あの日あの時あのダルマ [★★★]
[初出誌] 『なくし物とりよせ機』、「小学六年生」1978年3月号、10頁、76コマ
[単行本] 『あの日あの時あのダルマ』、「てんとう虫コミックス ドラえもん第18巻」1980年1月25日 初版第1刷発行、10頁、76コマ
[大全集] 『あの日あの時あのダルマ』、「藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん 5」2010年1月30日 初版第1刷発行、10頁、76コマ
【初出誌vs.大全集】
タイトル『なくし物とりよせ機』が『あの日あの時あのダルマ』に変更
「そーそ!!」が「そうそう!」に変更[552(10)]
[梗概] うつぶせになって寝ていたのび太をドラえもんが起こすと、「きみにも、せわになったな…。ぼくは、もう…おしまいだ」と深刻ぶって話を始め出した。理由を尋ねると、「しずちゃんに見せびらかしていたら、ママが命よりだいじにしてた、プラチナの指輪を」なくしたというものであった。
「今、ママがさがしているところだ。きっと自白させられてきびしく叱られて…、それを思うと、勉強どころじゃ…。あ~あ、あすのテストは0点かくじつだ」と、大仰に泣き崩れていた。
ドラえもんがひみつ道具『なくし物とりよせ機』を取り出し、のび太にできるだけはっきりとなくした指輪の形を思い出してもらった。そして、ドラえもんがこの機械のスイッチを「カチ」と押すと、「ピンポーン」となくした指輪が飛び出してきた。
大喜びたしのび太はさっきの心配事をコロッと忘れ、ドラえもんからはやく勉強とせかされたが、待ったをかけ、きのうなくした十円玉を思い出して、「ピンポーン」と出している。「一度はあきらめたきみにふたたびめぐりあえるとはゆめみたいだ」とオーバーに形容し、次は千円を出そうとした。
でないので、ドラえもんが「そんなばかな。いつなくしたの」と尋ねると、「なくさないけど。使っちゃったのはだめ?」と平然と答えるので、ドラえもんは堪忍袋の緒が切れて、「勉強しろ!」と怒鳴ってしまった。
のび太は「そうカッカするなって、あとでやるから。ほんとのとこ、ぼくの頭じゃ勉強したってしなくたって同じことなのさ」と反論するので、ドラえもんは「もうしらん!」と言って部屋を出て行ってしまった。その後、今までにママにすてられたマンガ本を全部取り返すことに成功した。
のび太はペロリと舌を出しながら、「おととしなくした模型飛行機。買ったばかりでジャイアンにとりあげられてものも取り戻すことができた。
さらに、「お母さん、お母さん」と叫びながら、「ドタ ドタ」と走ってきて、「どこへいったのでしょうねと、大さわぎしたムギワラ帽子。谷へおとしたあの帽子。ぼんやりしているからよなんてママはガミガミおこったけど、ちゃんとでてきたからね」と、ママにその帽子を見せている。
のび太はこれまでぼくの持っていたものを全部出すと、大好きなほ乳ビンが出てきた。そのビンに冷蔵庫の牛乳を入れ、「コクン コクン」と飲むと、ゴムの歯触りがしてあの頃がよみがえってきた。
あの頃はよかったなと寝っ転がって飲んでいるので、ドラえもんから「すぎた日をなつかしむのもいいけどね、それはもっと大きくなってからでもいいんじゃない? そんなことしてるまに、もっと未来へ目をむけなくちゃ。ふりかえってばかりいないで、前を見て進まなくちゃ」と懸命に説得したが、のび太の回答は「どうせろくな未来じゃないさ。頭も悪いし、なにやっても失敗ばかり…」といった悲観的なものであった。
のび太が「ずうっと子どものままでいたいな」と思っていると、やさしいおばあちゃんがくれたなつかしいダルマが目に入った。庭でころんで泣いていると、「コロ コロ」と転がってきたダルマがのび太の目の前で「ピョコ」と立ち上がった。
そして、おばあちゃんから「さ、ダルマさんもおっきしたよ。のびちゃんだってひとりでおっきできるでしょ」と言われた。病気なので起きてきちゃだめと止めたが、「のびちゃんが泣いていたら、心配でねてなんかいられないよ」と言われた。
おばあちゃんは「コロ コロ ピタ」と立ち上がるダルマを見せながら、「ダルマさんはえらいね。なんべんころんでも、泣かないでおきるものね。のびちゃんもダルマさんみたいになってくれるとうれしいな。ころんでもころんでもひとりでおっきできる強い子になってくれると……、おばあちゃん、とっても安心なんだけどな」と優しく諭してくれた。
「ぼくダルマになる」とおばあちゃんに約束してまもなく、なくなったことを思い出して、のび太は自ら机の前に座って、「ぼくひとりでおきるよ。これからも、なんどもなんどもころぶだろうけれど…。かならず、おきるから安心してね、おばあちゃん」と、再度誓うのび太であった。
[S0572・A1814・067803]