サッカークラブで働くということは、

毎日新しい「物語」に出会うということでもある。


日々移り変わるクラブを取り巻く現象は、

ひとつひとつ丁寧にせき止められて、

言葉の連なりを持って「物語」となる。


古い「物語」は伝説となり、

価値が高まっていきます。



優勝した、とか

試合で誰がどんなプレーをしたとか、

それはそれで記憶に残る「物語」ではあるが、


週一回の試合以外の、

クラブの大半の活動を占める日常にも

「物語」がたくさん散りばめられている。




営業担当としてファンに会い、

話を聞いたり、対話したり、


「こんなことを考えていたのか」


という驚きや

貴重な気付きを与えられることもある。


それら感情の起伏は「言葉」によって

格納、封じ込められる



広報担当だったら、

日々のトレーニング、選手の表情や感情を

写真や動画とともに、


「言葉」によってその温度感や熱量を

丁寧に貯蔵し、ひとつひとつ外部に発信。


どんな些細なことであっても、

それが多少大げさであったとしても、


敏感に察知し、瞬間冷凍するかのように

言葉を介してクラブの歴史として残していく。


すると、それはいつしか「物語」となって

人々の心の奥底に生きながらえていくことになる。





ファンや選手、その他行政やスポンサー、

スクール生からかき集められた「声」


そこにクラブの「世界観

を浮き上がらせるヒントが眠っている。


世界観とは、

ステークホルダーの喜び、うれしいこと、

楽しいこと、


つまり彼らが享受できる「価値」を

明確に言い表したものだ。


ところが残念なことに


ステークホルダー自身が

「私たちの価値はこうです!」というような

気の利いたことを話してくれるわけではない。



蓄積、保管され続けた「声」を、

最終的にはクラブの人間が深く洞察した先、

その頭の中にしか「解」は存在しえない。


だからこそ日々、クラブを媒体として

時々刻々にじみ出る現象を、


つぶさに観察し、見逃さず、

それぞれに言語を与えて備蓄していく


という地道な作業が欠かせないのです。




Jリーグが発足してまだ20年超。

その歴史を彩ってきたクラブの歴史もそれに沿う。

欧州に比べればまだ「赤子」にすぎない。


明確な「世界観」を語ることができなくて当然。

これからじっくりと作っていけばいい。


そしてそのためには

日々の事象をいかに言葉に残していくか。

ファンや選手の声をいかにして言語化していくか。


この作業をおろそかにしてはなりません。



世界観が固まる、ということは

誰に対して、どんな喜びを提供するのか

が明確になるということと同義


そしてそれは「戦略」を立てる

ということにもつながる。



戦略の構成要素がどのようにつながって

全体としてどのように動き、

その結果何が起きるのか。


企画やイベントなどの

「個別のアクション」について

会議などで議論することができるのは、


それが全体としてどう動くのかについて

明確に語れるかどうかの、その後です。



戦略を構成するさまざまな打ち手が

自然につながり、流れ、動く。


そしてクラブ内外の人々を

面白がらせ、興奮させ、

彼らを突き動かす力を生み出す。


これが戦略を成功させるための

絶対条件だと思っている。



KPIとか目標数値も大事。

過去の数値分析も不要だとは言いません。

数値によって見えてくる予測は

武器になることもあるからです。


ただし、これからクラブが歩んでいく先は

どうしたって誰にも分かりません。


所詮、未来は不確実で予測不可能、

であることも事実なのです。



数値から導かれた「こうなるだろう

ではなく、


戦略を語り、人々に浸透させ、共有し、

こうしよう」と訴えること。


見える化ではなく語れる化


人々を高揚させる言葉の力、その価値を

もっともっと重要視していくべきではないかと

個人的には思ったりしている。