2ちゃんねるは嫌いだけど2ちゃんねらーは嫌いじゃない。 | 旅館復活大作戦!!日本全国の旅館に、もっと元気になって欲しくて始めた ブログよ。

旅館復活大作戦!!日本全国の旅館に、もっと元気になって欲しくて始めた ブログよ。

久磨衣(くまい)は、小規模旅館の売上を劇的にアップさせる会社です。

あなたが喜ばせたいお客様はだれですか?
その人にあなたのお宿の魅力、伝わってますか?

「旅館の味方」の久磨衣に、あなたの想いを聴かせてください^^

仲の良い友人が、一瞬黙って、ちょっと声を低くしてこう聞いてきたことがありました。

 

 

「リクルートできちゃう旅館の和装ユニフォーム」ならおまかせの
布の力久磨衣(くまい)の安達美和です(^◇^)

 


オリジナル暖簾や館内着・羽織なんかも企画製造してるんだぜッ

和装ユニフォーム・暖簾・館内着などのお問い合わせはコチラ♪

 

 

その時、わたしは大学に入ったばかりで、まだ十代でした。

 

 

「2ちゃんねるって、知ってる?」

 

 

その友人はいつも冷静で、だけどたまにボソッと言い放つ一言がまったくセンスが良くて、たとえるなら「行け! 稲中卓球部」における田中のようにナイスなキャラクターだったのですが、その時の彼女はいつもと少し違って見えました。あまり素を出さない彼女の、こころの揺らぎが一瞬だけ垣間見えました。

 

 

「……なに、その変な感じ。エロいやつ?」

「いや、エロくはない」

 

 

まぁ、スレッドによるが、と彼女はひとりごとのようにつぶやきました。

 

 

スレッド。インターネットの世界にとんと疎かったわたしは、多分あの時初めて聞いたその言葉を、意味も分からずくり返しました。

 

 

「それで、その2ちゃんねるってのはなんなの?」

「なんて説明したら良いかな……色んな人が、匿名で意見を書き込めるインターネットの広場っていうか、そんな感じなんだけど」

「ああ、掲示板みたいなこと?」

「そうそう」

 

 

なんだ、ネットにおける掲示板の存在なら、当時のわたしも知っていました。高校時代に、何度か書き込みというやつをしてみた経験もあります。でも、その時の彼女の妙に居心地の悪そうな様子と、自分が知っている掲示板とは、どうにも結びつきません。彼女がそれきり黙ってしまったので、おいおい、話を振るだけ振っといておわりかーい! と思わずズッコけそうになったので、もう一度聞きました。

 

 

「その2ちゃんねるがなんなの?」

「うんとね、その、2ちゃんねるっていうのは、ちょっと特徴があって、なんていうか、ひどいことがいっぱい書かれてるんだよね。怖いっていうか」

「……ホラー?」

「まぁ、ある意味そうかも」

「『おまえだー!』みたいなこと?」

「うん、違う」

 

 

それから、彼女のぽつぽつした短い情報をじっと聞いていたら、その2ちゃんねるという巨大な掲示板は、どうやら罵詈・雑言であふれているということでした。まぁそうでない掲示板ももちろんたくさんあるものの、不の言葉のパワーは大変強く、「2ちゃんねる」の持つイメージには、確実にこのイヤなものが含まれる、とのことでした。

 

 

ある時、彼女がお気に入りのアニメの話をしたくてその中のひとつの掲示板を覗いたところ、ひどい言葉で他の書き込みをしている人のお気に入りキャラを罵倒する人物がいて、それがどうやら自分の知っている人ではないかと、ふと気づいてしまったとのことでした。それ以来、なんだかこころが晴れず、こころにじっとり苔が生えたような憂うつな気分が続いているのだそうです。

 

 

彼女の悩みに耳を傾けながらも、やはりその「2ちゃんねる」に全くなじみのなかったわたしは、インターネットって怖いなぁ、みたいな浅い感想しか漏らすことができませんでした。

 

 

2ちゃんねるの存在を知ったからといって、覗き見る気も特に起きず、触らぬ神に祟りなしだよなぁと考えているうちに十数年が経ちました。いえ、ウソです。一度だけこっそり盗み見たことがあります。でもその時はたまたま開いた掲示板が平和だったのか、こころ乱されることなく、ホッとしました。

 

 

でも、ひとつだけ、心底不気味だなぁと思ったことがあります。そこに書かれていたコメントは、穏やかなものばかりだったのですが、それでも五分と見ていることができませんでした。気持ち悪さを催しながら、こう思いました。

 

 

いま、ここでは何人の人間が喋ってるんだ?

