男2女2の4人掛け合い台本

 

小笠原秋:♂理子を好きだったと理子が死後に気付き塞ぎ込んでいる男の子
木下理子:♀交通事故により死んでいる少女
霧島直哉:♂お調子者で雫に気がある。秋の良き理解者
青葉雫:♀しっかり者で理子の親友。秋に好意を持っているが隠している。

 

秋N「これは、クリスマスに起こったサンタクロースのプレゼントだったのではないかと思う。俺は不思議な体験をした」

 

直哉「それでさ、クリスマスに雫とお前とで集まろうかって話してんだけどよ秋は予定とか大丈夫か?」

 

秋「俺はいいよ。せっかくのクリスマスだし雫と二人で過ごしたらどうだ?」

 

直哉「それじゃ意味がないんだよ。理子も入れて4人で集まりたいんだよ」

 

秋「……っ。理子は…理子は……もう、いないだろ……」

 

直哉「分かってるよ。それでも俺ら4人は一緒だったじゃないか」

 

雫「いつまでも引きずってんじゃないわよ。秋」

 

秋「雫っ……。直哉が呼んだのか?」

 

直哉「あぁ。俺らは、いつも4人だったろ?だから、雫も呼んどいた」

 

秋「ごめん。俺……帰る」

 

雫「直哉とは会えても私とは会えないのかしら」

 

直哉「雫…辞めておけ。秋も心の整理が付いてないんだろ」

 

秋「ごめん。俺が悪かった……雫も直哉もごめん」

 

直哉「いいよ。俺は昔みたいにお前も一緒につるみたいだけだから」

 

雫「私だって同じよ。秋まで居なかったらコイツと二人よ?勘弁して欲しいわ」

 

秋「雫…それは直哉が涙目になってるから」

 

雫「知らないわ。私は理子が居て秋がいて、ついでに直哉が居る4人での空間が好きだったのよ。理子が亡くなった今は、4人での空間は出来ないけど……心の中には、理子が居るから3人で居たのよ」

 

直哉「俺もだぜ?俺は、秋も雫も…もちろん理子も好きだからな」

 

秋「そう…だな。俺もお前らと居るのは好きだ」

 

直哉「それじゃ、クリスマスは……」

 

秋「あぁ。行くよ…」

 

雫「うん。それでこそ秋よね。24日楽しみにしてるわ」

 

秋N「直哉と雫の誘いに俺は救われた気がした。理子を失った日に俺は気付いた。俺は理子の事が好きだったんだ。気持ちを伝える事も出来ずに俺は失恋をしてしまった。それから失意に落ち、直哉とも雫とも疎遠にしていた。直哉と雫の好意が凄く温かかった」

 

直哉「よぉ。来たか。今日くらい辛気臭いのは無しな?」

 

秋「分かってるよ」

 

雫「あら?男性陣の方が早かったみたいね。お待たせしたかしら?」

 

秋「大丈夫。俺も今来たところだから」

 

直哉「さぁて、店に入ろうぜ?ちゃんと準備しているから」

 

雫「直哉の準備ねぇ。大丈夫かしら」

 

直哉「おい!少し失礼だろ」

 

秋「失礼じゃないと思うがな?」

 

直哉「うぉぉぃ!秋までかよ」

 

雫「さ、直哉をほっといて行きましょうか」

 

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秋「直哉にしては、しっかりセッティングされてたな」

 

雫「そうね。直哉にしてはね」

 

直哉「おい、雫。それは誉め言葉として受け取ってもいいのか?」

 

秋「いや、ダメだろ」

 

理子「そうだよ。秋も雫も直哉に優しくしようよ」

 

直哉「そうだよね!理子ちゃ……は?」

 

秋「はぁっ!?」

 

雫「嘘っ……」

 

理子「ん?どうしたのみんな」

 

秋「嘘……だろ…り…理子なの…か?」

 

雫「わ…私……夢でも見てるのかしら」

 

直哉「こ…これ……これって幽霊?」

 

