韓国ドラマには、つっこみどころ満載な作品もあるが、
一方で掛け値なしにすぐれていると断言できるドラマもある。つっこみどころなどなく、感心しきり、これなら世界に通用するだろう、といえるドラマが確かに
韓国ドラマのなかに数作ある。近年では、「シンデレラのお姉さん」がそんな第一級の完成度を持った作品だと思うが、本年日本で放送する作品では、私が第一
等にあげたいのが「栄光のジェイン」だ。
これは、不思議に結果的には、この二作品とも、主演男優がチョン・ジョンミョンなのである。
チョン・ジョンミョンという男優は、作者、製作側からすると、文芸的な深みのある人間ドラマにふさわしいと考えられているので、私の高く評価したい作品が彼の出演作と一致するということになるのかもしれない。
9話を見ると、この作品が見れば見るほど、よく考えられた話になっていることがわかってきた。
1.男の主人公ヨンガンは、タクシーの運転手の息子なので、子ども時代に出会った金持ちの娘ユン・ジェインの名前を知らないまま、別れている。
2.ところが、ヨンガンの同級生で金持ちの息子ソ・イヌは、当時副社長だった父の上司である社長の娘の名前をユン・ジェインと知っている。
3.後年、三人は出会うが、ユン・ジェイン本人は、自分が社長令嬢であることを、記憶喪失で、自覚できないでいる。ヨンガンの父親の、妾の娘だと勘違いしている。だから、ヨンガンは母親違いの兄だと思っている。
4.ヨンガンは、本当はユン・ジェインと子ども時代に会っているのだが、当時名前を聞いていないまま別れているので、ユン・ジェインが子ども時代に会った、金持ちの娘だとは気づかない。結局、父親の他所の女に産ませた子、妹だと思っている。
5.ソ・イヌは、父親の悪事によって、ユン・ジェインが孤児院に預けられて、なぜかその事情をユン・ジェイン自身が自覚していないことに気づくが、父親がこわくてジェインに真相を話せない。
この複雑だが、妙に納得できる設定にユン・ジェイン演じるパク・ミニョンが、女版製パン王キム・タックとでもいうような、前向きで、けなげな女性を見事に表現している。