NHK、大丈夫か……これは微妙? | tobiの日本語ブログ それ以上は言葉の神様に訊いてください

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 主として日本語関係のことを書いています。

 下記の仲間。 
日本語アレコレの索引(日々増殖中)【22】 
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1971566092&owner_id=5019671 

mixi日記2020年03月11日から 

 テーマサイトは下記。 
【「降らなそうだ」? 「降らなさそうだ」?】 
https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/kotoba/term/141.html 
===========引用開始 
「降らなそうだ」? 「降らなさそうだ」? 

Q 「降りそうだ」を否定の形にした言い方は、「降らなそうだ」と「降らなさそうだ」のどちらが正しいのでしょうか。 

A 伝統的には、「降りそうにない」という言い方をするか、あるいは「降らなそうだ」のように「さ」の入らない形のほうがふつうだとされてきました。しかし実際には「降らなさそうだ」のほうがふさわしいと考える人も多く、両方とも正しいと考えるのが現状に合っているように思います。 

【解説】 
 「~なそうだ」と「~なさそうだ」のどちらがふさわしい形なのかについては、用法によって異なります。だいたい、次のような傾向があります。 
①「ありなし【存在・非存在】」に関する場合 
⇒「(問題は)なさそうだ」のように「さ」が入る 
②形容詞の否定の場合 
⇒「(寒く)なさそうだ」のように「さ」が入る 
③動詞の否定の場合 
⇒「(降ら)なそうだ」のように「さ」が入らない 
④外見上「ない」の形だが否定の用法ではないもの(「危ない、少ない、汚い」など) 
⇒「(あぶ)なそうだ」のように「さ」が入らない 
ただし、③と④については以前から「~なさそうだ」の形もある程度併用されていました。 
「降らなそうだ」と「降らなさそうだ」について、インターネット上でアンケートをしてみました。すると特に西日本を中心として、伝統的な形である「降らなそうだ」よりも「降らなさそうだ」のほうを支持する意見が多く見られました。この結果からみても、動詞の否定の場合に、「~なそうだ」だけでなく「~なさそうだ」を用いてもかまわないように考えられます。 
なお、「(本が)つまらない」は語源としては「動詞の否定」なのですが、「本がつまる」という言い方はふつうしません。つまり「つまらない」で一語であると考えられ、分類としては④に近いものです。この場合、「さ」の入った「つまらなさそうだ」の支持率がかなり下がることも、同じアンケートの結果からわかっています。言い方のふさわしさは語によって異なり、まだまだ問題は尽きな(さ)そうです。 

(図は省略) 

(メディア研究部・放送用語 塩田雄大) 
===========引用終了 

 困ってしまった。 
〈③動詞の否定の場合〉は「さ」が入らないと明記しておいて、〈インターネット上でアンケート〉した結果、〈「~なそうだ」だけでなく「~なさそうだ」を用いてもかまわないように考えられます〉とするのはムチャでしょ。しかも〈特に西日本を中心として、伝統的な形である「降らなそうだ」よりも「降らなさそうだ」のほうを支持する意見が多く〉見られたって、それは方言なのでは。 
 内容にも疑問だけど、問題は発表日。2011.02.01の記事になぜいままで気がつかなかったんだろう。 
 この「なそう」「なさそう」問題でmixiで騒ぎになったのは、2009年10月くらい。 
 うーむ。〈「行かなそう」と「行かなさそう」をめぐって〉で検索したら、当方関係のエントリーが。 
【「行かなそう」と「行かなさそう」をめぐって 独り言です38くらい──日本語教師関連編16くらい】 
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-724.html 
【「行かなそう」と「行かなさそう」をめぐって2 独り言です40くらい──日本語教師関連編17くらい】 
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-727.html 
===========引用開始 
 トピで「行かなそう」と「ラ抜き言葉」言葉の類似を指摘した人がいる。 

>「行かなそう」もまぁ許容ですが、「ら抜き言葉」のような感じでしょうか。 

 最初にこう書いたのは「11」のコメントなんだけど、当方が「さすがにそれは違うんじゃないですかね」と書いたら削除されたorz。 
 トピ主も「14」この考えを擁護しているっぽいけど、何を書いているかよくわからない。あと、同じような指摘をした人がもう1人いた。前の人のコメントを読んでいないことがよくわかる。 
 つらつら考えるに、「行かなそう」と「ラ抜き言葉」には共通点みたいなものがあると言えなくはない。実際には真逆なんだけどさ。つまり、「行かなさそう」と「ラ抜き言葉」には共通点みたいなものがある。 
  