理子「幽霊?あぁ、そうだ!私、死んでるんだった」

 

秋「死んでるんだったって……理子らしいな」

 

雫「そうね……なんだか気が抜けちゃったわ」

 

直哉「おいおい…二人共、慣れすぎだろ」

 

理子「へへへ。それほどでも」

 

秋「褒めてないからな?」

 

雫「それにしても、いきなりどうして現れたの?」

 

理子「分かんない。でも、いつもみんなの事を見てたよ?」

 

秋「見てた……のか…」

 

理子「そうだよ。秋は元気無さ過ぎだよ」

 

雫「それは、貴方が……」

 

理子「そうだね。でも、私は元気な秋や雫、直哉が好きなんだもん」

 

直哉「本当に理子ちゃんなんだね……」

 

理子「そうだって言ってるじゃん。直哉、ありがとうね。秋を元気にしてくれて」

 

直哉「別にお礼を言われる事はしてねぇよ。俺は友達としてだな」

 

雫「そうね。直哉は何も特別なことをしていないわ」

 

直哉「雫ぅ……」

 

理子「ふふふ。やっぱこの4人で居るのは楽しいね」

 

秋「そうだよ!4人だから楽しんだ!それなのにお前が……お前が……」

 

理子「そうだね。ごめんね」

 

雫「理子は何も悪くないわ。秋、理子を責めるのは止めなさい」

 

秋「ごめん……」

 

理子「ううん。私が不注意だったってのもあるんだよ」

 

直哉「それは違う。運転手の居眠り運転が原因だったんだよ。理子は何も悪くない」

 

理子「そっか……神様も酷いなぁ…私、悪い事してなかったのになぁ」

 

秋「理子……」

 

雫「そうね。理子も悔しいのね」

 

直哉「だから、こうして現れたって事か?」

 

理子「この世への未練って事?」

 

秋「じゃ、未練が無くならなければ……」

 

雫「それは、ダメよ。理子は居るべき所へ戻るべきだわ」

 

秋「なんでだよ!理子がここにいるんだぞ!このままだって良いじゃないか」

 

理子「ダメだよ。私だって雫が言う通りだと思うもん。私の未練……秋、雫、直哉。元気で幸せになってね?」

 

直哉「理子……」

 

雫「貴方って子は。本当に理子らしいわね」

 

秋「理子!俺は……俺は、お前が好きだ!今でも好きなんだ」

 

理子「あ……秋…。ありがとう。凄く嬉しいよ。だから、私は貴方とは付き合えません。貴方は他に好きな人を見つけて幸せになって下さい」

 

秋「……そうだよな。お前、幽霊だもんな」

 

理子「そうだよ。幽霊とじゃ付き合えないでしょ?ちゃんと幸せになってね?」

 

秋「あぁ。約束するよ」

 

直哉「俺らはずっと友達だから」

 

雫「貴方の分まで幸せになるわ」

 

理子「うん!ちゃんと見てるからね約束破ったら針千本だからね?」

 

秋「千本も用意できるならな」

 

直哉「よし。俺が100本ぐらいなら用意してやるぞ」

 

雫「自分で飲まないようにしなさいよ?」

 

理子「ふふふ。あ、もう時間切れみたいだ。それじゃ、行くね」

 

秋「行くねって……なんか直ぐに会えるみたいな言い方だな」

 

理子「会えるよ。いつだって記憶の中にはみんながいるもん」

 

直哉「理子……」

 

雫「元気でやりなさい。って言うのもおかしな話ね」

 

理子「それでは、木下理子。行ってきます」

 

秋「行ってらっしゃい。理子」

 

直哉「じゃーな。理子」

 

雫「さよなら。理子」

 

秋N「こうして、理子は急に現れて、そして消えた。3人同時に夢を見ていたかの様な気持ちになったが、確かに理子はそこに居た。俺は伝えられないはずの想いを伝えられ前に進む事が出来た。今思えば、これはサンタクロースからのクリスマスプレゼントだったのではないだろうか。俺は、少し恥ずかしい気持ちになったがそう思いたかった」

