指導者向けに書きます。
力任せの打ち方のほうが良いと思っている人は参考になりません。注意してね。
生徒の動きを改善するためには、具体的なアドバイスが必要になります。(「客観的に、具体的に」「力が抜けません」を再読してください)
何度アドバイスしてもできないときってあるでしょ?
問題があるところに、問題の原因はありません。
例えば、「フォアハンドストロークの打球時に、右肘を伸ばすようにしたい」と仮定します(右利き)。
まずは「右肘を伸ばしてください。」と言います。
しかし、それだけでできる人はほとんどいません。
もちろん、生徒は言葉を理解しています。頭では右肘を伸ばそうとしていますが、できないんです。
それなのに「肘を伸ばせ」と何度も言う。
こんな感じのレッスンをよく見ます(無理して伸ばすとケガをするかもしれません)。
この下手なやり方を強制と言います。
動きの指導における「強制」とは、身体の一つの部位を、他との関係を無視して変化させようとすること。
同じアドバイスをしても良い反応がない場合は、身体の他の部位を観てください。
例えば、左腕の動きです。
右肘を曲げながら打つ人の多くは、左肘を伸ばしながら打つ人です。
左肘を曲げて構えて、打球時に伸ばします。
この場合、「左肘をピンと伸ばして構えて、打球時に左肘を曲げるように」とアドバイスすると、右肘が自然に伸びることがあります。
他には、顔の向きです。顔が向いているほうの肘は伸びやすく、反対の肘は曲げやすいです(足の動きも関係する)。
打球時に、打ちたい方向に顔が向いたり、頭が傾いたりする人は、右肘が曲がりやすいです。
打球時に右肩のほうに顔を動かすと、自然に右肘が伸びやすくなります。
これらのやり方を矯正と言います。
動きの指導における「矯正」とは、問題のある部位に直接働きかけるのではなく、身体全体のバランスを改善させて問題の部位を自然に変化させようとすること。
生徒や選手をよく観てください。
「右腕だけがプロ並みで、左腕は初心者並み」「ラケットワークはプロ並みで、フットワークは初級並み」などの
「~はすごく上手いけど、~はあまりできない」「~は下手だけど、~はすごく上手い」というのはほとんどないでしよ?
上手い人はどこを見ても上手いし、下手な人はどこを見ても下手です。
身体の変化は全体で一つです。手先のちょっとした動きだって、全体に影響を与えます。
ということは、改善するためのアドバイスは山のようにあるということです。
下手な指導は、目に見える問題をそのままストレートに扱うことです。
どこをイジるかは、そのコーチの力量にかかります。
右腕が悪ければ、「どこをイジッて右腕を良くしようかな~」って考えられるようになればいいね。