「ねえ、オジサンはいつもどんなものを食べてるの」

ビスケット一個を時間をかけてようやく食べ終えたオジサンに朋緒は聞いた。

「そら…花の蜜とか。ツツジのは甘いやろ?」

「そうなの?」

ツツジに甘い蜜があるのか。

「トモちゃん、ちょっとお水おくれ」

「あ、ごめんね、喉乾いたよね」

とはいえ、オジサンに朋緒のコップは大き過ぎる。

「これなんかどうだろ」

まだ使ってない透明な鉛筆のキャップをさっと洗い、そこにそっと水を注ぐ。

「ほお。これはええな」

オジサンは両手でキャップを持ちぐびぐび飲み干し、そしてゲップをした。

「それオジサン専用のコップにするね、だから私がいる時はいつ来てもいいからね」

「おおきに」

「ママにばれないようにね」

「そら大丈夫や、ママさんには見えへん」

「えっ?」

「トモちゃんおおきに。ほなまた」

 

「なに朋緒。汚い」

買い物から帰宅するなりママは言った。

「えっ?」

「食べ方、おやつの。そんなにおい嗅いだりなめたりなんかして」

「・・・」

オジサンのように何通りもの美味しさを味わいたかっただけなのにな。

「ママあのね、今度かっぱえびせん買ってほしいんだけど」

「かっぱえびせん?」

「うん」

「そんなの今どき売ってないんじゃない」

「そうなの?」

ママは大きなため息をついた。

どうしよう。オジサンガッカリするだろうな。