 

秋「幸せに……なるよ。理子。ありがとうな……」

声劇団体SPICA団員きる姉原案


出演キャラ


杜若 八尋(かきつばた やひろ)♂
宮守 八千流(みやもり やちる)♀
神護(しんご)♂
月海(つきうみ)♀

〈本文〉
月海「ある所に、1人の人間の女の子が居ました。その人間の女の子は、他の人間とは違う。

そう、異常だったのだ。彼女は、傷の治りが異常に早かった。そして、願えば何でも叶った。

人は彼女を、化け物や怪物と罵り、村から追放しました。これは、追放された後の彼女のお話」

八千流M「化け物。怪物……か。私だって、好きでこんな体に生まれたんじゃない!
願う事が、悪い事なの!?傷の治りが人より早いだけ!私はただ、願っただけ……
あ……やっぱり化け物なのかな……」

月海「少女は1人で考えながら、薄暗い森の中を歩いていました。するとそこに、1人の少年と1匹の猫が現れました」

八尋「おや?こんな所に何故、君みたいな少女が歩いているのかな?こんな薄暗い森を1人で歩いていると危険だよ?」

八千流「あなたこそ誰なのよ。何故こんな森の中にいるの?」

八尋「僕は、杜若八尋。この森にいるのは、ここに住んでいるから。さて、僕は答えたよ?君の名前は?どうしてここに居るの?」

八千流「私は、宮守八千流。ここに居る理由は…………から……」

八尋「そうか。八千流、すまないが、理由が聞こえなかったんだが」

八千流「……追い出されたのよ!村を!」

八尋「追い出された?見た目によらず悪い子なのかい?」

八千流「悪い子って何!?私が何をしたって言うの?何もしてないのに化け物扱いされて追い出されて……ごめんなさい。初対面の人に八つ当たりしちゃったね」

八尋「化け物……君も力を持っているのかい?」

八千流「君もって……あなたも何かあるの?」

八尋「僕の力は、植物や動物との対話。後は、水流の操作が出来るんだよ」

八千流「うわぁ……川の水が逆流してる……」

八尋「それで、君の力を教えてくれるかい?」

八千流「私の力は……傷の治りが早い事と……」

八尋「ん?言い難い事なのかな?言い難いのなら聞かないけど?」

八千流「説明し難いし、信じて貰えないかもしれないけど……願いが叶うって言えばいいのかな?証明するのは難しいけど……」

八千流M「お願い!信じて!」

八尋「そっか。うん、僕は信じてあげるよ」

神護「おいおい。俺が見守る八尋に力を行使するのは頂けないなぁ」

八尋「ん?どうしたんだい、神護」

八千流「ね……猫?」

神護「この子の力は、星の力だ。願えば叶うし癒しの力も高い。お前さんよりも使い勝手のいい力だな」

八尋「神護。その言い方は彼女に失礼だ。彼女は、力で悩んでるのだから」

八千流「ねぇ…神護ってのは、その猫の事?何だか会話しているみたいだけど……力ってのを使ってるの?」

八尋「神護は特別だから力は必要ないよ。そういえば、八千流には猫がいないのかい?」

神護「神の力を持ちし人間には、必ず我らの監視が付く。今、この場にも居合わせているはずだ。おい、八尋」

