山手線に駆け込むように乗ると。
はじっこの座席の一つがぽっかり空いている。
そのそばに、大きなスーツケースをそれぞれが一つずつ持った若いお母さん。
座っているのが小学生くらいの子供二人。
お母さんたちは、子供を座らせて、立っている。
でも、他の乗客は誰も座ろうとしないのを見て、お母さん二人が座り子供を挟んだ。
静かに静かに。
子供がなにか声をあげようとすると。
しっ。と唇に手をあてて制する。
この大きなスーツケースと小さな話し声から聞こえる言葉で、この人たちが中国の人だとわかる。
とかく大声、マナー無視などといわれ、北欧では国どうしのいさかいにもなっている中国人観光客。
こんな人たちもいるのだ。
こんなに周りを気にして行動している人たちもいるのだ。
ディズニーランドあたりで仕入れたような、あれやこれやのピンク色の飾り物をつけた女の子二人が、はしゃぎたい気持ちをこらえ、座っている。
正直、こういう中国の人たちを見たのは初めてだった。
なんだか気の毒にもなってくる。
こうして国際マナーを学んでいくのだろうなあ、でも、この女の子の弾ける声も聴いてみたいなあなんて思ってると。
今度はラテン系白人のグループが。
この人たちも、案外と静かにつり革にぶら下がる。
それを見上げる、中国のお母さん。
そうだなあ、もう日本は、特に東京は、ほんとに国際化してるんだなあ。
ちょっと歩いても、数か国の人たちとすれ違う。
以前は、なにか聞かれたらどう答えよう、なんてできもしない英語をアタマで組み立ててたけど、もうすっかりあきらめた。
ハート、ハートですよ。
手を使って一生けんめい伝えればなんとかなる。
この原始的会話を試したいのだけど、残念ながらそのチャンスが来ない。
相手も、こんなニコニコしてるだけのおばちゃんじゃ頼りないと、わかるのかしらん。
ううむ。残念。