水の美味しい処には、蕎麦以外にも旨い物がいっぱいある。
美酒は、まず水が美味くなくっちゃ始まらない。
米や野菜なんかも、美味い水で益々良い味になるに違いない。
味噌や醤油や美人だって、水が美味いに越したことはない。
流通手段からも、川筋には醸造蔵があるのが、日本の姿だ。
また清流には、銀鱗燦めく魚を思い浮かべる方もおられよう。
渓流釣りのメッカらしく、郡上八幡では川魚の店が多い。
料理屋では、鰻と並んで鮎の塩焼きの幟が翻り、
仕出屋、魚屋と、店先で焼いた鮎の塩焼きを売っている。
山間の小さな町にしては、魚屋率が高いような気もする。
が、そんな物には目もくれず、って、食べないからなんですが、
友人の「う、な、ぎぃい」と言う怨みがましい目を、背中で無視し
きょろきょろ見渡せば、川魚に負けないくらい「郡上みそ」の幟もみつかる。

ひょいと覗いたお味噌屋さんでは、土間の棚に
木の桶やビニール袋に詰めた郡上みそが、積んである。
メーカーの違いはあるようだが、白味噌も麹味噌もなく、郡上みそ、だけだ。
八丁味噌なのだが、袋詰めされた物を指で押すと、柔らかい。
酢味噌や、ぬた和え用ぐらいには、柔らかい。
八丁味噌は固い、という思いこみが、私にはある。
そのちょっと不安感をそそる柔らかさに、興味惹かれて、買うことにした。
一番小さな袋を指さした、お店の方の耳打ちによると、
「これは家で作ったの。昔のまんまの手作りよ。
(声をひそめて)だから、危ない物は全く入れてないの。」
保存料入りの物とは異なり、塩がきついので、合わせて使うなり
控えめにするなり、様子を見て欲しいとのこと。
400g450円也(くらい、だったかなぁ……)。
ビニール袋の口をきつく捻り、金物で留めてあるこのお味噌。
道中、陽に当らぬ様、座席の影に置いていたのだが、時間が経つにつれ、
その捻った臍?の部分から、なんとも微妙な匂いが車内に漂いだした。
お味噌屋さんの説明に、嘘はなかった。
十分に寝かされ十分に熟成された、だからこそ醸し出される、この匂い。
この旅行の間中、熱せられた車に乗り込む度、
私達は日本の保存食の知恵を、イヤという程、否、存分に学んだ気がする。
さてお味は、確かに塩味がきつく、ごくわずか酸味すら感じる、という個性派だ。
大豆だって、形のままごろんと残っていて、豆好きならば二度、美味しい。
古漬けのあの匂いと酸味が、お好きな方なら嵌っちゃうかも。
私?うん、暑い夏には、これっくらいキツイ味で良いんやない。
と、勿体は付けているが、結構、嵌っている口なんでは。(笑)
帰宅後、即行で密閉容器に移し替えたので、袋状態の写真がありません。
色が解りやすいように、ガラスの器によそってみました。
食後の一休みぃ、なんかしてないで即!洗いましょう。
ぐずぐずしてたら、お台所中、びみょ~な匂いが漂います(笑)