「りり子、やっほー」
また?幻聴がすごい!
「癖がすごい!みたいやな」
誰なん?どこなん?
「きいちゃんでーす、ここでーす」
そう言ってるのは。
目の前の観葉植物、パキラだった。
葉っぱがパタパタ上下してる。
「怖い怖い怖い!なにこれ、私おかしなった!」
「大丈夫大丈夫」
「全然だいじょうばない!」
「あははっ!やっぱりり子面白いわ」
「…」
「ホラ息してごらん、はい大きく吸ってー、吐いてー」
「…」
「すーっ、はーっ、すーっ、はーっ」
その言い方は、その声は。
やっぱりきいちゃんだった。
「りり子。固まってるで」
それがきいちゃんちに行った時の、第一声だ。
どうやら私はしばらくここで暮らすらしい。
三年前、学校に行けなくなった私はしばらく叔母のきいちゃんに預けられることになったのだ。
母と妹のきいちゃんの間でどんな話をしたのかわからない。
母が帰った後どうしたらいいのかわからず、私はソファーに浅く座っていた。
きいちゃんは私の顔を覗き込み、にまっとした。
「柔らかーくしていこう、ほら息してみ」
「…してます、息」
「あははっ、そうやな、息せな死ぬもんな」
「…」
「そやけどな、息が浅いねん、だから狭ーくなるねん。
息すること、呼吸って大事やねんで」
「…」
「りり子息でけへんかってんな、学校で」
涙が決壊した、きいちゃんのその言葉で。