選挙とニュースと先進国 | Kura-Kura Pagong

Kura-Kura Pagong

"kura-kura"はインドネシア語で亀のことを言います。
"pagong"はタガログ語(フィルピンの公用語)で、やはり亀のことを言います。

 NHKBSでは朝海外のテレビ局が放映しているニュースを通訳付きで流している。海外のテレビ局にはイギリスのBBCやフランスのF2もある。現在日本の首都では東京都知事選挙が行なわれているが、これらの国では総選挙がおこなわれている。そしてこれらの国のニュースを観ていて印象的なのは選挙のことを積極的に取り上げていることだ。
 ニュースでは与党、野党を問わず政党代表者に政策を語らせているし、不祥事を起こしている候補者がいればその不祥事を丁寧に報道する、まちなかで有権者にマイクを向け、どんな政策に関心を持って候補者を選ぶかを尋ねる。
 そんなニュースの中で、フランスの若い女性へのインタビューが印象に残った。
「私はまだどの候補に入れるか決めていません。多分投票する間際までどの候補に入れるか迷うでしょう。」
それでも彼女は投票に行くのだ。
 
 それに引き換え日本のテレビは…、と私は思う。
 こちらは7月7日夜には都知事選挙の開票速報のため大河ドラマを放映しない、というNHKの告知。こうやって開票はスポーツ中継のように熱心に取り上げるのに、なぜ日本のテレビは投票日前に選挙のことをしっかりと報道しないのか、と思う。
 
 何年か前、国政選挙の時にニュースでこんなインタビューを流したのが脳裏に焼き付いている。
 公園で、若い母親が幼い子供を遊ばせている。インタビュアーがその母親に投票へ行きますか、とたずねる。
「私政治のこと分らないし、政治のことがわからないのに投票してはいけないと夫が言うから多分投票しません。」
テレビ局は他人事のようにそんな声を流す。そして他人事のように多くの有権者は選挙に関心を持っていないと伝える…。
 
 さっきのフランスのニュースとは大違いだ。フランスにだって選挙に関心のない若者は数多くいるだろう。だが、ニュース番組の作り手は若者の無関心を言い訳にはしない。
 
 そういうことを思っているうちに今度は
「先進国って何だ?」
という疑問が湧いてきた。国民が物質的に豊かな暮らしをしていれば先進国か?高い工業生産力があれば先進国か?
 例えば中国。あの国は1980年代以降目覚ましい経済発展を遂げて工業大国となった。しかし、独裁国家のあの国を先進国と呼ぶ気にはならない。
 
 では日本はどうか?
 政権についている政治家たちがいくら腐敗してもそれにとって代わる人材がいない。そしてそれに対して何も感じなくなり、物質的な豊かさにだけ心を動かす人たち…。
 悲しいが、私は自分の祖国を先進国とは思えない…。
 
*****
 
 下の写真は東京都知事選挙のポスター掲示板。(高田馬場駅前広場)
 
 NHKから国民を守る党が掲示板ジャックをした、女性のヌードや何年か前に他界した俳優の顔写真がこの政党のスペースに張られた、というのがニュースになっているが、この掲示板には「日本語校正」なるポスターが張られている。
 
 こういう選挙をおもちゃにした行為を防ぐため公職選挙法を改正すべきだ、という声も挙がっている。だが、テレビの政見放送で卑猥語を発する候補がいたから、公選法を改正して卑猥語は削除するようにしても、今度は政策を語らずにただ服を脱ぐ候補が現れたりするのだ。
 
 多くの人たちが選挙に対して白けていれば、受けを狙ってふざけた行為をする者は跡を絶たないだろう。
 
 こういうことを防ぐため、まずメディアは有権者の無関心を言い訳にせず報道活動をしてもらいたい。