八尋「仰せのままに。森の植物たちよ。我が願いに応えよ。我らの近辺にいる猫をこちらへ」

八千流M「何!?森の木々たちがいきなり騒めき出した……何が起こっているの?」

月海「手荒な呼び出しね。まぁ、この子が力を持つ貴方に遭遇した時点で諦めていたけれど」

八千流「猫が!?猫が喋った!?」

八尋「では、この猫が君の監視役という事だね。僕は、力のおかげで言葉が理解出来るしね。僕は、杜若八尋だ」

神護「なんだ。この子の監視は月海か。何故、力について手ほどきしてやらない?」

月海「神護……私は、この子に力を行使させたくないの。でも、人は願うもの。全く使わないのは無理だったわ」

八千流「猫さん……昔から私を知っているの?ずっと、見てたの?私が、苦しんでるのを見てただけなの?」

八尋「それは、責めてはいけないよ八千流。月海は、君の事を思い願ったから見守ったんだ。苦しかっただろうにね……」

八千流「どうして?この猫が力について教えてくれていたら私は……」

神護「愚かな小娘よ。力の使い方を知った所で消える訳でもなく制御できる訳でもあるまい。結果は同じであったろう」

月海「ごめんなさい。貴女が苦しんでいるのは見ていたから知っているわ。それでも、力に溺れてしまう可能性があったの。私は恐れていたのよ。ごめんなさい」

八千流「……謝られたって……」

八尋「これからは、僕たちと月海が君の味方だよ。もう、一人じゃない」

八千流「八尋……月海ってのが、貴女の名前なのね?私は、宮守八千流」

月海「えぇ。宜しく頼むわね…八千流」

八尋「地の力の僕と星の力の君。同じ苦しみを経験した者同士、仲良くしようじゃないか」

神護「のんびりともしてられないみたいだぞ」

八尋「どうしたんだい?神護」

月海「これって、まさか……」

神護「そのまさかだ。星の力の有能さに気付いた汚れた人間が八千流を欲して探しに来たようだ」

八千流「え?私を欲っしている……」

月海「ダメよ。八千流の力は願い。貴女が願えば世界は滅びるし人間も殺せる。使い方を誤れば貴女は絶望に染まってしまうわ」

八尋「そうだね。その力は危険だ。これからは、僕が君の力になるよ。だから、あまり願い事はしないで欲しいかな」

神護「甘い奴め。八千流の力を当てにしないのであれば、八尋よ。打開してみせろ」

八尋「任せて。植物たちよ。我が願いに応えよ。僕たちを追手から護りたまえ」

月海「上手いわね。護るという願いで追手を近寄せずに煙に巻こうって事ね」

八尋「でも、そう長くは持たないみたいだ。敵は人間だ…植物を断ち切られてしまったら元も子もないよ」

神護「では、早々に移動するとしようか。道は八尋が植物や動物に聞けば何とでもなるだろう。行くぞ」

八千流N「こうして、似た力を持つ少年、八尋との出会いにより行く先も不明な旅をする事になった私たち。
道中で、私達の力は神力であると知った。神の力を持った人間の子は不特定多数いるのだそうだ。私みたいな境遇に合わないで欲しいと淡い期待を持ちながら願い事をした」

