(12月16日 ) 3
~深夜・自宅・自室~ 3
僕の手札は全て結に渡したため、一枚もありません。
そして、結がカルタを読み上げます。
「参りますぞ……わらで作った弟の家」
「(リアルに悲しいな!) そこ!」
僕は素早く.カルタの絵札に手を置き、自分のものにしました。
すると、その上から詩織の拳が振り下ろされます。
「せぇ!」
「うぉ!?」
ガンッ、
僕は手を引っ込め、絵札を奪取しました。
そして、詩織の拳が床に叩き込まれ、物々しい音を響かせます。
そして、詩織が自分の拳を引っ込め、反対の手で撫でました。
「ふぅ……わずかに遅れましたか」
「普通に出来ないのかよ……」
思わずツッコミます。
すると、真央が左をパタパタと上下に振りました。
彼は自分の腕の五割り増しの長さである袖の寝巻きを着ています。
おかげで、袖の先端が封印されているようにも見えました。
しかし、右腕は手首までの長さ。
明らかに不良品だと思いますが、アンバランスな服も可愛らしく見えるのが僕の見解です。
そして、彼は左手を大人しくさせ、右手を絵札の上にかざしました。
「うね神様の超能力を引き出してみせるの」
「(うね神様!?) あ、頭は大丈夫か? 真央」
よく分かりませんが、スワローの神様に並んで胡散臭い神様が登場しているようです。
すると、彼はつぶやきました。
「次の絵札は……この部屋の中にあるの!」
「それは当然だろ! 今までに部屋の外にあったか!?」
ある意味、彼も汚染されていることを否めません。
それは詩織でも結でもなく、なぜかあゆみに近いような気がしてなりません。
そう考えていると、結があくびをします。
「ふ……ふにゃあぁ~。眠いのでござります」
「やる気出すって言ったばかりなのに……でも、これ以上の夜更かしは難しいな。各自、部屋に戻って寝るか」
僕が三人に指示を出すと、詩織がカルタをまとめ始めました。
すると、正面に居た真央が僕に飛びついてきます。
「ボクはお兄ちゃんと寝るの。いいの?」
「あ、ああ。いいよ」
今更ながら、彼は僕に確認を取ってきました。
いつもは黙って隣に寝ているのですが、改めて言われると可愛らしいものです。
しかし、結と詩織は黙っていません。
先に結が発言しました。
「私も兄上に寝取られたのでござります!」
「(何ゆえ過去形!?) ひ、人聞き悪いだろ。お前と一緒に寝るときは、必ず詩織もいただろうが」
どこで覚えたかも分からない言葉に、僕は動揺を隠せません。
すると、詩織も続けて発言します。
「仕方ありません。私も今日だけは寝取られましょう」
「いやいやいや! 意味分かっていないだろ! 人聞きが悪いからな」
彼女の様子を見ていると、結も意味が分かっていないような気がしました。もちろん、僕も深い意味が分かっていないことにしておきましょう。
〔つづく〕
登場人物
草薙 香 主人公
草薙 詩織 香の妹 双子の姉厳格で気丈 中等部 二年
草薙 結 香の妹 双子の妹 のん気で明るい中等部二年
大根 真央 香の従兄弟、両親は他界 小等部三年
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