新・午前十時の映画祭 カッコ―の巣の上で | Every Little Step (新)

Every Little Step (新)

りおうさんの更なる進化を求めて。

カッコーの巣の上で(原題:ONE FLEW OVER THE CUCKOO'S NEST)
1975年アメリカ 日本公開1976年4月
監督ミロス・フォアマン
ジャック・ニコルソン/ルイーズ・フレッチャー/ブラッド・ドゥーリフ

Every Little Step (新)


【雑感その1】
かなり有名なこの作品。
けれど今まで一度も見たことがありませんでした。
イメージ的になんだか少し怖い作品のような気がして。
それはジャック・ニコルソンのイメージかもしれませんが。

で、実際見たら
おもしろかった。
けれどそれ以上にショッキングで想像以上に深かった。
おもしろいというのは笑える楽しめる意味合いの物ではないですが。
こういういわゆるヒューマン系は好きな方なので
たんたんと進むストーリーでも全く飽きることなく
真剣観れたし楽しめました。
ただどうしてもこういう話はつまらないと思う方もいらっしゃるかと
思います。
とにかくラストのショッキングな展開になんとも複雑な心境になる。
この作品のテーマは【自由と尊厳】だということを目にしました。
まさにそうだと思う。
舞台は精神病院。
閉じ込められ規則通りの日々を送る患者さんたち。
その中に1人異端児がはいってきて
彼らに自由を、楽しみを、与えてゆく。
患者さんたちがそれぞれの意見を言いだしたりする
心境の変化というのが見ていて非常におもしろく感じました。


【適当なあらすじ】
刑務所での強制労働を免れようと精神異常を患ったフリをして
精神病院へとまわされてきたマクマーフィ(J・ニコルソン)。
精神病院の婦長ラチェッド(L・フレッチャー)の元
徹底して管理され自由のない日々を強いられることに
反抗し、しだいにその姿勢が他の患者たちへと影響を与えてゆくことになる。


【キャスト】
主人公マクマーフィーを演じるのは名優そして怪優のジャック・ニコルソン。
わしゃどうもあの『シャイニング』のジャケットのイメージが
強すぎてね…。
あれはトラウマになるくらい怖い。
とにかく3度のオスカー受賞歴を持ち、ノミネートは12回にものぼるという
名優中の名優。
ちなみにこの作品でアカデミー最優秀主演男優賞を獲得しております。
ですがわしは彼をそれほど注目もしていなかったし
出演されている作品もほとんど見たことがありません。
今回初めてジャック・ニコルソンという俳優をスクリーンで見て
圧倒されました。
そして猛烈に惹かれました。
ちょっとレオナルド・ディカプリオに似てるかなと思ったんですが
似てませんかね?
このマクマーフィーという人物は悪いヤツなんです。
でも憎めないんです。
患者さんみんなを巻き込んでゆき、しまいには友人まで作ってしまう。
けれど彼の行き着くその先は…。
あぁこれ以上は。。。クマ
わしはチーフの行動に間違いはないと思いますし
マクマーフィーならきっとああしてくれと言うだろうと思います。
でもなんともつらく切なく…そして、彼の行動から見事一羽のカッコウが
羽ばたくわけなんですが…。
まさにジャック・ニコルソン、名優です。

他にも個性的な登場人物がたくさんいらっしゃっるのですが
抜粋して数人ご紹介。
ろうあのインディアン、チーフ役のウィル・サンプソン。
上の画像の長髪の方ですね。
彼がこれまたいい!
この映画は比較的暗いイメージなんですがそれでも
思わず笑ってしまうシーンが数か所あります。
それはすべてこのチーフの演技によるところなのであります。
やはり印象的なバスケのシーン。
当初はどすどすと歩いて相手ゴールを妨害していたのですが
次第に楽しくなってきたのか笑顔でステップを踏みながらという感じに
変わります。
そのシーンが非常によいです。
そして上の画像のシーン。
あまり多くを語るとネタばれになるので(今更ですが)敢えて書きませんけれど
このシーンも、 !や?という記号がでるほど驚かされ
そしてクスッと笑ってしまいます。
こちらの映画には原作があるのですが
その原作ではチーフが主人公になっております。
演者のウィル・サンプソン氏は87年に53歳という若さで亡くなっております。

吃音の障害があるように見えるビリー役はブラッド・ドゥーリフ。
いわゆるイケメン枠(若者枠)のように思う。
彼も強烈な存在感を残しています。
彼も最後なんというか…哀れというか。
あの場面でマクマーフィーが助け船をなぜ出さなかったのかなぁ。
演者のブラッド・ドゥーリフ氏は
今現在でも個性派俳優として本当に多数の作品に出演されています。
他にもたくさん患者さんがおりまして
本当にどなたも個性的で魅力的で誰が欠けてもこの作品は成立しないという
程皆さん素晴らしいです。
調べていて知ったのですが実際演者の方は数日精神病院に入院
して役作りをなさったとか。
そうそう精神病患者役でクリストファー・ロイドも出演しております。
(バック・トゥ・ザ・フューチャーのドク役)
彼も印象深いです。

婦長ラチェッドを演じるのはルイーズ・フレッチャー。
いわゆる悪役的な立ち位置になります。
けれど立場が変われば見方も変わるのではないだろうか?
どちらも悪であり正義であるのではないだろうか?
一応ヒロインであるべきはずの紅一点が
悪役の立ち位置にいるというのも非常におもしろいなぁと思います。
もちろん存在感も大きく、
この作品の冒頭は彼女が精神病院に出社してくるところから
始まるあたり支配者であるような雰囲気を出している気がします。
マクマーフィーとは視線でのやりとりの演技が多く
言葉に出さない彼ら2人の敵対心も見どころであると思います。
彼女はこの作品でアカデミー最優秀主演女優賞を獲得しています。
今現在も活躍中であり
ドラマにもよく出演されているようです。


【雑感その2】
タイトルのカッコーの巣の上で というのは
マザーグースの詩から由来しているようで
原題に沿って訳すと
カッコ―の巣から飛び立つ  カッコーの巣を超えて
的な感じになるようです。
カッコーの巣というのは精神病院という意味合いもあるのだそうです。
ただ邦題は語呂がいいのでカッコーの巣の上でというタイトルに
なったんだろうと思われます。
殻を飛び出すというか 自由意思や生きることへの喜び という
深いテーマを感じさせられます。
上にも書いたけれど
見方が変われば悪も善になるしその逆もある。
けれどラストに婦長が下した(下したかどうかはわからないけど)あの
処遇は非常に冷酷でツライものであり
あれは許されることではないのではないでしょうか?

出てくるのはおっさんばかりでストーリーも非常に地味
しかも扱うのは精神病患者ばかり
絵的にも美しいとは言えないシーンの多い作品ではありますが
とてもいいお話でした。
感動して涙するわけでもないのですが
チーフとマクマーフィーの友情、
ふとした事のすれ違いなどが少しグッときました。

わしのように見たことがない方は
一度ご覧になってみてはどうでしょうか?
この作品を見てあなたは何を思いますか?

わしは、チーフとマクマーフィーはあのあとどのようにして
自由を愉しむのだろう?
ということも強く思いました。
なんだか上手く書けないけれど決して否定的な事ではなく
自由を満喫してほしいなという意味合いのつもりで。

ジャック・ニコルソンやルイーズ・フレッチャー
だけではなくこの作品自体も48回アカデミー賞にて
作品賞を受賞しております。