こんにちは!
それでは講義を始めます。
今日は、人身の自由の、被疑者の権利についてです。
1.被疑者と被告人
ではまず、憲法の内容に入る前に、基礎用語を確認しておきましょう。
例えば、P書店で万引きが発生したとします。
P書店は警察に通報し、捜査が開始されました。
で、防犯ビデオを解析して、どうもXが犯人である可能性が出てきました。
ここで、実際に犯罪を犯した人を犯人と呼ぶのは当然として、今、Xは警察から犯人かも知れないと疑われているだけで、犯人と確定していませんよね。
今のXのように、犯人と疑われ、捜査の対象となっている人のことを被疑者と呼びます。
マスコミ等では、被疑者のことを容疑者といいますね。被疑者は法律用語で、容疑者は世間一般の用語です。
さて、先ほどの続きで、証拠をかためた警察はXを逮捕し、取り調べをした結果、犯人であると確信したため、検察官が刑事裁判にかけることにしました。これを公訴の提起といいます。
ここで、公訴の提起がされると、刑事裁判手続が始まり、裁判が確定するまで、Xは被告人と呼ばれるようになります。
このように、犯人と疑われ、公訴の提起がなされるまでを被疑者、公訴の提起から裁判が確定するまでを被告人と呼びます。
憲法では、被疑者の人権と被告人の人権との2つを定めています。
ですので、
「この人権は、被疑者の人権?それとも被告人の人権?」
ということを、必ず頭の中で確認して、知識を整理していってくださいね。
ちなみに、刑事裁判では被告人、民事裁判では被告ですので。
2.被疑者の権利
では、被疑者の権利を見ていきましょう。
(1)不法な逮捕からの自由
では、次の33条を見てください。
ちなみに、司法官憲とは、裁判所のことです。
【第33条】
何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。
被疑者を逮捕するためには、原則として、裁判所が発する逮捕令状などの令状が必要であることが定められています。これを令状主義といいます。
ただし、現行犯逮捕の場合は、令状がなくても逮捕できます。
ちなみに、逮捕令状とは、刑事サスペンスドラマなどで、刑事さんが被疑者を逮捕するときに、バーンと紙を広げて見せているアレです(笑)。
(2)不法な抑留・拘禁からの自由
では、次の34条を見てください。
抑留とは一時的な身柄の拘束を、拘禁は継続的な身柄の拘束のことをいいます。
【第34条】
何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。
では、抑留と拘禁とを分けて整理しますね。
まず、抑留する場合は、
・理由が直ちに告げられること。つまり、なぜ身柄を拘束するのかの理由を教えてもらうこと。
・直ちに弁護人に依頼する権利が与えられること。
の2つが保障されています。
次に、拘禁の場合は、
・理由が直ちに告げられること。つまり、なぜ身柄を拘束するのかの理由を教えてもらうこと。
・直ちに弁護人に依頼する権利が与えられること。
の他に
・正当な理由が必要であること。
・要求すると、その理由は本人と弁護人が出席する公開法廷で示されること。
が保障されています。
これ、2つに分けて整理しておかないと、例えばこのような問題に対応できません。
問題:抑留又は拘禁する場合は正当な理由が必要で、要求があればその理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。
この文は誤りですが、どこが誤っているか分かりますか?
知識が整理されていると、すぐに分かるようになりますよ。
(3)住居等の不可侵
では、次の35条を見てください。
【第35条】
第1項
何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。
第2項
捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。
この条文では、たとえ警察が犯罪捜査に必要だといえども、勝手に住居に侵入されたり、証拠書類として押収されたりしない権利を保障しています。
ただし例外が2つあります。
1つは、裁判所が発する令状がある場合です。
もう1つは、第33条の場合です。
この33条の場合とは、現行犯であるかどうかを問わず、適法に逮捕する場合と考えられています。
ですので、警察官は、適法に逮捕する場合は、令状がなくても住居に侵入したり物品の押収ができます。
この条文もややこしいですね。
例えば次の問題文は正しいでしょうか?
問題:現行犯逮捕ではない逮捕の場合、被疑者の住居に侵入するには、その旨の令状が必要である。
さあ、どうでしょう?
この文は誤りなのですが、なぜ誤りかわかりますか?
