のび太の恐竜[★★★]
[初出誌] 『無題』、「少年サンデー増刊」1975年9月5日号、23頁、165コマ
[単行本] 『のび太の恐竜』、「てんとう虫コミックス ドラえもん短編第10巻」1976年4月25日 初版第1刷発行、27頁、194コマ
[大全集] 『のび太の恐竜』、「藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん 20」2012年9月30日 初版第1刷発行、27頁、194コマ
[梗概] 今日もスネ夫の自慢話で一日が始まった。スネ夫のパパのおみやげはユタ州の恐竜公園で発掘された、爬虫類の王者と呼ぶに相応しい「ティラノサウルスのツメの化石」であった。
スネ夫はジャイアンとしずちゃんにじっくり見せた後、いつものようにのび太に対しては「しまっとこう。貴重なものだからこわされるとこまる」と言って、見せてくれませんでした。のび太は悔し涙を流しながら反発して、「なんだ! ツメの化石ぐらいでいばるな!…、ツメだけじゃなく、恐竜まるごとの化石を発掘してみせる!!」とみんなの前で、宣言してしまった。
ドラえもんからは、「できることかできないことかよく考えてからしゃべってくれ!! 日本にはティラノサウルスなんかすんでいなかったの! いない恐竜の化石を、どうやってみつけろというんだ!」といったきつい説教を受けた。
さらに、「だいたいきみは…、無責任というか…、かるはずみ! おっちょこちょい!」との叱責を矢継ぎ早に受けた。のび太は「スック」と立ち上がり、「いまさらあとへはひけないんだ。ぼく一人でやる」と言い切って、図書館に資料集めに出かけた。
図書館でかき集めた山のような資料を見て、ドラえもんは「あの頭では半分も理解できないと思うし…、すぐあきてなげだすだろうけど…。自分の力でやってみようという心がけはりっぱだ!」とそれなりの評価を下した。さらに、「失敗してもいいさ! あたたかい目でみまとってやろう!」と心に決めた。
のび太は「本によると化石は古い地層からでるという…」ことを学んで、朝から掘りはじめたけれども、何も出てきません。逆に、近くのおじさんから「屋根や庭にドロがふってくる」といって怒鳴られ、罰として庭にゴミの穴を掘るように命令される有様であった。
穴を掘っていると、スコップがガチャと何かに当たった。のび太は「恐竜のたまごだ!」と確信して、意気揚々と家に帰り、ドラえもんに得意げに「ぼく一人で見つけたんだぞ! どうだ! 見直したか!」と詰め寄った。
すると、ドラえもんは「だけど、どうしてこれが…、恐竜のたまごとわかる? ただの石っころかもしれない…」と気にくわない言い草、あまつさえ、「化石だとしても、古代の木の実かもしれない。ナウマンゾウのウンコかもしれない」と決め付ける始末。
「ドラえもん!」と叫んで追い掛けると、廊下にひみつ道具の『タイムふろしき』がそっと置かれていた。のび太は「これにつつまれたものは、時間をさかのぼるんだ! この化石を一億年前の状態にもどせば、正体がはっきりする」と考え、実行に移した。
ドアの陰からそうした光景を見て、ドラえもんは「近ごろきみはぼくにたよりすぎるくせがついていた。そんなことじゃ、いつまでたっても独立心が育たない。自分の頭で考え、自分の力できりぬけて欲しい! ぼくは、あくまでかげからみまもっていてあげるからね」と考え、のび太の前に決して姿を現さなかった。
のび太はその卵を「タイムふろしき」に包んで、孵るのを辛抱強く待ち続けた。ある日卵の殻を破って、小さな恐竜が「ピュイ…」と鳴きながら誕生。ドラえもんはその恐竜の子を見て、白亜紀の日本近海に住んでいた首長竜の一種でフタバスズキリュウと鑑別した。のび太は「ピュイ」と可愛く鳴くその恐竜に「ピー助」という名前を付けた。
のび太は毎日ピー助にミミズを与えたり、のび太の大好物であるさしみを与えたり、ドラえもんからもらった「成長促進剤」を飲ませたりして、懸命に育てた。
のび太にもよくなつき、ボール遊びをしたり、幼稚園の頃使ったプールで一緒に遊んだりもしている間に、ピー助はどんどん大きくなり、家ではもうコッソリと飼えなくなった。しばらくは公園の池で飼うことにし、毎晩「セッセ セッセ」とエサを運ぶのび太であった。
のび太は生きて動いている恐竜を見せなかったら、「鼻でスパゲッティたべてみせる!」といったさらなる約束をスネ夫と交わしていた。
のび太はスネ夫から、「ウソをつくだろ。それがばれそうになって、ごまかすためにまたウソをつく。ウソがどんどんふくらんで、手におえなくなるんだ」と学校帰りにジャイアンやしずちゃんの前で嘲笑された。のび太は今夜あたり、大きくりっぱに育ったピー助を見せて、スネ夫の「きもっ玉をでんぐり返させてやるぞ」と決心した。
運悪くその晩から三日三晩、のび太は高い熱を出して寝込んでしまった。最後の晩になると、ドラえもんがピー助にエサをやっても食べない状況になっていた。
ドラえもんからピー助はとてものび太を恋しがっているという話を聞いて、熱も下がらず、頭に氷嚢をのせていたのび太は「ヨロヨロ」とよろけながら、ピー助の所へ行こうとした。ドラえもんから「ぶり返したらどうするんだ。なおるまでおとなしくねてろ!」と厳命された。
涙を流して寝ていると、屋外で「ドサッ ドサッ」と音がしたので、窓を開けてみると、目の前にのび太に会いたがっていたピー助の姿が目に入った。のび太は「気持ちはわかるよ。ぼくだってあいたかった。がまんしておくれ、いい子だから」とピー助の頭を撫でながら、「ドラえもん、公園へつれもどしてくれ!」と懇願するのであった。
のび太は元気になった翌朝、スネ夫やジャイアンをギャフンと言わせるために、約束を果たそうとした。スネ夫の家に行くと軽井沢に出かけたとのこと、ジャイアンもおじいさんと山へ芝刈りに行って留守とのことであった。
往来では二人の女子学生が公園の池で怪獣を見た人の話題を交わし、家ではママが新聞の記事「公園の池に怪獣!?」を読んで驚き、テレビではアナウンサーが公園の池に潜水夫をもぐらせて怪獣の調査に当たらせるといったニュースを流していた。
のび太は「もうぐずぐずしていられない。ほんとにピー助のしあわせをねがうなら…。とるべき道は一つ!」と結論づけ、スネ夫との約束を破棄した。のび太とドラえもんは公園に行って、ピー助を『スモールライト 』 で小さくし、「タイムマシン」を使って、白亜紀の、首長竜の群れの中に無事送り届けることができた。
ドラえもんは「今度のできごとは、のび太くんがぼくにたよらず、まがりなりにも、自分で考えて行動した点で大きな意味があった。これからも大いに独立心を強め…、なんでも自分ひとりの力で…」と、とても高い評価で総括した。
スネ夫との「生きて動いている恐竜を見せる」といった約束を守ることができなかったので、のび太は「鼻でスパゲッティたべる機械をだしてくれえ!」と涙ながら訴えると、ドラえもんも「できることかできないことか考えてからしゃべるもんだ!」と猛然と反論している。
[S2008・A1021・097509]