このところコンサートでよく唄っている歌。
「ありがとう命」
南米チリのビオレータ・パラという女性が作ったものだ。
この歌には、二つのものが出てくる。
白と黒、笑いと涙、良いものと悪いもの、幸せと不幸せ。
真逆、両極、そんな正反対のもの。
そして、その間に立って主人公の「わたし」は、苦悩する。
だって、その両極ってのは、よくわからない。
たいがいのことは、その間にある。
だいたいのことはグレーなのだ。
でも、グレーでは許されないことがある。
それが危機管理だったらなおさら。
まさに命にかかわることだったら。
そんなことを、あのクルーズ船の船内写真を見て思った。
どうしてあんなに船内感染が増えたのか。
その謎のもしかして一つの答えかもしれない写真。
清潔ルートと不潔ルートと書かれた紙が、船内の廊下に貼ってある。
でも、その場所への、前も後も、どうやら一緒のように見える。
あるいは、防備服に身を固めた職員のそばに、スーツ姿の人も一緒にいて、床にひざまづいて作業をしている写真。
ウィルスのあるなし。
安全と危険。
この両極の間は、グレーであってはいけないものなのだった。
だって、見えないんだもん。
と、私だって思う。
でも、これはあの放射能の時と同じだ。
ここからは入れませんという場所に降り立ったとき、ムコウ側もコッチ側も、まったく同じなのにと、アタマの働きは停止した。
無力感に停止した。
でも、今は停止しちゃいかんのだった。
不眠不休で働いておられる方々の身にも、不幸が襲いかからぬよう。
早く収束の道が見えるよう。
さあ。
とりあえず、マスクをして出かけよう。
今、無力感と恐怖感で止まってはいられない。
そうそう。
「ありがとう命」は、この両極の見極めを「あなた」に置く。
自分の愛する「あなた」、そしてそれは「あなたたち」へと広がる。
命と愛でツナガッた私とあなた、そしてあなたたち。
それこそが、二つのものを正しく見極めさせてくれる。
最後の歌詞は。
「ありがとう、こんなにたくさんのものを!」