令状主義の例外を、よーーーーく読んで理解してくださいね。
それでは今日はここまで。お疲れさまでした。
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1.被疑者と被告人
ではまず、憲法の内容に入る前に、基礎用語を確認しておきましょう。
例えば、P書店で万引きが発生したとします。
P書店は警察に通報し、捜査が開始されました。
で、防犯ビデオを解析して、どうもXが犯人である可能性が出てきました。
ここで、実際に犯罪を犯した人を犯人と呼ぶのは当然として、今、Xは警察から犯人かも知れないと疑われているだけで、犯人と確定していませんよね。
今のXのように、犯人と疑われ、捜査の対象となっている人のことを被疑者と呼びます。
マスコミ等では、被疑者のことを容疑者といいますね。被疑者は法律用語で、容疑者は世間一般の用語です。
さて、先ほどの続きで、証拠をかためた警察はXを逮捕し、取り調べをした結果、犯人であると確信したため、検察官が刑事裁判にかけることにしました。これを公訴の提起といいます。
ここで、公訴の提起がされると、刑事裁判手続が始まり、裁判が確定するまで、Xは被告人と呼ばれるようになります。
このように、犯人と疑われ、公訴の提起がなされるまでを被疑者、公訴の提起から裁判が確定するまでを被告人と呼びます。
憲法では、被疑者の人権と被告人の人権との2つを定めています。
ですので、
「この人権は、被疑者の人権?それとも被告人の人権?」
ということを、必ず頭の中で確認して、知識を整理していってくださいね。
ちなみに、刑事裁判では被告人、民事裁判では被告ですので。
2.被疑者の権利
では、被疑者の権利を見ていきましょう。
(1)不法な逮捕からの自由
では、次の33条を見てください。
ちなみに、司法官憲とは、裁判所のことです。
【第33条】
何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。
被疑者を逮捕するためには、原則として、裁判所が発する逮捕令状などの令状が必要であることが定められています。これを令状主義といいます。
ただし、現行犯逮捕の場合は、令状がなくても逮捕できます。
ちなみに、逮捕令状とは、刑事サスペンスドラマなどで、刑事さんが被疑者を逮捕するときに、バーンと紙を広げて見せているアレです(笑)。
(2)不法な抑留・拘禁からの自由
では、次の34条を見てください。
抑留とは一時的な身柄の拘束を、拘禁は継続的な身柄の拘束のことをいいます。
【第34条】
何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。
では、抑留と拘禁とを分けて整理しますね。
まず、抑留する場合は、
・理由が直ちに告げられること。つまり、なぜ身柄を拘束するのかの理由を教えてもらうこと。
・直ちに弁護人に依頼する権利が与えられること。
の2つが保障されています。
次に、拘禁の場合は、
・理由が直ちに告げられること。つまり、なぜ身柄を拘束するのかの理由を教えてもらうこと。
・直ちに弁護人に依頼する権利が与えられること。
の他に
・正当な理由が必要であること。
・要求すると、その理由は本人と弁護人が出席する公開法廷で示されること。
が保障されています。
これ、2つに分けて整理しておかないと、例えばこのような問題に対応できません。
問題:抑留又は拘禁する場合は正当な理由が必要で、要求があればその理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。
この文は誤りですが、どこが誤っているか分かりますか?
知識が整理されていると、すぐに分かるようになりますよ。
(3)住居等の不可侵
では、次の35条を見てください。
【第35条】
第1項
何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。
第2項
捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。
この条文では、たとえ警察が犯罪捜査に必要だといえども、勝手に住居に侵入されたり、証拠書類として押収されたりしない権利を保障しています。
ただし例外が2つあります。
1つは、裁判所が発する令状がある場合です。
もう1つは、第33条の場合です。
この33条の場合とは、現行犯であるかどうかを問わず、適法に逮捕する場合と考えられています。
ですので、警察官は、適法に逮捕する場合は、令状がなくても住居に侵入したり物品の押収ができます。
この条文もややこしいですね。
例えば次の問題文は正しいでしょうか?
問題:現行犯逮捕ではない逮捕の場合、被疑者の住居に侵入するには、その旨の令状が必要である。
さあ、どうでしょう?
この文は誤りなのですが、なぜ誤りかわかりますか?
令状主義の例外を、よーーーーく読んで理解してくださいね。
それでは今日はここまで。お疲れさまでした。
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