ

・小判型は手に合わないor細長の柄の方が好きな方
1→平野豚毛ブラシ(江戸屋豚毛よりも硬く、コシも強い)
2→レデッカー馬毛ブラシ(江戸屋馬毛並みのコシと、他にはないサイズと形状)

~上から値段が高い順~(全て税込み価格)
江戸屋手植えブラシ→5,184円
平野豚毛ブラシ→4,536円
レデッカー馬毛ブラシ
    19cm→2,800円
    16cm→1,400円
コロニル→1,296円(参考価格)


これまで、この価格帯の靴ブラシを比較した記事ってあまり無かったと思います。

もしこれからブラシを買い揃えるなら、長く使える上質な道具選びが肝心です。
なので、この記事が少しでも皆さんのブラシ選びの助けになれば幸いです。

それにしても、値段も踏まえるとレデッカーの16cmが相当コストパフォーマンスが高いと言えそうですね。
もっと大々的に販売すれば、コロニルに取って代わる日も近いかもしれません。

さて、今回も大変長くなりましたが、次回で「靴ブラシ編」は最後になる予定です。

次回のテーマは、「ホコリ払い用ブラシ」と「山羊毛ブラシ」について、それから今回触れられなかった"毛足の長さ"についても書こうと思います。

それでは、また来週(^^)
こんにちは。

今回も"仕事道具紹介シリーズ"、やっていきます。

前回に引き続き「靴ブラシ編」として、REDECKERシューズブラシの実態に迫っていきましょう。
私が使用しているブラシは、左から
ホコリ払い用 馬毛ブラシ、
クリーム伸ばし(磨き)用 馬毛ブラシ、
仕上げ用 山羊毛ブラシ、の3種類です。

今回紹介するのは、
写真中央の「磨き用 馬毛ブラシ」

同じくドイツ製馬毛ブラシとして、そのコストパフォーマンスの高さで知られる"コロニル"のブラシと比較しながらご紹介していきましょう。
まず注目したいのが、その"柄の大きさ"!

こうしてみると分かりにくいですが、縦に並べてみると、
その長さ、なんと"19cm"!!

ここでほとんどの方は、「え?それって長いの?短いの?」と思われるでしょう。

実は、各メーカーが出しているブラシの最大サイズは「18cm×5cm」がほとんどなのです。

もちろん、これより小さいサイズのブラシはたくさんあるのですが、コレを超えるサイズはまず無いです。(一応例外もあるので、それについては次回辺りに触れます)

比較対象のコロニルの場合は、長さは17cmと少し短いですが、幅は5.5cmと平均を上回ります。

しかし、レデッカーは長さ19cm×幅5.5cmと、市販ブラシの平均サイズを縦横ともに上回ります!

ここで念の為申し上げておきますが、決して大きい方が偉い訳ではないですよ(^^;

ただ、この手のブラシにおいて、このサイズは珍しい!という事です。

ブラシが大きいと毛が当たる範囲が増えるので、一回分の手のストローク量が減り、効率良くブラッシングが出来るというメリットがあります。

あくまで私の好みですが、これが弊社の靴磨きと相性が良いと考えています。

お客様がお履きの靴を、座った状態で磨くスタイルでは、ブラシを直線的に(前後に)動かす事が多いので、長くて幅広のブラシの方がやり易いと感じています。

続いてブラシの形状について
ブラッシングのしやすさを考え、両者とも弧を描いていた形状になっているのですが、両者の"柄"には下記のような違いがあります。

・コロニルは、"柄そのもの"をゆるやかなアーク(円弧)状にしてある。
毛先はまっすぐ気味。

・レデッカーは、"柄の背面は平ら"で、"毛が植わっている部分"をよりハッキリとアーク状にしてある。
毛先もきちんと弧を描いている。

(※上記のコロニルの柄の特徴は、平野ブラシにも当てはまります)

正直、柄の形状による持ちやすさは好みが分かれると思いますが、個人的に靴のウエスト部分のブラッシングではレデッカーの方が気持ちやり易いかと思います。

さらに!柄の"フチ"の仕上げが、両者では大きく異なります。

コロニルの方は柄の縁(天面と側面の角)を残しているのに対し、レデッカーはしっかり角を丸めてあります。

加えて、オーバーハング(車好きの人には伝わるかな?)とも言うべき、「柄の一番端から毛が植わっている穴(根元)までの長さ」。

それがレデッカーに対してコロニルや平野はやや長め=柄が余り気味になっています。(柄の形状的に仕方ないのかも)

仮に毛足がもっと短いブラシの場合、柄のはみ出しが大きいと"柄の縁が靴に当たって傷が付く"なんて心配も考えられます。(余程雑な扱いをしなければ、普通は起こりませんけどね)

なので、なるべくなら柄は角は落としてあり、余り端が少ない物の方が安心して使えると思います。

さらにさらに言うと、

これは私の過失なのですが…
角張った柄だと、落としたりぶつけたりしてしまうと、結構簡単に色が剥げてしまいます(汗)

平野ブラシの柄はコロニルよりもしっかりしていますが、同様に削れてしまっている物を見たことがあるので、起こらない訳ではないのでしょう。

その点、レデッカーは柄をニスでしっかり塗装してあるので、ガンガンぶつけてしまっても、びくともしません(笑)
なので、長年の使用にも良い状態のまま、しっかりと耐えてくれそうです。

しかし、そんなレデッカーブラシも良いところばかりではありません。

それは、「重さ」!!

3社とも柄にはブナ材を使っているようなのですが、コロニルや平野は至って軽量なのに対し、レデッカーは重めになっています。

まあサイズが大きいので、それはそうなんでしょうけど、明らかに重量に差を感じられますね。(塗られたニスの分等も関係しているのでしょうか?)

もちろん使用に支障をきたす程の重さではないので、ドイツさながらの「質実剛健な造り」といったところでしょうか(^^;


さて、今回は長くなりましたが、

結果、私の結論としては「自分の手に合ったブラシ選びが肝心」だと考えています。

手が小さめの方や女性には大きいブラシは扱い難いでしょうからね。

実はそんな方向けに、レデッカーには19cmの他に16cmサイズのブラシもあります。

私が使っている赤い柄のブラシは、私がお世話になっている「葉山セレクト-Innocence」さんの別注品でして、16cmの方は他のお店でも取り扱っているようで、そちらの柄は赤ではなく無塗装のブナ材のようです。

ここまで書くと「レデッカーの回し者か」と勘違いされそうですが(笑)、私は愛用者の一人として、レデッカーの"道具として細部まで拘った出来"に惚れ込んでいるだけですので、悪しからず。

最後に、繰り返しにはなりますが、
今回のポイントは、自分にとって
手に馴染むサイズ
ブラッシングしやすい形状
かどうかなので、そこをお忘れなく。

例えば、平野ブラシの18cm×4.7cmという細幅なサイズは、スマートで握りやすいと評判ですし、毛質も申し分ないですからね♪

さて、次回は更に突っ込んで「江戸屋ブラシ」との比較を交えながら、ブラシの"毛質""毛足の長さ"について語りたいと思います!

それでは、次回もご期待下さい(^^)