1)本来は誤用なんだけど、許容されることが多い(広がりつつある) 
2)語幹の短い動詞ほど、誤用のほうが語感がいい(だからこそ誤用されやすい) 
3)紛らわしい場合に簡単に言いかえられる 
 「行かなそうだ」→「行きそうにない」「行かないようだ」 
 「ラ抜き言葉」→「~することができる」 

 逆に、共通しない点もある。3対2だと共通点があるかないか微妙だな。 
4)「行かなさそう」は余分な「さ」が加わり、「ラ抜き言葉」は必要な「ら」がなくなる 
 ※ただしこれはいわゆる「サ入れ言葉」ではない。「サ入れ言葉」は「作らせていただきます」を「作らさせていただきます」と言う類いだろう。ビストロSMAPの中居クンの使用例が有名。 
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E%E3%81%AE%E4%B9%B1%E3%82%8C#.E3.81.95.E5.85.A5.E3.82.8C.E8.A8.80.E8.91.89 
5)「~なさそう」は、このほうが形容詞形などと同じ形なので覚えやすい 
 「ラ抜き言葉」は、ラを抜かないほうが尊敬・受身などと同じ形なので覚えやすい 

 トピ主が何度もしつこくあげているように、語幹が1語の動詞は「来なさそう」のように「さ」が入るほうが語感がいいのかもしれない。若い人はそういう傾向があるらしい。ただし、現実にはトピの回答を見ても「来なそう」を使うという人がかなりいるから、説得力があるのかないのか不明。 
 何より、仮に若い人ばかりたった6人に聞いて、6人とも「ラ抜き言葉」を使うと答えたら、それで「ラ抜き言葉」がスタンダードと言えるのだろうか。 
 ただ、一般には「来なさそう」を使っている確率はもっと高いかもしれない。当方だって、ほんの1年前までは、あまり意識していなかった。 
 意識するようになったのは、トピにリンクを張った下記のトピを見てから。 
===========引用終了 

 トピのバックアップは下記。 
【「行かなそう」と「行かなさそう」のバックアップ1(0-37)】 
https://mixi.jp/view_diary.pl?owner_id=5019671&id=1305283148 

 この段階では、まだNHKの記事はなかった。 
 信頼できるのは下記あたりだった記憶がうっすらと……。 
【知らなさすぎた? - 道浦俊彦/とっておきの話】 
https://www.ytv.co.jp/announce/kotoba/back/1501-1600/1501.html 
===========引用開始 
◆ことばの話1504「知らなすぎる?知らなさすぎる?」 

◆ことばの話1504「知らなすぎる?知らなさすぎる?」 

脇浜アナウンサーから、こんな質問を受けました。 
「昨日のニュースで、神戸で硫酸ピッチを放置していた業者のインタビューの音生かし部分で、業者が『法律を知らなさすぎた』って答えていたんですが、この『知らなさすぎる』は、『知らなすぎる』の方が正しいのではないでしょうか?」 

知らなさすぎた? 
知らなすぎた? 

もともと口語で正しい日本ではなさそうなので決まりはないのかもしれませんが。 
分からなすぎた 
分からなさすぎた 
…とは言いませんよね。 

うーん、すぐには応えられないよなあ。これについて、坂アナウンサーが、既に一日悩んで出した答えは、 
「形容詞の『ない』と助動詞の「ない」が混同されているのではないか。たとえば、『少なすぎる』の場合は、『すく+ない』ではなく『すくな+い』で、『すくなすぎる』となるこれは決して「すくなさすぎる」といは言わない。『はかない』『きたない』といって形容詞も同じこと。これに対して『行かない』『食べない』『飲まない』などは『行か+ない』『食べ+ない』『飲ま+ない』というふうに、『動詞の連用形+助動詞のない』という形で、『すぎる』を付けると『行かなすぎる』『食べなすぎる』『飲まなすぎる』となり、『さ』は入らない。これと同じように『知らなすぎる』が正しく、『知らなさすぎる』は誤りと思われる。」 
なるほど。 
これと同じようなことが、「そう」にも起こりますね。つまり「行かなそう」か「行かなさそう」か、「食べなそう」か「食べなさそう」か、「飲まなそう」か「飲まなさそう」か、という問題。これも、助動詞の『ない』(付属語)ではなく、単独の動詞(自立語)の『ない』の場合は『なさそう』という表現があるために、ついこの『なさそう』という語感のよい言葉をほかの動詞の未然形にくっつけて、『知らなさすぎる』という形が出てきてしまうのではないかということですね。 

