「かっぱえびせんあるよ」

朋緒はオジサンを抱きかかえて学習机の上にそおっと置いた。

「やめられない止まらない~」

オジサンは興奮しながら歌う。

「その歌なに?」

「かっぱえびせんの歌や、トモちゃん知らんのか」

「うん。ちょっと待っててね」

朋緒はかっぱえびせんの袋を開けようとするがなかなか開けにくい。

オジサンは手をバタバタさせている。

「トモちゃん、ハサミハサミ!」

「あ、うん」

オジサンに言われる通り、ペン立てにさしてあるハサミで袋を開ける。

「すーーーっ」

オジサンは袋の入り口に回り込み、その中の匂いを深く嗅いだ。

「はい、どうぞ」

朋緒が一本のかっぱえびせんをオジサンに差し出すと、オジサンはまるでそれが唯一無二の宝物、黄金の剣のように一礼し、うやうやしく両手で受け取った。

「一緒に食べよう。いただきます」

「...」

オジサンは匂いをまず楽しみ、それをなめまくり、最後に大きな口を開けて端っこをがぶりと噛んだ。

「あ、お水用意するね」

朋緒は鉛筆のキャップに水を入れて持ってきた。

その間もオジサンは筆箱に腰掛け、何も言わず夢中でほおばっている。

 

可愛いな。

 

朋緒はオジサンを見ながら一緒にかっぱえびせんを食べる。

心が温かいもので満たされるのを感じていた。