そして・・・10年近い歳月が流れた。能代の戦いに敗れ、しばらく静養していた義綱は、長治2年、再び兵を起こし、鰺潟の黒鳥を討つべく進軍を開始した。
「無理に攻めても犠牲が増えるだけだ。徹底的に城を囲んで、兵糧攻めにすれば、いずれ奴らは自滅する。」
義綱軍は鰺潟の城を完全に包囲。黒鳥軍は孤立してしまった。
「このままでは、水粥を啜ってもひと月持たない。」
「打って出るか?」
「この水嵩で沼に入ってみろ、ズブズブ沈んで、戦う前にお陀仏よ。」
「黒鳥の奴ら、そろそろ腹減って動かんねなるろ。」
「こんげしてて戦に勝てたら、楽でいいねぇ。」
「ほんに。長閑なもんら。」
「おい!あれ見れ!」
「ひゃ~!あんげ黒ぇ雲、見たこたねぇ!」
「水だ!水出た!水が来るぞ!」
「お・お・お・おい、ゆ・ゆ・雪だ!うわぁ~!雪降ってきた!」
「もう終わりだ!どんげなってんだ?」
「寒~べ~。うわぁ~!」
「義綱殿はお年を召している!焚き火だ!誰か焚き火を用意せ!」
黒鳥の妖術は凄まじく、このままでは義綱軍は全滅してしまう。
義綱は、賀茂神社と弥彦神社に遣いを出すと、自らも一心不乱に神の御加護を願った。
「ええい!今一押しで義綱めが凍え死ぬところだったのに!」
「あれら、あれ真似せば良い」
鶴の行動からヒントを得て、かんじきが作られた。後に「鶴かんじき」と呼ばれ、農作業に広く使われるようになった。
とにかくかんじきの威力は絶大で、義綱軍は沼を渡り、総攻撃を仕掛けた。
腹を減らし、戦意のない黒鳥の兵は次々に倒れていった。
大勝利は目前と思われたその時、義綱軍の前に、黒鳥兵衛が現れた。黒鳥は目にも止まらぬ速さで鉄の弓矢を使い、義綱軍をなぎ倒した。義綱軍は黒鳥の矢を受け、身動きが取れない。
「そのざまはなんだ!腰抜けばかりか!一人くらい骨のある奴はいないのか!?」
義綱が陰に戻って、最後の力を振り絞って黒鳥に向かって矢を放った。
「矢は腹を掠めただけだ!安心しろ!」
「義綱殿はご無事だ!」
黒鳥の首と胴は急いで土の中に埋められた。首が埋められた場所に