青魚の、特にいわしやサンマの飛び切り新鮮なやつをワタまで頂くのが大好物なのですが、何だかそういう我々庶民の身近だったはずの魚たちが、どんどん高嶺の花になっていってしまいまして、たま〜にこういうのをスーパーの隅っこの方に見付けますと、もう小躍りしてしまいますね。

日本酒がもちろんいいのですが、この丸干しにシャンパンという取り合わせが、僕は昔からとても好きです。
もちろん頭からガブリと食らいつきますが、そのゴリゴリっとした歯触りを追っかけて、塩っぱくてほろ苦いワタの、何とも磯っくさい汐の香りが口いっぱいに広がります。

縞鯵、とらふぐ、黒鮪、ハタ… 高級魚が美味しいことには、異論の余地がございませんが、僕が、もしかすると「魚を食べる悦び」を最も実感している瞬間は、こういう「魚一匹の全ての美味しさを口いっぱいに食べ切れた」瞬間じゃないかな… という想いは、年端を重ねるに連れて強くなる気がしております。

稚鮎の天ぷら、鰺の南蛮漬け、ワカサギのフライ、どじょうの鍋やら唐揚げ、モロコの炭火炙り、小鮒の佃煮、ちりめんじゃこに大根おろし… 枚挙に暇がございません。

全てを何かひとつのお酒で…と、もしなれば、僕は迷わずシャンパンを選びます。
こんなことを言えるのは「神棚とシャンパンを酌み交わす」という言い訳が成り立つ、盆の送り火の今日まで。明日からはまた、ノーアルコールビール生活でございます。

最上級の羽のジビエにべキャスがございます。
山しぎという鳥ですが、フランスで禁鳥(狩猟、売買)になっていることもあり、皆様がお口になさる機会は少ないかもしれません。

鳩よりも小さい野鳥で、一羽をお一人で、それこそ「尾頭付き」でロティールして供しまして、細長い嘴もパチンコ玉よりも少し小さな頭もパリパリ頂きます。脳味噌も当然味わいのうち。
芳香を纏っている鳥ですので、歯触りと口に広がる香りの悦びは、(フランス人には説明のしようがございませんが) 正に丸干しでワインを飲る悦びを彷彿とさせます。

但し、
べキャスの折には、是非ともブルゴーニュの銘醸のピノ・ノワールをお合わせ頂けますよう。