2021/2/14 ディナー1名

先ずはエレベーターを降りた、広く見晴らしの良いエントランス。
紀井徳川和歌山城を臨みます。


ダイニングルーム
17:30 の入店。
蒼い黄昏の空で、アペリティフのスタート。

北へ帰る雁の群れが、目の前に来て飛び去りました。
春近し。

実は、手島純也シェフが13日の午後たまたま交わした
fbの👍〜メッセンジャーのやり取りの中で「今すぐにお越し頂ければ、リエーブル・ア・ラ・ロワイヤルをお出し出来ます!」なんて仰るものですから😵

「や、今すぐにって俺北海道の札幌… 
 今すぐ行きます‼️」

熊井、地球上で一番好きなお料理が「リエーブル・ア・ラ・ロワイヤル」でございます。


もちろんメインにして頂いて、あとはシェフにお任せしました。
これが、57歳んなったばかりのバツイチ男の「自分バレンタインデー」の始まりでした。

バレンタインデーなんかずーっと嫌いでしたから、この歳になって、生涯忘れじのバレンタインデーが人生に訪れるなんて、13日土曜日の… 
少なくともお昼頃になんかは、考えてすらいませんでしたね。

急で。
取れた飛行機が11:05 神戸空港着。
14:30 頃、和歌山駅に着いちゃいまして、辻調理師専門学校の大恩師永作先生に、昨春の帯同の道すがらにご口授頂いておりました、井出商店さんの「早すし」と「中華そば」(所謂和歌山ラーメン)をスープまで完飲し(なまら美味かった)、更にまたご口授の東鳥春さんの「うな丼」(タイムセール¥1,700が この時間¥1,000 😍) と「うなぎきも」も、テイクアウトのお店ですから、和歌山城にて缶ビール片手に頂き (但しこのご飯だけは、勇気を以って15日の朝ご飯に残す) ました。

和歌山城の天守までも見物して。また、14日の和歌山が、北海道に比べて暑いこと暑いこと…🐻💦

グラスシャンパンの前に、先ずビールを2杯飲んじゃいました😅

アミューズのグジェール
今まで何十年何十軒でグジェールを頂いて来ましたが、手島さんのが一番旨い。



さあ、コースの始まりです。
一品目 冷たいオードブル
「甲殻類のジュレ 人参のムース」
カクテルグラス1杯分の中に、重層的に構築されたお料理でした。

トップはカリフラワーのムース。
真っ白に仕上げるのが、フランス料理の鉄則ですが、易しい仕事ではありません。
また、こうドレッセするのにも、とても熟達が必要です。

ふんわりとひと掬い。
軽やかで滑らかで、しかして普段ゴツゴツと味わうあのカリフラワーの香りと味に口の中が包み込まれます。
誰もが知る身近な食材を、決して自宅では作れないお料理に仕立て上げて、例え初めてフランス料理を召し上がられるお客様の心をも鷲掴みにする。

僕がわざわざ大企業を辞めて、フランス料理とワインの世界に飛び込んだのは、東京三田コートドール斉須政雄シェフがランブロワジーから持ち帰ったスペシャリテ「赤ピーマンのムース」を口にしてしまったからでした。
まだ、人生2度目のフランス料理屋さんでの(1度目が北大に受かった1982年に、当時札幌にいらした日本のフレンチの重鎮小原シェフのメゾン・ド・サヴォアでしたことは、今も両親に感謝していますが) アミューズに出てきた珊瑚色のひと掬いのムースの、あまりにも滑らかでクリーミーな舌触りと、びっくりするほど赤ピーマン味なことに驚嘆しました。
「フランス料理って、こんなことが出来るのか」

当時のメートルドテル佐藤さんに伺うと、使ってある食材は「赤ピーマンと生クリームと少しのバターのみでございます。敷いてあるトマトのクーリは、もちろんトマトだけです」
この一皿のご縁で、結婚の披露宴を含めて今日まで、おそらく100回近くコートドールに食事に行き、斉須政雄シェフとのお付き合いは、僕の「人生の師匠」として今に至っています。

Motoi 
あの日の感動が蘇るムースでした。
ですが、このカリフラワーのムースは、あくまで脇役です。

この下から、北海道産のウニ、キャビア、そして主役の甲殻類数種から取ったコンソメジュレが登場します。

シャンパンが、やはり最高のマリアージュでしょう。尚、僕は昭和産まれのソムリエですので、この頃の「ペアリング」という言い方が、なんか「金属の球みたい」で馴染みません。ご容赦を。

手島シェフは、後述致します驚愕の「ジビエのコンソメ」も含めて、ものすごく野生の香りと味覚をコンソメに凝縮するのが上手な料理人で、僕が先ず惚れ込んだのはそこなんです。

「コンソメ」
皆様「よくご存じ」のスープですよね。あの茶色く透き通った、いわばスープの代名詞とでも申せばいいのか、今回の往復のANAの機内でも「コンソメスープ」をもらいました。
別に難癖を付けるつもりではございませんが、「本物のコンソメ」というお料理は、実はあの四角いのをお湯に溶かすような物と一緒くたにして頂きたくないのです。
コンソメは、通常フォン・ド・ヴォライユ(フレンチのベーシックな鶏の出汁です) に、大量の牛肉、香味野菜、香草、スパイスをミンチにして卵白、トマトピューレを加えて練ったものを入れて、とても優しく丁寧な弱火で、寸胴の中がゆっくりと対流しながら表層には煮えたミンチが浮いている状態を1〜2時間保ち、その「島」の中央にドーナツ状に穴を開け、丁寧に丁寧にアクを掬いながら、同時に穴からフォンを掬っては「島」に注ぎかけ続けて作るお料理です。
大変な時間と手間と食材が必要ですが、皆様が、ややもすると「なんだ、フランス料理屋でコンソメが出んのかよ?」なんてニュアンスの印象をお持ちになる可能性が否定出来ませんので、滅多にメニューに載せる店はありません。
まともにお値段を付けるとすれば、普通のコンソメスープ1杯で、¥2,800くらいは頂かないと合いません。
誰も頼みません。

常時メニューに載せてらっしゃるのは、僕が知る限りでは銀座の「資生堂パーラー」さんくらいですね。
感動的な香りと味で、確か ¥2,800 くらいでした。

銀座にはそういうお客様がいらっしゃる。資生堂パーラーには、それがコンソメってものだと、2代〜3代に渡ってご存じのご家族様がご常連に多くいらっしゃる。
そういうことです。

つづく