月海「……八千流。あんたって子は、どこまでも願いを持った子なのね……」

神護「星の力は強大だ。この子が進む行く末を楽しみにしているといいさ。願いは聞き入れられたはずだからな」

八尋「みんな、聞いて欲しい。この先に悪霊が集中している霊力の高い場所があるそうだ。人間は悪霊に憑りつかれてしまう為に近寄れないらしいんだ」

八千流「そこを避けては行けないの?ここまで来たのに捕まりたくないよ」

八尋「このままスポットに行く以外は、人間が待ち伏せているらしい……」

八千流「そ……そんな……」

神護「いや、このまま進むぞ。霊力くらい神力を持つお前らなら大丈夫だ。逆を言えば、そこの方が安全だと言えるだろう」

月海「危険じゃないかしら。霊力の高さによっては喰われるわよ?」

神護「先の八千流の願い。あれで他の神力持ちは居なくなった。神力が2人の力と同調している。問題ないだろう」

八千流「え……?どういう事?喰われるって……万策尽きたじゃない」

八尋「八千流。今は時間がない。詳しい話は後でするから、先へ進もう」

八千流「は?!この先に進むの!?月海?大丈夫なの?」

月海「ここは、神護を信じましょう。大丈夫だそうよ八千流」

八千流「あー…もうっ!いいわ信じるわよ。行きましょう!」

八尋「神護に代わってお礼を言うよ。信じてくれてありがとう」

神護「ふん。納得したのなら行くぞ」

八千流M「何なのこの場所、空気が淀んだように感じるわ。足を踏み入れるのを躊躇ってしまう…」

八尋「さぁ、八千流。手を貸して?」

八千流「え?なんで?」

神護「なんで……か。クックックッ八尋よ残念だったな」

月海「この子ったら……人の好意に慣れてないのね……」

八千流「好意?八尋、どういう事?」

八尋「いや……気にしないでくれ。とりあえず、この先に入ろう」

八千流N「この時、淀んだ場所に足を踏み入れた私達は暗闇に襲われる感覚がした。まとわりついて離れない黒い霧の様なものに吐き気がした」

八尋「八千流!手を伸ばして!僕の手を取って!」

八千流「八尋!クッ……や…八尋……八尋ぉ……」

八尋「八千流!君の事は僕が護ると決めたんだ!」

月海N「この時、八千流と八尋の手が重なった瞬間の事だ。悪霊の霊力に纏わりつかれていたのに、大きく神力が弾けたように見えた」

神護「大丈夫か?八尋」

八尋「何が起こったんだ?八千流、大丈夫かい?」

八千流「え…えぇ。何が起こったのかしら?」

神護「おい、八尋?」

月海「……神護。これは、力を失ったと見て良いんじゃないかしら?私たちの声は、八千流たちに届いていないし、周囲の霊力が雲散しているわ」

神護「悪霊の霊力を2人の神力が相殺したという事か。得てして2人は普通の人間へと成れた訳か。この世界に神力を持つものが居なくなった訳だ」

月海「八千流の願いが聞き入れられた結果という事かしらね。この後は、どうする気?」

神護「まぁ、八尋や八千流の事は気に入っている。今しばらく2人の行く末を見守るとするかな」

月海N「力を失った八尋と八千流は、その地に住みだして村になり街へと大きくなりました。
悪霊の霊力は雲散しても霊力が集まりやすい場所ではあった為かパワースポットと呼ばれる土地へとなりました」

神護N「私達は、普通の猫ではない。八尋と八千流を見守り続け、悪霊が近寄りそうな時は追い払った。そして、時は流れ……」

八尋「この街は、昔から知っている。本当に大きくなったな……八千流はどうしているだろうか……」

神護「にゃ~ん」

八千流「この街は、昔から知っている。私と八尋で作った村が発祥……八尋はどうしているのかしら……」

月海「にゃ~おん」

八尋「君は、神護なんだね…導いてくれてありがとう」

八千流「あなたは、月海なのね……導いてくれてありがとう」

八尋「また、会えたね。八千流」

八千流「貴方に会えて嬉しいわ。八尋」

原案:声劇団体Spica団員きる姉
編集:声劇団体Spica団員ノコハイ
 
配役
主(あるじ):♂
とも:♀(幼い系が好ましい)
村の子(幼少期):不問
村の子(中年期):♂
ナレーション:不問
 
 
N:ある所に、いつもいつも独りぼっちの男がおりました。
男は、いつまでも独りぼっちでいるのは嫌だと思っており
どうしたらこの独りぼっちの生活から抜け出せるのだろう
かと考えておりました。
考えて、考えて、ある日思いつきました。
いないのなら作ればいいと……
 
主「はぁ…出来た……。共に居てくれる者だから、お前は『とも』だ」
 
N:男は、完成させてしまった。自我のある人形を。
成長する事のない女の子供を模った人形と独りぼっちだった男の物語。
 
とも「ねぇーねぇー!主!このお話はさぁ、男の人が可哀想じゃない?独りぼっちなら
私がお友達になってあげるのに!どこにいるのかなぁ?」
 
主「あはは!ともは、いい子だなぁ。友達になってあげるのかぁ。でもな?
これは、物語だからな?きっとこの男の人も友達が出来たんだろうさ」
 
とも「んー……そっかぁ!なら、良かった!えへへ」
 
主「そうだなぁ。よしよし。
(お前が出来上がって良かったよ……)(小声)」
 
N:こうして、男は独りぼっちから脱却し細々ではあるが、幸せに暮らしました。
でも、幸せはそう続かなかったのでした。
とある日の事、ともは買い物をする為に一人で村へと来ていました。
 
