会社役員 森本茂樹 71歳

 父の兄は被爆が原因で、17歳で亡くなった。

 8月下旬に94歳になる父が、兄の悲惨な体験を語り継ぎたいと考え、私に話をしてくれた。

 

 兄は召集令状を受け取り、1945年8月6日に広島に集合するよう命じられた。広島県安登村(現呉市)からは始発でも間に合わないので、5日行った。そして6日、爆風で飛ばされ、熱くてたまらず川でじっと身を潜めていたそうだ。

 

 

 何日かして、自宅まで足を引きずりながら帰ってきた。服はぼろぼろに焼け、ひどくやけどを負っていた。近くに病院があったので入院することができた。

 

 かなり苦しかったのだろう。2階の窓から飛び降りて死ぬと、何度も言って家族を困らせた。そして黒っぽい血を吐いて亡くなったそうだ。入隊の日が1日遅ければ助かったのにと、家族は嘆き悲しんだ。

 

 

 戦争憎し、原爆憎し。なぜ人間は戦争をするのだろうか。肉親のこの悲惨な話を、子どもや孫たちに語り継ぎたいと思っている。(呉市)

 

<中国新聞 8月6日 広場から抜粋。ご本人に承諾を得て掲載させていただいています>