 

 

みんな当然匿名だから、どこからどこまでのコメントがひとりの人間から発せられたものなのか分からず、かろうじて、「あ、このコメントとこのコメントは同じ人物が書きこんでるんだな」とたまに分かるものの、結局すぐに見失うのくり返しでした。わたしは、舞台脚本を読むときなどもそうなのですが、脳内に複数の人物を思い浮かべ、彼らがおしゃべりしているという図をイメージしないと、うまく読み進めることができません。

 

 

だから、この2ちゃんねるでのやりとりは、そのやり方がまったくできず、しまいには頭の中で巨大なひとりの「赤ちゃん人間」みたいな化け物が、際限なく支離滅裂な暴言を吐き続けるという不気味なイメージが育ってしまいました。

もしくは、葛飾北斎の作品で、ひとりの人間の顔が、じっと見ると実は無数の人間の裸体でできている有名な絵がありますが、あれのようなものも頭に浮かびました。

 

 

あの掲示板には無数の人間が蠢いているように見えるけど、ひょっとすると書き込みをしているのは、たったひとりである可能性もあるなぁ。ふと、そんな風にも思いました。

 

 

そんなわけで、わたくし・ミーツ・2ちゃんねるの出会いは出会いと同時に別れになったのですが、つい先日、ひょんなことからうっかり覗いてしまいまして、十数年ぶりに。♪おひしぶーりーね(小柳ルミ子)というか、あれか、今は5ちゃんねるっていうのかな? 詳細はよく分かりませんが、クリックしたら見覚えのある2ちゃんねるの掲示板が出てきたので、きっと合っているのだと思います。十数年前に、ほんの数分眺めただけでそっとページを閉じてしまった2チャンネルの掲示板ですが、この時は自分が興味のある話題について論じられていたので、思わず知らずじっと読み込んでみました。

 

 

そしたらね、驚きました。あれ、マジか、と。十代の頃は、そのあまりの大魔神的な混沌ぶりにやられて気が付かなかったけど、ちゃんと読むとあれだわ。納得できる言葉もいくつかある……! そして、もうひとつ、すぐに分かりました。ここに書き込みをしている人、多分、みんな頭が良いんだ。まぁ、そりゃそうですよね。インターネットの交流は基本文章でするのだから、言葉を操ることが巧みじゃなければやっていけませんよね。でも、素直に驚いちゃったんです。この巨大魔人の中に、確実にちゃんと意志を持った生命体がいるのだなと、そう思って。ビックリです。

 

 

わたしが見ていた掲示板では、盛んに今売れに売れている本をけなす言葉が並んでいました。そして、その言葉のいくつかは、ただの悪口というよりかは、しっかり自らを中立の立場に保とうと努力したうえで、それでもアレはどうしても面白いと思えない、というような書き方をしていました。そして、もうひとつ気が付きました。彼らの批判の主旨のほとんどはここなんだ、と。様々な言葉を使いながらも、結局、憤っている部分はここなんだ。

 

 

要はこの人たちは、「作品が稚拙過ぎる」という部分に怒っているんだ。

 

 

そう思った途端、ちょっと胸が痛くなりました。なぜってそれは、わたしもそういう風に、えらそうに思ってしまうことがあるから。大ヒットしている作品を、面白いと感じることができなくて、自分はひねくれたダメ人間なんじゃないかとうじうじしてしまうことが、よくあるから。

 

 

大ヒットの定義は分かりませんが、よく多くの人に受け入れられない限り、その作品は大ヒットとは言われませんよね。そうなれば、自然と分かりやすさを重視することになるわけで。「分かりやすい」とはどういうことかとさらにかみ砕いて考えると、それはとりもなおさず「考える必要がない」に繋がるのだと思います。引っかかりがない。つっかえる部分がない。スルスルと理解ができる。難しいことを分かりやすく伝えられる人こそ真に頭の良い人だ、という考え方があって、わたしもそれに賛成です。じゃあ、2ちゃんねるに書き込む方も頭が良いのだから、分かりやすさに価値を見出したりはしないのか? んー、きっと、そういう方もいるのだと思います。なんたって、わたしは数日前にほんの一瞬あの場所を覗いただけなので、なんとも言えないのですが。

 

 

でも、2ちゃんねるの方々の頭の良さは、ちょっと特殊なのかもしれません。

「頭が良い」のは間違いないけれど、きっと多分「頭だけが良い」のかなと。

 

 

頭は良いけれど、こころの方がしんどそうだな、というのが彼らの言葉を眺めていて感じたことでした。こんなに頭が良いのなら、人を幸せにする能力も、本当はもっと高いだろうになぁ。

どこからどこまでがひとりの言葉なのか分からない掲示板をつらつら読んでいると、その様が再びひとりの巨大魔人に見えてきました。

 

 

この方々は、自らの頭脳の優秀さを頼みに、今まで生きてこられたのかなと、なんとなく想像してみました。豊富な知識と、深い考察を自らの価値として、今まで歩んでこられたのかな。だから、きっとその自分の価値を発揮することなく、一切の咀嚼を必要とせず誰でも理解ができる作品に、我慢がならないのじゃないだろうか。なんでこんなに分かりやすいんだよバカヤロウと、悔しく思っているのじゃないか。あくまでも、わたしの想像に過ぎませんが。

 

 

ほんのちょっと2ちゃんねる(え、もう5ちゃんねると呼ぶべき? おばさんだから分からないあたし)を覗いただけの一般人がタラタラたれ流して申し訳ありませんが、そんなことを考えました。きっと、あんなに頭の良い、賢い人たちなら、こころさえ整えば、すごく良い人材になるのだろうなぁ。

 

 

巨大魔人を構成しているであろう、無数の賢い人たちを想像しながら、閉じるボタンをおしました。