とも「今日は、これくらいで良いかな?主から頼まれたものは全部買えたし」
 
村の子「お前、村はずれにある変なおっさんの所の奴だろ!」
 
とも「主は変なおっさんじゃないよ?」
 
村の子「いつも村には来ないで独りじゃんか!変なおっさんで十分だ」
 
とも「主を悪く言わないで!それに独りじゃないもん。ともが一緒だもん」
 
村の子「お前、人間じゃないじゃん!おっさんに作られた人形の癖に」
 
とも「人形じゃないよ!ともはともだよ」
 
村の子「じゃー、お前のおっかさんどこだよ」
 
とも「おっかさん……そんな人いない……」
 
村の子「ほら、見ろ!やっぱりお前は、人間じゃないんだ人形なんだよ!」
 
N:村の子に責め立てられ、ともは買い物したものを置いたまま走り出し家へと戻りました。
自分は、人形なのか否か……頭の中には、村の子の言葉がぐるぐるとしていました。
 
とも「主!ともは、人形なんかじゃないよね?ともはともだよね?」
 
主「っ……どうして、そんなことを聞くのかい?」
 
とも「今日、村で言われたの……お前は主に作られた人形だって。おっかさんがい ないのが証拠だって……」
 
主「そうか……ともに、おっかさんがいないのは、ともが生まれてからすぐに病気で死んじゃったんだよ」
 
とも「ともにも、おっかさんがいたの?」
 
主「当たり前だろ?ともは人形なんかじゃないんだから」
 
とも「そっか……あ、買い物してきたのに村に置いて来ちゃった」
 
主「そうか。じゃ、俺が取りに行ってやるから待ってなさい」
 
とも「ともも行くよ!」
 
主「俺に任せて、夕飯の準備をしてなさい。いいね?」
 
とも「…はーい……」
 
N:ともを残し村へと向かう男は、穏やかではない顔つき。村の辺境に住む男は 村人との交流を断ち切り
独りぼっちで暮らしていたのには、理由がありました。
男は臆病でした。人との関わりに疑心や欺瞞が溢れている事に嫌気がさしてしまったのです。
それでも、寂しさには勝てず人形を作り上げたのです。疑心も欺瞞もない人間を模った人形を……
 
主「村のみなさん!辺境に逃げ込んだ私を疎むのも無理のない話だ。しかし、あの子を…ともを
私と同じに扱わないで欲しい。あの子は、私が作った人形かも知れない。でも、心がある。
人間と何も変わらないんだ。聞いてくれ村のみなさん!私は、どんな仕打ちを受けてもいい。
だから、ともだけは……ともだけは、村の子と同じように扱ってあげてはくれぬか……」
 
N:男の悲痛の懇願は村の誰もが聞き止めなかった。今更、何を言っているのか。集団に属さない
男の言う事には聞く耳を持たずでした。
 
とも「主……やっぱり、ともは人形だったんだね……」
 
主「とも!?お…お前……来るなって…そか」
 
とも「もういいよ…主。もう…いい……」
 
主「そっか……とも。村を離れようっか。2人で暮らそう」
 
N:村人に相手にされなかった男と、ともは辺境の家を離れ村から遠く離れた場所で穏やかに暮らしたそうだ。
それから数十年後の事だ。男は、ともに最後を看取られ穏やかに老衰し亡くなりました。
 
