指揮:飯守泰次郎

ピアノ:田部京子*

 

ベートーヴェン:

プロメテウスの創造物 序曲 op.43

ピアノ協奏曲 第3番 ハ短調op.37*


(アンコール)

メンデルスゾーン:

無言歌集 第2集から「ベネツィアの小舟」


メンデルスゾーン:

交響曲 第3番 イ短調 op.56「スコットランド」


もう数ヶ月間、ナマの音に飢えているわけで、いろいろな制約の中、公演に漕ぎ着けた東響と出演者の努力と熱意には、本当に感謝と畏敬の念を禁じ得ない。友人の一人が今の状況を、「音枯れ」と言ってましたが、演奏会があると聞いて、飢えてうろつくWalking Deadのように、運動不足で弱った足腰を呪いながら、サントリーホールへフラフラと吸い込まれていく…。


元々はスダーン他の出演者のプロだったが、当然、来日できずに交代。プログラムには変更なし。


観客が半数に抑えられているからか、音がよく響く。オケはおそらく10型だと思うが、その割には、うるさいくらいに音が鳴る。奏者同士のいつもと違う間隔、マスクをつけたままの演奏、よく響くホールといったNew Normalに慣れるには、演奏者、聴き手ともにしばらく時間がかかるのでは、という感想を持った。最上の時の東響に感じる、精緻で透明なアンサンブルを当日は楽しむことができなかった。今後に期待したい。


田部さんのピアノは、リズムが清潔で聴いていてとても心地がよい。この人の弾く同じ作曲家の1、2番も聴いてみたいと思わせる演奏。


メインのメンデルスゾーンになっても、演奏に対しての感想は変わらない。時に素晴らしいチェロのピチカートや木管の妙技に魅了されるも、金管の驚くような強奏やアインザッツの乱れは、やはり通常と勝手の違う演奏環境と長期間のブランクによるものだろうか。


まずは久しぶりに生きた音を愉しむ機会を得られたことに、素直に感謝したい。一方で「新しい通常」への対応には、思っていた以上に課題が多いことを、あらためて思い知らされた気がする。慌てても仕方がないので、お互いゆっくりやっていくしかない。