『手のひらの京』綿矢りささんインタビューのお仕事 | フリーライター 熊谷あづさの雑記帳

フリーライター 熊谷あづさの雑記帳

フリーライター熊谷あづさの日々の雑記や仕事風景、
観たもの・聴いたもの・読んだものなどを綴っています。
ねこの記事もちょくちょく登場する予定です。

『週刊女性』にて
新刊『手のひらの京』(新潮社)を上梓された
小説家・綿矢りささんのインタビュー記事を書かせていただきました。

 

 

綿矢りささんの作品は、単行本になっているものは
ほとんど読んでいます。

 

どの作品も素晴らしいのですが
特に好きなのは、
デビュー作の『インストール』と
第6回大江健三郎賞を受賞した『かわいそうだね?』です。

 

『手のひらの京』は、『新潮』2016年1月号に掲載された際に
読ませていただきました。

 

京都に暮らす三姉妹のお話で、
個人的には、
「これまで読んだ綿矢さんの作品の中で一番好きかも」と思いました。

 

それだけに、
『手のひらの京』をテーマにインタビューが決まったときは
とてもうれしかったです。


実は、インタビュー日は
引っ越しして間もなくのころで、
まだ、自宅から最寄り駅までの道のりくらいしかわかっておらず。

都内への移動時間の感覚もまったくつかめていなかったので
とにかく遅刻だけはしないようにと、ものすごく早く家を出て
1時間前には取材場所近辺に着いていました。

 

取材の前には、該当の作品を三回は読むようにしているのですが
早く着いたおかげで、さらにもう一回、読み返すことができました。

 

取材となるといつも緊張してしまい、
今回も同様だったのですが、
綿矢りささんは、ふんわりとした雰囲気で
とてもやさしくて、素敵な女性でした。

 

偶然にも、『週刊女性』の担当編集さんが三姉妹
私が四姉妹だったので
取材の最初にそのことをお話したところ
興味を持ってくださり、うれしかったです。

 

作品中の三姉妹の会話ややり取りがとても自然で

姉妹あるあるが満載だったので
てっきり、綿矢さんにも姉妹がいらっしゃるのだと思っていたのですが
弟さんとのふたり姉弟と知って驚きました。


綿矢りさ様、新潮社のK様
お忙しい中、インタビューをさせていただき、
どうもありがとうございました。

 

『手のひらの京』は、
綿矢りささんの3年ぶりの長編小説です。

 

「生まれ育った京都を自分なりに紹介したいと思って
書いた小説です」とおっしゃっていました。

 

主人公の三姉妹のうち
長女の綾香は一見、おっとりしているタイプです。
でも、31歳という年齢の重圧を感じ
内心、結婚への焦りを覚えています。

 

次女の羽依は自他ともに認める美貌を誇り
挫折知らずの人生を歩いてきました。
でも、社会人1年目にして壁にぶつかり
打開策がわからず、ひそかにもがいています。

 

三女の凛は理系の大学院生です。
マイペースに研究に励んでいるように見えますが
いずれは東京に出て働きたいという夢を持っています。

 

結婚して子どもがいてもおかしくない年齢だというのに
彼氏らしき人物さえもおらず
焦燥感ばかりがつのる綾香の心境には、
すごく共感できました。

 

羽依は、自分の魅力の生かし方をよくわかっていたり
言いたいことをハッキりと主張できたりなど
わたしにはない性質をたくさん持っている女性だなぁと思いました。
身近にいたら
「こんな風に振る舞えたらいいなぁ」と憧れていたと思います。

 

凛は、気持ちや感情を自分の中に抱え込むタイプで
まわりから見ると、

つかみどころがない人のように思えるかもしれません。
でも、実は感受性が豊かで、
京都という土地のエネルギーのようなものを敏感に感じています。

 

上京を希望する凛に父親が
「凛は京都の歴史を背負ってゆくのに疲れたんちゃうか」
と語りかける場面があります。

 

綿矢さんは
「京都はたくさんの歴史を重ねているぶん、
土地の持つ重さや迫力のようなものがある場所だと思うんです」
と話していました。


日本の伝統に触れられる観光名所がたくさんあって、

大勢の人が訪れるにぎやかな場所、というのが

わたしの京都のイメージだったのですが
『手のひらの京』を通して、別の側面があるということを
知ることができました。

 

物語は、三姉妹の日常を通して
京都の春夏秋冬を描いています。

 

祇園祭や大文字焼、
鞍馬山の貴船神社や嵐山など
四季の行事や名所がたくさん登場します。

 

その中でも、綿矢さんが描けてよかったと思っている

場面のひとつが
夜の嵐山だそうです。

 

「夕闇の時間帯の嵐山は、
それまで鳴りを潜めていた怪しげなものたちが
動きだすような雰囲気があるんです。
季節としては、ちょっと厳しめの面を見せている冬の嵐山が好きです」
とおっしゃっていました。

 

ほかにも、お料理や着物、街角の風景など
物語の随所から京都の風や香りが伝わってきます。

 

『手のひらの京』を読んでからずっと
「久々に京都に行ってみたいなぁ」と思い続けています。


ちなみに、取材時には
小説には書かれていない京都の楽しみ方を教えていただきました。

 

おすすめは
商店街などにあるごく普通の和菓子屋さんの和菓子だそうです。
伝統あるお店が多いので、
京都の和菓子はすごくおいしいのだと話してくださいました。

 

ひとりでも多くの方に

『手のひらの京』の魅力が伝わるといいなあと願っています。