とも「主も居なくなっちゃった。今 度は、ともが独りぼっちだな……」
 
村の子「お前は、独りぼっちじゃねぇよ。何十年ぶりだろうな…変わらないな」
 
とも「あなたは誰?」
 
村の子「お前が、村から出ていくきっかけになった子供って言えば思い出してくれるかな?」
 
とも「あ、大きくなったね。そっかそっか。それで、どうしてここに?」
 
村の子「変なおっさんが死んだって風の噂で聞いたからな。あの時の罪滅ぼしって言えば聞こえが悪いかも
知れないけど、お前の事を迎えに来たんだ」
 
とも「お迎え?どこに行くの?」
 
村の子「村に帰るんだ。独りぼっちは嫌だろ?」
 
とも「行かないよ。主との思い出のつまったこの家にいる。独りぼっちは寂しいけど、ともが村に帰ったら
主は寂しがると思うもん。主の側にいるのが、人形であるともの役目だから」
 
村の子「そうか…失礼した。その代わり、たまに顔を出す事にするよ。元気でな、とも」
 
N:こうして、ともは独りぼっちではなくなり、男との思い出の地で楽しく過ごしましたとさ。めでたしめでたし。
「どうして、お前がこんな所に居るんだ!」
 
「まだ気付かないのか?俺は貴様の敵だったんだよ」
 
「ど…どうして…今までの事は、全部嘘だったのか!?」
 
「甘ちゃんだな。俺は、お前の弱点を見つける為に近寄ったのさ」
 
「なら、お前の事を知っている俺だって!」
 
「貴様に俺の弱点がつけるのか?仲間だった俺に?」
 
「クッ……」
 
「そうだ。今では、俺がお前の弱点さ」
 
「どうすれば……どうすればいいんだ!」
 
「それでは、そろそろ死んでもらおうか」
 
「くそっ…ここで素直に死んでたまるか!俺には為すべき事があるんだ!」
 
「ほう。剣を向けてくるか。だが、向けるだけなら子供でも出来るぞ?」
 
「恨んでくれていい。俺は為すべき事の為に、お前を倒す!」
 
「では、いくぞ!ここで滅びろ!カオスブラッド」
 
「くっ!聖なる光よ我が盾に!聖護の盾」
 
「どうした?守りでは、私は倒せんぞ!口だけだったのか!?」
 
「光の力を剣に!光剣横一閃」
 
「得意技か。暗黒剣封殺斬」
 
「くっ!やはり、俺の技は通じないのか…」
 
「どうした?もう、諦めるのか?」
 
「くそ…。はっ!ある。1つだけアイツも知らない技が…でも……」
 
「どうした?そっちが来ないのなら、こっちから行くぞ!」
 
「昔に1度だけ見せてもらった事のある技。父さんの技……俺に出来るのか…」
 
「終わりにしよう。深淵から誘いの力によって滅べ。デスサイズヘル!」
 
「やるしかない!真実の光により導かれんとする想いの力。ホーリージャッジメント」
 
「なっ!?そんな技をいつの間に!」
 
「一か八かの賭けだったけど、覚えていて良かった。これは、俺の父さんの技だ」
 
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!ぐ……ぐはっ!」
 
「はぁ……はぁ……父さん、ありがとう……」
 
「お前の……勝…ち…だ…」
 
「もう、俺の敵のお前は倒した。今は、俺の仲間…だろ?」
 
「はっ……やっぱ、お前は甘ちゃんだよ……」

遥「なぁ……お前の夢って何か聞いてもいいか?」

葵「え?遥は、すぐ笑うから教えない」

遥「別に笑ったりしねぇよ」

葵「本当に?本当に笑わないのね?」

遥「あぁ。絶対に笑わない」

葵「あのね……お嫁さん」

遥「アハハ!お前、その歳でお嫁さんとか言ってんなし」

葵「むぅ。笑わないって約束したのに……遥なんて、もう知らない」

遥「ごめんごめん。他にはないのか?夢は……」

葵「他に?他か……そんな遥は何かないの?」

遥「俺か……俺の夢は言わないよ」

