- あの戦争は何だったのか―大人のための歴史教科書 (新潮新書)/新潮社
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保阪は、夏の甲子園の黙祷が嫌いで、何の意味もない、という。
わたしには、そうは思えない。
この本をよく読んでみると、保阪正康の夏の甲子園の黙祷が嫌いで、何の意味もない、という、その真意がよくわかってくる。
保阪に言わせると、チャイナ事変は、日本陸軍のおごりたかぶりが主因で、太平洋戦争は、陸軍ではなく、海軍がしたかった戦争で、なぜ、海軍が戦争をしたかったかというと、ワシントン条約で、保有艦船を不利に決められた恨みをはらしたかったからだ、という。
だから、チャイナ事変も、太平洋戦争も、日本陸軍、日本海軍がしでかした事で、そして、アメリカの落ち度は、原爆を落とした事くらいのものだ。
以上が、保阪正康の言い分だと言っていい。
うがった見方を披瀝したつもりだろうが、まったくの間違いである。
戦後のアメリカの戦争の繰り返し、中国共産党のチベット、ウィグル弾圧、、台湾における蒋介石独裁政権を、いかに、台湾の人々が憎んだかを見れば、日本がどんな相手と戦ったのか、わかろうというものだ。
しかし、保阪はみんな、日本が悪いと、考える。
そこで、黙祷などするのでは、あきたらない、戦争をした陸軍、海軍、日本政府の愚劣に憤慨する気持ちがあるならば、黙祷している場合ではない、というわけなのだ。
あきれて話にもならない。
チャイナ事変は、軍事学校の校長出身の蒋介石が、在米アメリカ人の富豪一家の宋家の娘を嫁にして、宋ファミリーの資金力を背景にして、旧満州族の清朝の属領をすべて、軍事統一してアジアの大国たらんとした事、そして、アジア地域の邪魔者である日本をアメリカにつぶさせようともくろんだのが、チャイナ事変の長引いた真因である。
また、中国共産党の毛沢東は、蒋介石国民党と日本軍を戦わせて、国民党を消耗させた上で、共産党独立政権を確立した。
以上に見方が、あながちウソではない証拠に、毛沢東も、蒋介石も、それぞれ、死ぬまで、大陸と台湾のそれぞれで、長期軍事独裁政権についたことからも理解できよう。
また、アメリカについても、アメリカは、建国以来、チャイナに満洲の商業利益を求めて、日本に共同経営を申し込んだのは事実であり、すでに、日本の江戸開国のペリーの時代にすでに、清国と不平等条約を結んで、英国同様、「アヘンの密売」を行い、清国から茶葉を輸入しては、ヨーロッパにうりさばいていたのは、周知の事実だった。
そして、ハワイ王国には、アメリカからの移民が押しかけ、ハワイ王国の行政官僚の大半に白人が入りこみ、ハワイの大規模農業も、結局は、アメリカの移民が独占した上で、アメリカに取り込んでしまった。
そして、ミッドウェイ、その他多数の太平洋の島々を領有化、フィリピンは、スペインと戦争して、アメリカのものにしていた。そうした太平洋制覇の果てに、アジアで自立する日本をつぶして、三流農業国におしこめようとしたのが、日米戦争だった、と言って過言ではない。
また、日米戦争の直前までは、インド、東南アジア全域は、フランス、アメリカ、イギリス、オランダの苛酷な支配を受けていた事、日本も、そうした欧米支配に完全に組み込まれる危機感を抱いていたことを抜きに語ることはできない。すくなくとも、事実として、戦後、日本が敗戦前まで統治してインフラを整備した韓国、台湾は、欧米諸国が統治した地域よりも、はるかに、発展している事実を見ても欧米の統治がいかに苛酷だったかわかろう。
保阪は、この本で、日本という国は、戦争を知る事に不熱心で不勉強というが、日本という国に限らない、世界中が不勉強なのであり、むしろ、戦争をもっとも、精緻にぬかりなく研究しているアメリカこそ、世界でもっとも戦争をしている国である。まったく、この保阪正康という人物は徹頭徹尾おかしな男である。
日本には、シナという言葉を差別だと思っている人が多いが、チャイナと言えば、それが差別ではないんだとわかるかもしれない。チャイナもシナも、発音のちがいで、同じ概念である。