少し、ややこしくなってきました。文法は難しくややこしいですから・・・。 
そこで、NHK放送文化研究所の塩田雄大さんに教えを請うと、このようなメールをいただきました。 
「『明鏡国語辞典』の『すぎる』の項に、以下のような記述と用例がありますよ。」 
どんな記述かと言うと、 

すぎる(二) 
<動詞の連用形、形容詞・形容動詞の語幹などに付いて複合語を作る> 
物事がある程度をこえる。度をこえる。 
「働き-・みじか-」「自信がなさ-」「人の意見を聴かな-」 
[語法]形容詞の「ない」に続くときは「なさ-」(お金がなさ-)、接尾語の「… 
ない」に続くときは「…な-」「…なさ-」(せわしな(さ)すぎる)、打ち消しを 
表す助動詞の「…ない」につづくときは「…な-」(読まな-)となるのが一般的。 

ということ。塩田さんはさらに、 
「確かに『お金がなすぎる』というのはかなり変に感じますものね。 
で、この記述からすると『知らなすぎる』が『一般的』ということになるのですが、 形容詞の『ない』や、一部の接尾語の『ない』の影響(類推)で 『知らなさすぎる』が出てくるのでしょう。 
ただ、『来なさすぎる』は、『明鏡』の記述(これに従えば「来なすぎる」になる) とは反していますね。おそらく、語幹1拍(カ変・サ変・上一・下一)のものは、別ルール(「さ」付きに なる)になると考えたほうがよさそうです。 
   
しない  ○しなさすぎる ×しなすぎる 
来ない ○来なさすぎる ×来なすぎる 
見ない ○見なさすぎる ×見なすぎる 
出ない ○出なさすぎる ×出なすぎる 
  
あと、接尾語の『ない』関連で、『明鏡』に従えば『少なすぎる』『少なさすぎる』 
の両形出るはずですが、『少なさすぎる』は、個人的にはかなり変です。 
いま初めて気づいたのですが、私(=塩田)のFEP(ATOK13)では『しらなすぎる』は正しく変換されず、『しらなさすぎる』は『知らなさすぎる』と出てきます。 
『知らなさすぎる』を正しい形と認定しているのですね。」 
とのことです。 

また、坂アナウンサーの「解釈」に戻りますと、 
「インターネットを検索しまくった結果出てきた仮説がありました。それは『1音節+すぎる』という語感の安定性が悪いために、後の音を引っ張った名残り、というものです。つまり『なすぎる』では気持ちが悪いので、『なっすぎる』というように『すぎる』の『S』を引っ張り、この促音が転じて『さ』になったのではないか、ということです。ただ、『よさそうだ』は『さ』が入りますが、『よさすぎる』とはならずに『よすぎる』です。このあたり、"日本語の不思議"と言うしかありません。」 

ハアー。どうやら、ため息が出るほど難しい問題に手を出してしまったようです・・・。 
2003/12/19  
===========引用終了 

 これで何かわかる? 
「動詞+ない+すぎる」に関して、当方はトピに書いたとおり「○○なすぎる」が本線、「○○なさすぎる」が許容と考えてきた。後者を「準サ入れ言葉」と呼んでもいた。 
 傍証はいくつもある。 
『記者ハンドブック』は誤用の例として、「知らなさすぎる」→ 「知らなすぎる」をあげている。 
 これに関して詳しい辞書は明鏡らしい。しっかし本質坊主の意味不明の念仏コメントがウザい。 
【「言わなすぎる」「言わなさすぎる」】2017/8/19 
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11178258546

 

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