葵「それ狡くない!?私のは聞いといて笑ったくせに」

遥「分かった分かった。仕方ないな……俺の夢は……」

葵「うん。何々?」

遥「俺の夢は、お前と一緒に年をとる事……かな」

葵「へ?それって……どういう事?」

遥「いや、俺はお前とずっと一緒に居たいなって思ってさ」

葵「遥……」

遥「ずっと言ってなかったけど俺は、遥の事が好きだ」

葵「嘘でしょ……どうせ、遥の冗談なんだから」

遥「こういうので冗談なんて、言えるはずねぇだろ」

葵「さっきさ……」

遥「さっき?」

葵「私の夢。お嫁さんって言ったじゃない?」

遥「あぁ。言ったね…」

葵「あれ、半分なのね?」

遥「半分?」

葵「私は、遥のお嫁さんになりたいの……」

遥「マジか……」

葵「うん。実はね……ずっと前から遥の事が好きなの」

遥「そうだったのか……」

葵「私と付き合ってくれない?私の夢を叶えてくれる?」

遥「そうだな。俺と付き合ってくれ。俺に、お前と俺の夢を叶えさせてくれ」

葵「……はい」

遥「俺が、お前を幸せにしてみせるよ……」

龍「負けた……くそっ、どうして勝てるんだ!」

凛「まだまだ負ける訳にはいかないわよ」

龍「いつになったら勝てるんだかな……」

凛「そんなのすぐよ……龍は男の子だから……」

龍「性別が関係するのか?」

凛「あるわよ。すぐに体格じゃ敵わなくなるわ……」

龍「そうなる様には努力するけどよ……」

凛「分からないわよね……龍には……」

 

龍N:幼少から研鑚して来た凜は、中学に進学した頃から剣道を辞めてしまった。

俺は、あいつに1度も勝てなかった。辞める時は、猛反対したが無意味だった……

 

凛N:中学に進学する頃から、龍に勝つのにギリギリになってきた。体格差が厳しくなっていく。

自分の限界は見えてくるのに、龍はドンドンと強くなっていく。私は耐えきれなくなって剣道を捨ててしまった。

 

龍「はぁ…はぁ…どうしても上手くいかねぇ……」

凛「何やってんの?」

龍「り、凛。どうしてここに?」

凛「たまたまよ。通りかかっただけよ」

龍「通りかかった?こんな離れた剣道場にか?」

凛「うるさいわね。それで、一人で何してるの?」

龍「別に、ただの練習だよ。俺の個人的な練習だからな」

凛「何を必死に練習する必要があるのよ全国一位さん。普通に練習してるだけで相手いないでしょ?」

龍「勝てない相手がいるからな。俺はそいつに勝ちたい」

凛「龍が勝てない相手?そんな人いたかしら?思いつかないんだけど」

龍「お前」

凛「へ?何?」

龍「勝てない相手。凛だよ」

凛「いやいや、もう私なんかより強いでしょ」

龍「俺は、あの頃からずっと凛に勝てないまま。勝ち逃げされた。だから、ずっと勝てないままだよ」

凛「なら、いつまで必死に練習するの?」

龍「お前に勝てるまで」

凛「はぁ…飽きれた。いい加減に諦めなさい。過去のイメージ相手に勝負しても無意味でしょ」

龍「じゃ、勝たせてもらうとするか」

凛「は?何を言っているのかしら」

龍「俺は、強くて美しく剣を振るお前が好きだ」

凛「……は?」

龍「あの頃から、ずっとお前が好きだったんだよ。文句あっか」

凛「あ、ありがと……」

 

凛N:龍の突然の告白に何も返せなかったのは、私の中に気付きがあったからだ。

私が負けたくないと思っていたのは、龍に憧れて龍の事が大好きだったからなのだと……

 

龍「急に黙り込んでどうした?」

凛「私も……私もあの頃から、龍の事が好きみたい」

龍「みたいって何だよ……」

凛「今、気付いたんだもん。良いでしょ」

龍「そう言われたら応えようがないけど、これで俺の勝ちだな」

凛「そうね。負けてあげるわ」