ウイルスもガンを作る | ブラックジャックの孫 間 黒助 の ガン治療研究ブログ


間 黒助です。




地球上の全ての生物は、

遺伝物質としてDNAを使っています。

しかし、

生物とも無生物ともつかないウイルスは違います。

遺伝物質としてRNAを利用する 『 RNAウイルス 』 がいるのです。


ウイルスとは、

生物と無生物の中間のようなものです。

その構造は単純で、

遺伝物質がたんぱく質などでできた殻に包まれているだけです。

そのため、

ウイルスは細胞に寄生することによってはじめて増殖することができます。




【RNA(リボ核酸)】

リボースを糖成分とする核酸。

リボヌクレオチドが多数重合したもので、

一本鎖をなし、

アデニン・グアニン・シトシン・ウラシルの四種の塩基を含む。

一般にDNA(デオキシリボ核酸)を鋳型として合成され、

その遺伝情報の伝達やたんぱく質の合成を行う。

機能により、伝令RNA・運搬RNA・リボゾームRNAなどに分けられる。

全ての動植物の細胞および一部のウイルスに分布。




最初に見つかったニワトリに肉腫を引き起こすガンウイルスである、

ラウス肉腫ウイルスの遺伝物質もまた、

RNAであることが分かりました。


ところがここで1つ問題が生じます。

それまでに調べられたRNAウイルスは、

どれも増殖するときに自分の遺伝物質を鋳型として直接RNAを複製していました。

しかしこれでは、

DNAを遺伝物質として持つ動物細胞に、

ガン化のような持続的な変化をもたらすのは難しそうです。


アメリカのカリフォルニア大学のハワード・テミン氏は、

※アクチノマイシンDで処理すると、

ラウス肉腫ウイルスが増えなくなることを見つけました。




※アクチノマイシンDとは、

抗がん性抗生物質で、ダクチノマイシンとも呼ばれています。

ガン細胞内に留まりやすい性質があり、

DNAに結合してRNAの合成を抑制し、がん細胞の増殖を阻止します。

小児がん治療では重要な薬となっています。




この薬は、

DNAを鋳型とするRNA合成反応を阻害することが知られています。

そこでハワード・テミンは、

『 ラウス肉腫ウイルスはRNAの遺伝子情報からいったんDNAを作り、

そのDNAからさらにRNAを合成する 』

という仮説を立てました。


そう考えれば、

ウイルスがDNAを遺伝物質として持つ細胞を、

安定にガン化させる仕組みをうまく説明できます。

ウイルスが自分で作り出したDNAを、

宿主の遺伝物質に組み込んでしまうと考えればいいのです。


ところがこのアイディアには大きな難点がありました。

それまでの生物学の常識を裏切っていたからです。


当時、

遺伝情報は、

“ DNA → RNA → たんぱく質 ”

という方向にのみ流れると考えられていました(※セントラルドグマ)。

ハワード・テミンの仮説はこの常識とは逆の、

“ RNA → DNA ” という流れを想定していたのです。




※セントラルドグマとは、

1958年に、

フランシス・クリック(DNAの二重螺旋構造を発見した科学者)によって提唱された、

分子生物学の基本原則のことです。

これによると生物の遺伝情報は、

すべてゲノム “ DNA → 複製 → DNA → 転写 → RNA → 翻訳 → タンパク質 ”

の順に情報が伝達されていると考えられていました。

つまり、

情報の流れが一方的であり、

タンパク質自体がRNAやDNAを合成することができないことを示しています。

しかし、

1970年に上記のラウス肉腫ウイルスにより、

RNAからDNAが合成されるという現象が発見(逆転写酵素の発見)されたため、

セントラルドグマが一部書き換えられました。

またその後、

特に高等生物において、

翻訳の前にスプライシング(splicing)の過程があることも判明しました。

この結果、

セントラルドグマは3段階から4段階へ修正された概念となりました。

セントラルドグマの概念の分子機構を明らかにしようとしたことで、

mRNA、tRNA、遺伝暗号などが発見、解明され、遺伝子発現が定義されました。




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しかしその後、

ハワード・テミンの考えが正しいことが証明されました。

アメリカのマサチューセッツ工科大学のデイビッド・ボルティモアが行った実験にヒントを得て、

ハワード・テミンらは、

ラウス肉腫ウイルスがRNAからDNAを複製する酵素を持つかどうかを調べたのです。

答えはイエスでした。

RNA腫瘍ウイルスは常識を裏切り、

RNAからDNAを作ったのです。

そのとき見つかった酵素は後に、

上記にも書きましたが 『 逆転写酵素 』 と呼ばれるようになりました。


こうして “ 常識 ” の誤りが明らかになったわけですが、

皮肉なことに、

その後、

逆転写酵素は、

分子生物学者達にとって不可欠な道具の1つとして活用されるようになりました。


常識を裏切る風変わりなこの酵素を持つ白血病ウイルスや肉腫ウイルスは、

『 レトロウイルス 』 と名付けられ、

トリやマウスの他、

サルやネコからも続々と発見されました。


しかし不思議なことに、

人間からは白血病の一種や、

エイズを起こすレトロウイルスが見つかっただけで、

肉腫ウイルスは見つかっていません。






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