“六十の手習い”というわけでもないのですが
40歳になってすぐに、ベリーダンスを習いはじめました。
ベリーダンスの衣装は、肌の露出が多いです。
なので、細くもなく、美しくもなく、若くもなく
柔軟性もなく、もちろん踊りのセンスなどあるはずもなく、
ないない尽くしのわたしのようななりの者には
ハードルが高すぎるダンスです。
ちっとも上達せず、物覚えも悪く、
いつまでたってもヘタクソなのですが
でも、かれこれ6年ほど習っています。
細々とでも続けることができているのは
先生や、一緒に踊るメンバーに
すごく恵まれているからだなぁと実感しています。
一生のうちに一度くらい
キラキラしていて、ヒラヒラしている衣装を着てみたくて。
一生のうちに一曲くらい
盆踊りとフォークダンス以外の踊りを踊ってみたくて。
40歳になった次の月に、ベリーダンスの体験レッスンを受けました。
レッスンの最初にはヨガのような動きのストレッチをしたのですが
もともと体が硬いので、ひとりだけ動きがガチガチで
もう、それだけで恥ずかしかったです。
その後、基本の動きと簡単な振りつけを教わったのですが
なにがなんだかサッパリわからなくて、ほとんど動くことができず。
鏡に映るまわりの人のスタイルの良さと、しなやかな動きと
ぜい肉だらけで無様な自分の姿を比較するたびに
心が委縮しました。
そんなわけで、レッスンが終わるころには
すっかり、心が折れかかっていました。
そのまま帰っていたら、
ベリーダンスとはそこでサヨナラしていたと思います。
でも、帰りがけに先生が
「ベリーダンスの動きは、練習すれば誰でもできるようになりますから。
よければまた、レッスンに来てくださいね」
とやさしく声をかけてくださいました。
もともと美しい先生が女神様のように見えました。
このときの先生が
今、お世話になっているベリーダンスアトリエを主宰している
YOSHIE先生です。
「ほんの少しでも、先生みたいに踊れたらいいなあ」という
憧れの気持ちと
「先生と同じ空気を吸っていたら、
もしかしたら、少しはキレイになれるかも」という
よこしまな気持ちに後押しされて
毎週、レッスンに通うようになりました。
YOSHIE先生の指導は、やさしくて、温かくて
こんなわたしでも、ベリーダンスを楽しめるようになりました。
動きや振り付けはもちろん
レッスンを通して
自分自身と向き合うことの意味とか
ありのままの自分を受け入れることの素晴らしさとか
人として大切なことを教わったような気がします。
一時期、YOSHIE先生の産休中に
いろいろな先生のもとをジプシーのように巡っていたことがあります。
どの先生も美しくて、踊りも素敵でした。
でも、振り付けの途中で、
わたしがうまくできない動きを指摘され
ほかの生徒さんが見ている前で、何度も練習をさせられたりとか、
イベントに出演することになったとき
わたしだけ出番が少なくて、裏方を頼まれたりとか。
ちょっとヘコんでしまうような出来事がしばしばありました。
わたしはもともと、ネガティブな人間なので
いったん、思考がマイナス方向に向かうと、
どんどん加速してしまいます。
ベリーダンスをきっかけにネガティブモードが発動し、
最終的には、自分自身のすべてを
否定されたような気がして、落ち込むことが増え、
ベリーダンスが楽しくなくなっていきました。
ベリーダンスをしなければ、
こんな気持ちになることもないだろう。
そんな風に思うようになり
ある時から、ベリーダンスをやめてしまいました。
それからのわたしは、ずいぶん、やさぐれていたようです。
当時、交際中だった現在の夫に
「ベリーダンス、またはじめてみたら?」と言われ
YOSHIE先生が主宰するアトリエにお世話になることにしました。
何人かの先生のレッスンを受け
2年ほど前からは、
アトリエ専属インストラクターのYulu先生のクラスで
お世話になっています。
こちらのアトリエの先生方は
とてもやさしくて、温かい指導をしてくださいます。
なので、再び、ベリーダンスを楽しめるようになりました。
というわけで、前置きがすっかり長くなってしまったのですが
8月下旬に立川の「曙まつり」にて
ベリーダンスを踊らせていただきました。
ご指導をいただいたYulu先生、Kozue先生
どうもありがとうございました。
一緒にレッスンを受けたり
こうした機会に一緒に踊ったり
ご一緒することはなくても、
発表会などで顔をあわせたりするうちに
その人のことを、
すごく昔から知っているような気持ちになるのが不思議です。
妙齢の女性が多いということもあり
久しぶりに会ったと思ったら
婚約していたり、結婚していたり、
妊娠していたり、出産していたりと
美しい変化を遂げていることがとても多いです。
今回も、約4年ぶりに再会した方が
キレイなお母さんになっていて、感慨深いものがありました。
いくつかのグループに分かれての出演で
わたしたちのグループはジプシーでした。
すそが25ヤード(約22.5メートル)もある
“ジプシースカート”をはいて踊るベリーダンスです。
曲目は、1月の発表会で踊った
Gogol Bordello(ゴーゴル・ボールデロ)の
『Start wearing purple』です。
Gogol Bordelloは、
ニューヨークで結成された多国籍ロック・バンドなのですが
ボーカルの方は、チェルノブイリ原子力発電所事故をきっかけに
難民生活を送った経験があり
他のメンバーもすべて、移民だそうです。
パンクな感じで、かなり突き抜けた音楽を奏ででいるものの
どことなく、哀愁とか郷愁とか、
あと、生き急ぎ感のようなものが伝わってきます。
今回の振り付けで、初めて知ったバンドなのですが
『Start wearing purple』が収録されているアルバム『Gypsy Punks』を
聴いて、いいなぁと思いました。
よく、仕事中にかけています。
この曲は、ハンカチを小道具にして踊ります。
Yulu先生のアドバイスで、発表会のときには
マイケル・ミラーのハンカチを柄違いでそろえました。
マイケル・ミラーも、このときに知ったのですが
すごくかわいい柄で、気に入りました。
マイケル・ミラーのハンカチは、
アイロンをかけなくてもしわが気にならないし
大判で使い勝手がいいので
発表会の後、別の柄を買い足して、愛用しています。
ベリーダンスを通して
自分の中にはなかった価値観とか、モノとか音楽とか
いろいろなことを知ることができています。
いつまでたってもヘタなわたしではありますが
これからも、マイペースで楽しめていけたらいいなあと思っています。