結 2
少しだけ気になりましたが、下から結が痛がる声が聞こえ、僕は部屋に戻ります。
「…………はぁ」
いすに座り開け放った窓までずらして、窓に身を乗り出して涼みました。
寝るには早すぎる時間でありながら、すでに寝ること以外にすることがありません。
しかし、僕はウトウトとまどろみに包まれ、視界に入っていた町が徐々に変わっていきます。
夢なのか、脳裏にはある光景が映し出されました。
歪みきった世界で、一人の少女が僕と話しているのです。
先に、僕の声が彼女にこういいました。
『あのね。わがままを言わないでくれないか?』
『私がわがままを? それは失礼』
『お、怒っていないか?』
『そんなわけ……それにしてもあなたが―――ガガァ』
『またその話か。お願いだから、僕のいうことを聞いてくれ』
『いつだって聞いています。わた―――ガガァァァ―――とでも?』
『そうじゃなくて……ほら幼馴染と―――ガァ―――』
『ガァァァ―――ません。あなたも私を裏切っ―――ガガガァ―――』
『違う! ガガァ―――くは、君のことが好きだか、か、ガガァ:―――』
『ガガガァァァァァァァァァ―――』
『ガガガガガガァ―――』
ブツン、
「っ!?」
僕は頭を上げました。
途切れていた記憶の中で、僕は確かに……誰かに告白をしていたのです。
しかし、顔も名前も思い出せません。
それはこの『悪夢』の世界に居るのか。
それとも僕の世界ではいなくなっている存在なのか、わかりませんでした。
かつてない記憶障害の煩わしさに、僕は狂ってしまいそうです。
しかし、今更こんなことで悩んでいる場合ではありません。
三日後の体育祭ではこの『悪夢』を断ち切り、人として……現実を歩んでいくためにやらなければならないことがありました。
この世界を破壊する覚悟。
もし、この夢が壊れたら二度とこの夢には戻ってくることが出来ないのでしょうか?
それなら、再構築するまで……まるでもう一人の僕が語りかけてくるような、そんな思考がめぐりました。
〔つづく〕
登場人物
草薙 香 主人公
草薙 結 転校生 萩丸結が香の妹になる
夢の中の女性
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